技適未取得機器を用いた実験等の特例制度

近年はサイクル・コンピュータ、電動シフト、電動アシストなど自転車の電気化・電子化が著しい。これらがワイヤレス通信を行うのであれば、法的には安全基準などの技術的要件が認証された技適マーク付きの機器を用いる必要がある。技適マークがない海外製品については「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を利用して届け出ることになっている。

この特例制度は、海外の製品が当該国での認証を受けていれば、短期間の実験や調査のための使用を認めるものだ。Wi-FiやBluetoothなどは国際標準規格であり、国ごとに仕様が違うわけではないから、妥当な運用だろう。むしろ届出を不要にして用途や期間も限定すべきでないと思うが、そこまで柔軟ではない。ともあれ、WEBサイトのフローチャートで制度の対象であるか否かを判断できる。

さて、対象機器の届出はオンラインで行うので、まずアカウントを作成する。ただし、オンラインでの本人確認のためにマイナンバーカードを利用する困惑仕様。さまざまな問題が指摘され、カード取得率が15%だから、持っていない人がほとんどだろう。そこで面倒でも窓口に赴いて本人確認を求めよう。現時点では新型コロナウイルス感染防止のために郵送での手続きも認められている。

ちなみに筆者は特例制度が施行された2019年11月に届出を行なっている。この時はWEBサイトで作成した申請書を印刷して郵送する必要があった。2020年5月からはWEBでの届出が可能になるとともに、それ以前の申請者は自動的にユーザとして登録されている。もっとも、本人確認が行われていないので、いずれ窓口に赴かなければならない。筆者もマイナンバーカードを持っていないからだ。

アカウントができれば、ユーザIDとパスワードを入力してログインする。これは登録したメール・アドレスにワンタイム・パスワードが届く二段階認証になっている。次に開設届出を選んで必要事項を入力する。無線規格の種類や当該機器のシリアル・ナンバーなどを事前に調べておくと良いだろう。項目数は多くはないものの、細かな仕様を調べるのに時間がかかることもあるので要注意。

この届出は本人の責任において行うものであり、何らかの審査や許諾があるわけではない。ただし、「Huawei P40 Pro 5Gを用いた5G通信サービスの実験」を実験等の目的として届け出たところ、翌日総務省から電話がかかってきた。この特例制度は5Gを対象としていないので、Wi-Fiなどを実験目的として欲しいと言う。しかも、ユーザ修正ができないので総務省で届出を書き換える出血サービスぶりだ。

ともあれ、海外の無線機器を合法的に利用できる意義は大きい。先進的で意欲的な製品を日本で使うことができなければ、技術的にも文化的にも立ち遅れてしまうからだ。iPhoneやiPadのようなメジャーな製品でさえ、最初期は日本向けに発売されず、技適マークがなかった。ましてや、クラウドファンディングやスタートアップといった規模が小さい製品の日本対応は望むべくもないのが現実だ。

つまり、独自の規制にこだわるのではなく、規格の国際標準化と認証の相互運用を進めるべきだろう。これは、かつての日本の携帯電話の悲劇を思い出せば良い。唯我独尊的な仕様で国際競争力を失ない、今では見る影もない。同じことが日本の電動アシスト自転車にも言える。複雑すぎる日本独自の規格は緩和して認証の相互運用を行わなければ、遠からずガラチャリと化すに違いない。

日本未発売の電動アシスト自転車Trek Domane+

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