自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。
「銀(塩)輪車」第1回より
前回の記事ではオーストリア・リンツでの自転車観察について紹介したが、今月からは再度上記の連載の目標に沿って自転車と銀塩写真に向き合っていこうと思う。さて、第17回ではこれまでの試作品群から改善すべき点について考察したが、次なる試作6号ではやはりピンホールカメラを用いた挑戦を行いたいと思う。
新たなピンホールカメラの導入
さて、これまでの試作品にて悩まされてきた「像の不在」という点に関して今回の試作6号では、自転車の一部がはっきりとした像として映るようにカメラを設置するというアプローチをアプローチを取ってみようと思う。つまり、周囲の風景等は自転車が進むことで像になる前に通り過ぎてしまうが、例えばハンドルバー等の自転車の一部である部分は(カメラの固定方法によるが)写真のフレーム内で動くことなく、はっきりとした像になるという着眼点である。
そして、ピンホールカメラの撮影にて問題点となっていた露出光量の調整という点に関しては、新たなピンホールカメラの導入によって解決できそうである。これまで使用していた自作ピンホールカメラはアルミ缶に直接穴を開けていたためにためにレンズ径の調整等はできなかった。ここで、コストなく複製可能かつ調整の効きやすい3Dプリント製のピンホールカメラを導入する。
3Dプリンターで作成するピンホールカメラは複製可能であり、またピンホール部分を個別の部品にすることで幾つものレンズ径を試すことができる。今回使用するカメラの3Dモデルはこのリンク先のものである。これを筆者の学校にて使用できる3Dプリンターで今回は出力してみた。
この後にも何回か改造・改良を加えながら出力をしてみているが、結論としては十分にこのままこのカメラを使用できそうである。このカメラは通常の35mmフィルムをパトローネのまま使用できる点もとても使いやすい。これで、来月中には撮影を実践できる。
実践までの課題
実際にライド中の撮影を実施するまでの小さな課題としては、①カメラの固定場所選定、②カメラへの固定方法の2つが存在する。しかし、①に関しては実際の写真の肝となってくるような部分なので時間をかけて様々な固定場所(=写真の中の像)を試してみれば良いと考えている。②に関しては、実際に自転車に固定しやすい細工をカメラのモデルに組み込むことやマウントのようなものを自作あるいはこれも3Dプリンターで製作する必要がありそうである。
これらの2点は来月の記事までに乗り越えた上で実践に移りたいと思う。因みに、筆者の自転車は現在後輪がパンクしており、その修理も課題③として、解決しておきたい。
さて、今回は撮影の段階まで行きつかなかったが、勢いを増してどんどん写真の撮影を連載のためにも行なっていきたい。夏も終わり自転車に乗りやすい季節になってきたので、早いうちにパンクも治してライドに出掛けよう。
それでは、また。