銀(塩)輪車 第2回 ピンホールカメラ

本連載の第1回では自転車と写真技術の父ニエプス、そして自転車に乗るという行為の新しい記録方法の模索という内容について述べた。そこで第2回ではこの連載を通して制作していく作品についてを書く。またその作品のための試作と検証を行なったので、それについても紹介したい。

ピンホールカメラを纏う

長時間露光を用いることによって、ライドの中で移り変わる風景を重なっていくように記録できると考える。

「銀(塩)輪車」第1回より

第1回では自転車に乗る行為の新たな記録方法として、長時間露光で撮影した銀塩写真を用いるという構想を説明した。これを可能にするのがピンホールカメラである。ピンホールカメラとは針穴をレンズとする簡易的なカメラである。この小さな穴を通る光線によって投射された像を得るという原理は、遡ると中国の春秋時代から「カメラ・オブスクラ」という装置で実用化されてきたといわれる。日本の写真家であるホンマタカシはピンホールカメラで撮影した作品をシリーズとして発表している。

簡易的なピンホールカメラの仕組み

筆者はこのピンホールカメラを自転車に乗る運転者の身体に取り付け、ライド中に周囲の風景を撮影するという作品を制作する。具体的には4台のカメラを頭上・両肩・背中に固定する。こうすることでライド中に移り変わる周囲の風景だけでなく、運転者の身体的な動きや道路から伝わる振動、風や空気抵抗など様々な要因が最終的に出来上がる写真に蓄積され、記録されるのではないかと考えている。

ピンホールカメラの設置に関するドローイング

自転車に乗ることで距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった様々な事柄を体験できる。これらが影響しあって1枚の写真を作り上げることが出来れば、それは映像とは異なる新しい自転車に乗る行為の記録方法になれるのではないだろうか。この仮説を確かめるためにこの連載を通して試作や制作を繰り返していく。

ピンホールカメラを作る

今回は初めてピンホールカメラを制作して撮影を試みたので、その過程と感想を記述する。ピンホールカメラと言っても様々な作り方や撮り方が存在し、これと言った正解はないように感じる。ソーダ缶で作れるものもあれば本格的で10万円以上の値段で販売されているものもあるが、今回はネット上に独自の手法を公開しているNicole Croyさんのサイトを参考にさせていただいた。

100均で購入したアルミ製の缶の中に、適当なサイズに切った印画紙を暗室で挿入し封をした。レンズとなる針穴は大きさなどをあまり気にせずに錐で開けた。これを大学のキャンパスにある標識や木に括り付け、丸2日ほど放置した。

制作したピンホールカメラ

カメラを回収し開封してみると、現像したネガフィルムのように色が反転した印画紙が出てきた。ただ、当然これを従来の手順で現像しても、露光過多で真っ黒な写真が出来上がってしまう。そこでこの印画紙をそのままスキャナーでスキャンしてしまい、Photoshopで反転をする。そうすると見慣れたような写真が出来上がる。

ピンホールカメラで撮影した写真(反転し白黒にしたもの)

自転車とピンホールカメラ

今回試作してみたピンホールカメラは成功に終わった。通常の写真ほどのシャープさはないが、しっかりと対象物を写し出すことができていた。そして長時間露光によって、風に揺れる木の葉の動きなどといった、その場所の時間の流れが1枚の写真に集約され蓄積されているように感じ取ることができた。ただ、ピンホールカメラによって撮影できる写真に対して満足できた一方で、今後作品を制作していくに当たって考慮すべき点も幾つかある。

1つ目は今回カメラをしっかりと標識などに固定したように、ピンホールカメラと長時間露光では大前提としてカメラも対象物も静止している必要があるということである。通常の写真と同様に露光中にカメラや対象物が動いてしまうとボケが発生してしまう。自転車に乗っている人の身体に取り付ければ当然ボケだらけの写真になるだろう。ただ、今回求めているのは自転車に乗るという行為の記録であり綺麗に撮れた写真ではないということから、ボケが多くても問題はないとも受け取れる。

もうひとつは露光時間について。今回の試作では丸2日という長い期間を設けたが、自転車に乗るライドはそれほど続かない。露出時間が長い方が写真としては情報量が増えるのであまり短くはしたくない。これに対して考えられる方法としては、複数回のライドで同じカメラを用いて撮影することである。ピンホールカメラは露出を停止したい場合テープ等で針穴を塞げば良いだけなのでこれがしやすい。

このような事を考慮しながら、次回はピンホールカメラを自転車のハンドルバーなどに固定して実際にライドを行ってみようと思う。またその結果などを報告する。少しでも涼しくなって自転車に乗りやすい気候が早く訪れてくれる事を願う。

それでは、また。

4 comments

  1. 「当然これを従来の手順で現像しても、露光過多で真っ黒な写真が出来上がってしまう」は露光時間が長いからですか? 1日とか半日とかなら過多にならない?

    1. 真っ黒になってしまうのは、露光時間が長いからです。フィルムから印画紙に写真を焼く場合を想定し、印画紙は生産されているため数日単位の露光では黒くなってしまいます。またその仕組み上フィルムと同様に印画紙も一定の露光時間を過ぎると感光の感度が下がってしまいます。これはあくまでも私の推測ですが、おそらく数10分以上露光した印画紙は従来の手順で現像した場合真っ黒になってしまうと思います。
      これを検証するために連載では、試作で10分~15分ほどのライド(露光時間)の写真を撮影、従来の手順で現像してみようと考えています。少し先になるかもしれませんが、その場合の写真がどのようになるか楽しみです。

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