10月28日、電車を乗り継いで鎌ケ谷の柳サイクルへ。オーダーしていたフレームセットを受け取るためだ。基本仕様の決定について書いた#1、ジオメトリーのパズルと格闘した#2に続き、今回は第1次の組み上げまでを綴る。
柳サイクルはこんなとこ
鎌ケ谷大仏駅から徒歩5分ほど、住宅街の一角に柳サイクルはある。西武柳沢の狸サイクルの敷地に間借りしていた頃は小さいプレハブに閉じ込められているようだった長身の飯泉さんが、ここでは伸び伸びと仕事をしていて微笑ましい。ママチャリからヴィンテージロードまで、様々な層のお客さんの修理や改造を引き受け、頼られている様子だ。
柳サイクルの店内はほぼ工房で、工作機械、工具、フレームやフォーク、ホイールやタイヤが機能的に配置されている。自分が到着した際、飯泉さんは他の方のフレームの発送準備をされていた。
フォーク仮組み、コラムカット、ラック装着
作業用ラックにかかっていた他の方のフレームが養生を終えて箱に収まると、いよいよ自分のオーダー車の登場となった。名前はこの時点では決まっていなかったが、今は「Cozmo(コズモ=宇宙)」で確定したのでここからは記事中でもそう呼ぶことにする。
まずはひとしきり眺めて「わあ」とか「うふふ」とか騒いだのち、フォークを仮組みしてコラムを切ってもらう。ヘッドは高めに設定したのでビタビタでもいけるはず。とはいえ念のため3cmくらい余分をみてカットをお願いした。近くまた切るかも、と考えてスターファングルナットは打ち込まず(プレッシャーアンカーで対応)。
Cozmoの製作にあたっては専用のフロントラックも合わせて依頼していた。伝統的ランドナー系のラックに近いもので、積載面はちょっと広め。ディスクブレーキの利点を活かして荷物はなるべくヘッドに寄せられるようにし、背当ては最小限に。スタッフサック等を直にくくりつけてもタイヤに干渉する心配がないよう、補強の梁も横ではなく縦向きに通した。後部の角にはベルト類をかけるフックもついている。右前にはライトマウント。固定用のボルトやナットを入れて重量は約235グラム。
ラックをフォークに取り付けてもらい、各部のダボ穴のネジも一通りタップでさらってもらって作業は完了。しばし自転車雑談を楽しんでから、極めてフワフワした気持ちで帰途についた。
ひとまず組んでみる
柳サイクルから持ち帰ったCozmoは、3日後には自転車として乗れる状態になっていた。新調した部品は前後のホイールセットとアクスル、ブレーキキャリパーおよびローター、チェーンのみで、他は手持ちの中古品だ。構成内容を次にざっと羅列しておく。
- 前後650Bディスクホイール。12mmスルーアクスル規格(エンド幅100mm/142mm)。チューブレス対応で、タイヤ側にニップルホールが無いのでチューブレステープを巻く必要がない。
- IRC Boken Plus 650Bタイヤ前後。幅47mm。トレッドパターンはセミスリック。
- Growtac Equal 機械式ディスクブレーキ前後。方々で好評なので採用してみた。とてもよい。
- シマノ 前後ディスクローター(センターロック方式)。前160mm、後ろ140mm。
- 50mmステム。なんとなく、とりあえず入れてみたら悪くなかった。ドロハンMTBっぽさが強い。
- Dixna バンディーハンドルバー+Dixna J Reachブレーキレバー改。ワイヤーを張ってバーテープも巻いてあったLe Mansのポジション変更用セットをそのまま借りた形。
- ダイアコンペ ENE 11速シフトレバー。コックピットがゴチャつかないダウンチューブ変速が好き。フリクション式。
- スギノ Mighty Tour 四角軸クランク(初期)。ボトムブラケット次第で140mmを切るQファクターが実現可能。長さは半端な171mm。
- ナローワイド36Tチェーンリング。Le Mansに使っていたものだがCozmoは走りがずっと軽いので小さ過ぎ、すぐに40Tに変更した。
- 三ヶ島 XC-Ⅲ Bear Trapペダル。詳述は省くが今のところ自分にとってベストのペダル。
- シマノ SLX 10速リアディレイラー。手元にあったもの。
- シマノ XT 10速 11-36Tスプロケット。手元にあったもの。
- シマノ 11速チェーン。これは新たに買った。フリクション変速なので、この辺の組み合わせはチェーン側が細い分には割とどうにでもなる。
- Easton アルミシートポスト。27.2mm。うちのMTBからそのまま引っこ抜いて挿した。
- Fizik Gobiサドル。シートポストについていたまま。
- Salsa クイックシートクランプ。見た感じは可愛いものの、あまり固定力がよろしくない。
走りはLe Mansとは全く別物
さてこうして自転車として乗れる状態になったCozmoの走りは、設計上のベース車となった自分のMiyata Le Mans Sportifとは比べものにならないものだった。まず漕ぎが軽く、速い。かといってハードではなく、47mmタイヤのクッション性と上手くバランスしたキビキビと楽しいマシンだ。扁平で潰しも入ったチェーンステーのおかげでQファクターの狭いクランクを組んでも干渉せず、踵が当たることもほとんどなくスイスイ脚を回せる。ただしBBがLe Mansより低いためペダルストライクには少し余計に注意が必要。
ブレーキは軽いタッチでコントロールし易く、奥ではしっかりロックするまで効く。セッティングや整備の楽な機械式でここまで性能が良ければ、よほどの理由がない限り油圧にする気にはならない。ワイヤー類のルーティングもスムーズに済み、加速も減速もシャープかつしなやかな快い自転車ができた。ステアリングの挙動はややクイック過ぎる感じもあるものの、タイヤの選択やコックピット構成でも変わるのでこれから具合を探ってチューニングしていきたい。
担いでもCozmoはLe Mansよりずっと軽く(そのうちちゃんと計測しよう)、ホイールサイズも含めた全体のコンパクトさが効いて取り回しも良好、部屋への持ち込みも苦にならない(Le Mansでは大変だった)。これは山を歩く時にも活きてくるはずだ。
これからよろしく
絵に描いた餅が、屏風から出た虎に。自分にぴったりの、そしてまた、これまでより先へ連れ出してくれる予感のする自転車。実を言うとCozmoとは既に3日間のバイクパッキングに出かけ、フィールドテストを兼ねた素晴らしい時間を過ごすことができた。次回はこの旅と、そこで見つかったいくつかの課題について書こうと思う。