銀(塩)輪車 第14回 試作5号

ロサンゼルスから藤沢・湘南台への引っ越しをしてからの記事ではこの連載の本来の目的に沿ったような自転車・写真活動を行えていなかったが、今月からは気を取り直して実験を行っていく。本連載は、以下のような目標を掲げながら、銀塩写真的表現を用いて自転車によるという行為や体験を試行錯誤しながら再発見していくものである。今月の記事から新しく「試作5号」の制作と実験について記事に書いていく。

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

「銀(塩)輪車」第1回より

試作5号

今月から新しく実施する試作品・実験である試作5号は、これまでの試作品とは異なる長期的な撮影を行うためのものである。この試作品の本誌的には、2年近く前に実施した試作1号に似ている。原理としては手作りの簡易的なピンホールカメラを作成後、自転車のハンドルバーに全面方向を向くように固定して長期露光を行うというものである。

100均ショップの缶に穴をあけ、印画紙を内部に固定してある

今回の試作5号において、なぜ初心に戻るような形で試作1号の再挑戦的な実験を行う理由としては、1号に関する記事を読んでいたければわかるだろう。試作1号が実質的な失敗に終わったのは、印画紙に直接レンズ(ピンホール)を通した光を焼き付けるフォトグラム的手法であるこの手作りピンホールカメラを使うにあたって、露出時間が少な過ぎたためにはっきりとして像が浮かび上がらなかったことが原因である。

このような試作1号での失敗を乗り越えるために、試作5号では露光時間を大きく引き伸ばし、長期的な実験として実施する。具体的には、1号での露光時間がおよそ7時間だったことを踏まえて、5号では少なくとも24時間、理想を48時間として設定する。これはもちろん、1度のライドで24時間走行し続けるのは筆者にとっては現実的でないため、数多くの短距離のライドで露光を積み重ねることで目標の露出時間を達成しようと試みる。

現実的にこの目標としている露出時間に達成するためにどの程度の期間が必要か考えてみる。筆者が自転車に乗るのは、大学への通学時のみと言っていいだろう。家から大学間のルートは片道で大体15分程である。往復で30分として考えると、最低で48日、理想だと96日間掛かる事になる。これは非常に長い期間であるが、試作5号に関しては単純な方法で試作1号の失敗を乗り越えることを目標として掲げ、長期間プロジェクトとして実施しようと思う。

ハンドルバーに固定したピンホールカメラ(固定にはジップタイを使用)

同時並行

さて、約2ヶ月ほどはこの試作5号の撮影が続くためこれが終了するまでは同時並行的に他の試作品を進めて行きたい。夏季休暇にロサンゼルスを訪れる予定であるため試作4号の実施を進めることもできるだろう。このようにして、試作5号は数ヶ月間の長期撮影を行いつつ他の実験や試作についても考えていく必要がある。

意外と綺麗に自転車本体に馴染んでいる試作5号

気温も暑くなってきて自転車に乗ると必ず汗を書いてしまうような季節になってきたが、通学のためだけでなくたまには気持ちの良い、楽しいライドもしていきたいと思う。その場合にも試作5号の露光を行いたい。

それでは、また。

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