PikaBoost、そのアルゴリズムと法令

LivallPikaBoostは後付けの電動アシスト・ユニット。2023年3月に納品予定だったのが、2023年12月半ばに届く。ピカッとブースト!と軽口を叩きたくなるポップなデザイン、黄色いアクセント・カラーが何かを連想させる。KickstarterでUS$299(約46,000円)だったのもポップ。比較的安価であり、自分のお気に入りの自転車を気軽に電動アシスト化できるのは嬉しいところ。

それではマニュアルに従って本体を自転車に取り付けよう。シートポストに取り付けたクランプに本体を固定し、後方のローラーを後輪のタイヤの乗せるだけだ。もっとも本体は3.5kgと重いので、安定した取り付けには少々苦労する。レバーの固定や水平のキャリブレーションはアプリから指定する。充電のために本体を取り外すことが想定されているので、慣れれば着脱は簡単に行えそうだ。

さて、肝心のアシストは期待していたほどには強力ではない。ローラーとタイヤの接触面でパワー・ロスがありそうだし、まだ最適な取り付けができていないのかもしれない。それでもXYZ Cargo Trikeのような特殊な自転車でも電動アシストができるのだから有り難い。とは言え、電動アシスト自転車を発明しながら世界でもっとも保守的な日本において、後付けの電動アシストの利用は事実上不可能だ。

なぜなら、後付け電動アシスト・ユニットによる公道走行は日本の法令に違反する可能性があるからだ。その理由は2つあって、そのひとつは日本の道路交通法が要求する電動アシストの機能が複雑であることだ。このために比較的単純に済む海外の電動アシスト・ユニットは日本で要求される基準を満たさないことが多い。ところが、PikaBoostは日本の法令を満たしていると主張している。

Project Update #23: LIVALL PikaBoost: E-bike Conversion Kit by LIVALL PikaBoost

-Algorithm Adapted to Japanese Law

In the previous updates, we shared a plan for app updates to adapt to Japanese regulations. After tireless effort, the app aligned to the Japanese law is released and PikaBoost automatically adapts to the Japanese regulations from the top speed to the power ratio after updating to the latest version and switching the region setting to Japan.

・日本の法律に準拠したアルゴリズム

前回の更新では、日本の規制に適応するためにアプリを更新することをお伝えしました。 たゆまぬ努力の結果、日本の法律に準拠したアプリをリリースしました。最新バージョンにアップデートし、地域設定を日本に切り替えると、PikaBoost は最高速度からパワー比率に至るまで自動的に日本の法律に準拠します。

2023年10月15日に配信されたメッセージより抜粋

日本の法令が厄介なのは、速度と人の力に応じてアシストしなければならないことだ。このうち速度はPikaBoostならローラーの回転速度から判断できる。だが人の力を判断するのは難しそうだ。人の力とはペダルを漕ぐ力であり、PikaBoostにはペダル周りのセンサーがないからだ。しかし、内部の9軸モーション・センサーやローラーの駆動状態から、高度なアルゴリズムが人の力を推定するのだろう。

実際の設定としてはLivall RideアプリでPikaBoostを使用する国を選ぶ。ここでJapanを選択すれば確かに機能が変化するようで、例えばライディング・モードではFree CruiseやCruise Controlが選べなくなる。一方で国の選択は自由に行える。偽装可能なGPSを盲信する愚行はない。私道で走行すれば、レゲエのノリ(Jamaica)やポル・ポトの魂(Kampuchea)も体感できるだろう。

さて、PikaBoostが機能として日本の基準を満たすとしても、それを取り付ける自転車ごとに形式認定を受ける必要がある。これは簡単なことではないのだろう。何しろホンダの電動アシスト・ユニットですら単体販売はなく、完成車としてユニットを提供しているくらいだ。ましてや個人が自転車ごとに形式認定を受けるのは現実的ではない。これが日本の法令違反となるもうひとつの理由だ。

もっとも街角でPikaBoostを取り付けた自転車を見かけたとしても、直ちに警察は取り締まるべきではない。少なくとも筆者はPikaBoostをExerciseモードで使うからだ。これはユニットを発電機として用い、電動アシストは行わない。つまり、何やら機械が取り付けられていても、それが電動アシストか否かは分からない。それを正しく判断するセンシングとアルゴリズムこそ、今の警察に求められる職務だ。

さらにPikaBoostの本体はスマートフォンのアプリとBluetooth LE通信を行い、ハンドル・バーに取り付けるリモート・コントローラも本体とZigBee(2.4GHz RF)通信をする。当然のごとく技適マークを取得していない。そこで技適未取得機器を用いた実験等の特例制度の届出が必要だ。これは一手間かかるものの、オンラインで簡単に行える。この総務省の制度を警察や国土交通省は見習うべきだろう。

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