自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。
「銀(塩)輪車」第1回より
この連載は、以上のような目標を掲げながら自転車に乗る行為とその身体性の新たな記録方法を、銀塩写真の多様な手法を自由に用いながら模索していくものである。先月の記事では、3Dプリンターで作成したピンホールカメラを導入するという旨の計画について紹介したが、今月はまだそのカメラの自転車への固定方法等の検討が進んでいないため、試作6号の進捗が停滞してしまっている。
似たような試み
実質的に試作6号に取り組むことができなかったために、今月は本連載の内容と似ているような先行プロジェクトについて軽く調べてみることにした。まず最初に見つけたのがWILL GUDGEON PHOTOGRAPHYという写真ブログであった。Gudeonさんは、イングランド南東部のサセックスを中心に活動しておりピンホールカメラに限らず様々な手法を用いながら写真活動をしているようだ。
Gudeonさんのこの記事には、ピンホールカメラを自転車に固定して撮影した写真が掲載されている。これはまさに試作6号にて筆者が行おうとしていたカメラの設置方法である。
自転車の一部がはっきりとした像として映るようにカメラを設置するというアプローチをアプローチを取ってみようと思う。つまり、周囲の風景等は自転車が進むことで像になる前に通り過ぎてしまうが、例えばハンドルバー等の自転車の一部である部分は(カメラの固定方法によるが)写真のフレーム内で動くことなく、はっきりとした像になるという着眼点である。
「銀塩(輪)車」 第18回より
このGudeonさんの写真はとても理想的に撮影しているが、同時に筆者の目指している写真とは少し異なる点がある。それは、Gudeonさんの写真の露光時間は2〜3秒間であるのに対して筆者はより長い期間(距離)の風景を撮影しようとしている点にある。これを叶えるには前回に作ったピンホールカメラでレンズ径等を調整していく必要があるだろう。
Gudeonさんはこの記事だけではなく、ピンホールバイクライドを何度も行っており、是非他の写真も見て頂きたい。モノクロだけでなくカラーの写真もあり、とても見応えのあるシリーズとなっている。
来月に向けて
また、筆者が現在扱っている写真の手法としてサイアノタイプがある。もともとは青写真などを作成するために多用されていた手法であるが、ピンホールと組み合わせることで露光時間を大きく伸ばすことができるために本連載にも流用できる部分があるかもしれないと考えている。この可能性に関しては、試作6号の実施の後にまた検討したい。
さて、今月は進捗が停滞してしまったためにまとまりのない文章になってしまったが、来月には早く実施を行って本連載のモメンタムを取り戻したい。
それでは、また。