銀(塩)輪車 第3回 試作1号

本連載の第2回ではピンホールカメラの原理と作り方、そしてどのようにピンホールカメラを用いて自転車に乗る行為を記録するか、ということについて述べた。今回は試作1号として第2回で作成したピンホールカメラを自転車のハンドルバーとダウンチューブに設置し、7時間のライドを撮影した。この第3回ではその出来上がった写真を紹介しながら、次作への改善点などを述べていく。

今回のライド

今回、試作1号として撮影したライドは神奈川県の日吉駅を出発点とし、東京都渋谷周辺に点在する公共トイレを見学し日吉駅に戻ってくるというものであった。「THE TOKYO TOILET」プロジェクトとは隈研吾坂茂を筆頭とする16人の建築家・クリエーターが各々のコンセプトを持って公共トイレをデザインするというもので、今回のライドでは12個の公共トイレを見学した。ライドの内容についてはここでは割愛するが、ライドの時間は約7時間でありこの時間が今回のピンホールカメラの露光時間となる。

今回の撮影方法としては、計2つのピンホールカメラを自転車に固定した。最終的には自転車に乗っている運転者の身体にカメラを固定する予定だが、今回は試験的に自転車本体に固定した。1つ目はハンドルバーの上に設置し、レンズ(針穴)は進行方向を向くように固定した。2つ目はダウンチューブに取り付けてあるドリンクホルダーに差し込む形で固定した。レンズは進行方向に向かって右、走行中に車道を向くように固定した。

赤枠に囲まれた黒い物体がピンホールカメラ

今回の試作では丸2日という長い期間を設けたが、自転車に乗るライドはそれほど続かない。露出時間が長い方が写真としては情報量が増えるのであまり短くはしたくない。

「銀(塩)輪車」第2回より

ピンホールカメラとはそもそも長時間露光を行なって撮影するものであるため、少なくとも2日以上の露光時間を確保したい。ただ通常のライドは数時間であり、今回の7時間というのもライドにしては相当長いものではあるが、ピンホールカメラに必要な露光時間は全く満たしていない。これを大前提として、敢えて数時間のライドではどのような写真が出来上がるかを試すために今回は7時間露光した写真をそのまま現像した。この場合の現像というのは、第2回で説明したように現像液等を用いるのではなくそのままスキャンすることを指す。

出来上がった写真

ハンドルバーに固定したカメラが撮影した写真
ダウンチューブに固定したカメラが撮影した写真

結論としては、今回の7時間という露光時間は短か過ぎたことが確認できた。掲載されている写真は印画紙をそのままスキャンしPhotoshopにて反転、モノクロ化を行なったものであるためわかりにくいが、かすかに白くなっている部分が重点的に光を浴びて感光している部分である。写真の大部分が真っ黒なのは、十分に印画紙が感光せず露出不足になっているからである。

正確なことはわからないが、推測するならば1枚目の上部にある数本の曲線は漕ぐことで自転車が揺れる中で写った太陽ではないだろうか。自転車が揺れることで通常の写真でのブレのような現象が起こり、その揺れが線となって描かれている。2枚目の左上部に集中している複数の線もおそらく太陽だろう。自転車の揺れや振動によって綺麗な線ではなく、ぐちゃぐちゃっと太陽の光の軌跡が記録されている。左上部に集中しているのは、レンズに光が侵入しやすかった時間の太陽の高さなどが要因となっていると推測できる。

試作1号

今回の試作1号では、露光時間が短過ぎたために露出不足になりほぼ真っ暗な写真が出来上がってしまった。あまりにも暗い写真であるため試作1号は失敗と言わざるを得ないが、今回で確認できたこともあった。最も重要なのは、自転車の動きや振動が太陽の光によって蓄積され記録されるということである。自転車に乗っていると、路面の状態や身体の動き、あるいは風、空気抵抗などで車体と運転者が揺れることがある。そのような揺れは運転者の身体に疲労となって蓄積されていくが、映像や従来の写真ではライドを通して身体に残ってゆくそのような疲労を記録しきれなかった。ライド中の振動や動きの記録として太陽の光が線を描き、長時間露光でしか記録できない自転車に乗る行為の一部を記録する事ができた。

ただやはり暗すぎる写真になってしまうというのは改善すべき点であると考える。よりわかりやすい写真を撮影するためには幾つかの方法が考えられるが、この連載では以下の方法を試そうと考えている。まず1つ目はライドおよび露光時間を大幅に短縮し、印画紙を現像液などを用いた従来の手法で現像する。2つ目は第2回でも述べたように、露光時間が合計2日ほどになるよう、複数回のライドで同じ印画紙を露光する方法である。

これらの方法を今後も試作として検証し、記録として用いることのできるような写真を撮影することをこの連載では目指す。また第2回のコメントでも頂いたように、出来上がった写真をどのように展示するかという点についても考えていく必要がある。今回のような失敗作を繰り返しながら、自転車に乗る行為の新しい記録方法を模索していく。

それでは、また。

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