今月の記事では、これまでに取り組んできた試作6号の撮影に向けて、3Dプリンターを用いて制作しているカメラの改良を重ねた。これまでの試作6号に関する情報については、第17回以降の記事をぜひ読んでいただきたい。本連載は、以下のような目標を掲げながら、写真と自転車を組み合わせながら様々な形で試行錯誤していく内容である。
自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。
「銀(塩)輪車」第1回より
カメラの改良
試作6号では自作のピンホールカメラを用いることで、撮影時のピンホール径の調整等を可能にすることを試みる。そのためにも第18回では筆者の学校にて使用できる3Dプリンターで自作カメラの出力を試みた。現在使用させていただいているカメラのデザインはこちらである。このデザインのメリットは35mmフィルムをパトローネのまま使用できるところや、ピンホール部分が別部品になっていることで複数の大きさのピンホールを付け替えできる点にある。
第19回では、この優秀なカメラをどのようにして自転車本体に固定するかという点を未だ検討中であると記述したが、この問題を解決するために元のカメラのデザインを編集した。筆者は3Dモデリングに関しては初心者に近い技術レベルしかないが、とても簡易的なマウントをカメラのボディに合体させたようなモデルを作成した。
このような形で、2通りのボディをモデリングした。カメラの最も大きい部品であるボディにマウントをそのまま融合させることで剛性は保つことができ、実際の走行中などにもカメラの揺れは軽減できそうだ。しかし、それと同時にマウントの位置・カメラの角度の調整ができず使いずらそうな面もありそうだ。
もう1つの懸念点としては、折角ピンホール部分の部品が入れ替え可能であるモジュラーなカメラデザインであるのに、この改良版ではボディを2つ、つまりカメラを2つ用意する必要が出てくるのだ。撮影を開始してしまったパトローネを他のカメラに移すことは難しいため、これだと本当に2つのカメラと2本のフィルムを撮影時に使用する必要があり不便である。
このように実際には筆者がここから改良すべき点はありそうだ。具体的に自転車のどの部分に取り付けるかというのは、試行錯誤を繰り返しながら最適な場所を探る他ないが、先月の記事で紹介したGudeonさんのブログも参考にしながら撮影できればと思う。
来月は撮影
さて、ここまで試作6号に長い期間を費やしてきてしまったが来月にはとうとう撮影を行いたい。具体的に踏むべきステップはモデリングの改良、3Dプリント、撮影である。撮影場所などに関しては、ひとまずは撮影のし易い筆者の住んでいる地域周辺を想定している。撮影の後にはフィルムの現像を行う必要があるが、これも来月中にできれば行ってしまいたい。
さて、筆者は来年の2・3月には再度ロサンゼルスに帰省する予定である。その際には試作6号のカメラを持って行き撮影を行えればと考えている。今後の連載にもぜひ期待してもらいたい。
よいお年を。それでは、また。