BMXグラフィティ(7)制作篇 part2

先月の記事では、6月に制作した習作シリーズを掲載した。主に、トリミングや素材による印象の違いを提示したシリーズになる。

今回紹介する習作シリーズは、BMXのトリックのラインよりも、トリックによる紙の破れや歪みに焦点を当てたものである。

展示では2枚セットの絵が並べられている。これらの絵は、同じトリックにより同様のラインが描かれている。そして1枚をグレーで塗りつぶした。すると塗りつぶした絵にはペインティングが消えアクションのみの輪郭や特徴が明確に現れるが浮き上がるという試みである。

ブログでは実際の紙の凹凸感を伝えきれないため、直接比較することができないのは残念である。

作品の核心は、制作プロセスそのものが作品となる点である。紙の上でトリックを行い、その衝撃によって紙が破れたり歪んだりする。この破れや歪みは、トリックの瞬間のエネルギーと動きを形として具現化したものであり、一種の「動きを刻み込んだ造形」とも言える。この瞬間的なパフォーマンスが、紙という物質に永続的な痕跡を残すことで、一時性と永続性が同時に表現される。その痕跡が持つ美学的価値と意味を探求する事が目的だ。

トリックが一時的なパフォーマンスである一方で、紙に残される痕跡が永続的な作品としての価値を持つ可能性を示唆している。特に、痕跡が持つ「一時性(BMXのトリックの瞬間瞬間)」と「永続性(一時的なトリックが永続的な痕跡として残すことで、時間が一つの平面に層積される)」の矛盾した側面が、新たな美学的観点を提供する。

展示では、映像や写真を一切用いず紙のみを展示する手法を用いた。鑑賞者は作品の制作過程や背後にあるエネルギーを自由に感じることができる。さらに、「見えるもの」と「見えないもの」、つまり物質と非物質の境界にも挑戦している。BMXの動きは物質ではないが、その動きが紙という物質上に特定の痕跡や変化を生むことで、新しい形や構造を創出している。この相互作用が、多層的な解釈を可能にしている。

次回11月21日の記事では、完成した作品の紹介をする

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