銀(塩)輪車 第6回 試作2号(実施)

先月の番外編では、一度この連載の趣旨から外れロサンゼルスでの自転車事情とライドのレポートを行った。今回からは本連載の目標に戻り、第5回にて計画していた写真の撮影方法を実施した。この第6回では実際にどのように撮影を行い、その結果どのような写真が撮影できたかを見ていきながら、次なる試作へと考察をしていく。ここで再度この連載の目標を以下で確認したい。

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

銀(塩)輪車 第1回 ニエプス

そしてなんと、前回の記事を公開してから約2週間後に船便が到着し、愛車がアメリカに到着した。運送会社の方がとても丁寧に梱包をしてくださったおかげで、傷や破損なども一切なく、完璧な形で愛車と再会することができた。梱包されていた愛車の写真を以下に載せる。

トラックから降ろされる荷物たち
自転車はこのような状態で他の荷物と一緒になっていた
何重もの緩衝材によって守られていた愛車

試作2号(計画)

さて、ここでこの試作2号の計画について軽くおさらいする。まず、試作1号では自作のピンホールカメラを用いて撮影を行っていたのに対し、試作2号では新しく手に入れたHOLGA 135 PCという既製品であるピンホールカメラを用いることにした。これによってカメラの正確なレンズ径を把握することができた。

正確なレンズ径とThe Pinhole Galleryツールを用いて露出時間の算出を行うことができた。他にはカメラを自転車のハンドルバー等に固定するためのマウントなどについても言及した。これらが揃うことで35mmフィルムでの撮影が可能となり、試作2号の実施への準備が着々と進んでいった。

実施条件

今回の試作2号(実施)に関して、具体的にどのような環境下で撮影を行ったかをまず説明したい。まず撮影を行ったライドのコースに関しては、前回の番外編でも紹介したレドンド・ビーチの海沿いのサイクリングロードである。午後2時ごろ、晴天の中で露出時間を複数パターン試しながら撮影した。カメラの固定に関して、本来ならば専用のマウントを用意するのが望ましかったが、今回はボトルケージに挟むような形で固定をした。

カメラの固定に関しては、無理矢理ボトルケージに挟むことによってとても斜めった画角で撮影せざるを得なかった。ただ、今回の試作2号では新しいHOLGA 135 PCを用いて撮影を試みることが主な目的だったため、問題はないと判断した。

ボトルケージに挟んであるだけだが、思いの外しっかりと固定できた

出来上がった写真

今回の試作2号では、合計6枚の写真を撮影した。それぞれの露出時間は、1分間、3分間、5分間、30秒間、20秒間、10秒間であった。この露出時間に関しては、先述したツールを用いて決定した。今回はその中でも計3枚(露出時間1分間、30秒間、10秒間のもの)を紹介する。

露出時間1分間
露出時間30秒間
露出時間10秒間

見ての通り、露出時間が短くなるにつれて像が見えてくるような結果となっている。露出時間1分間の写真では何が写っているか判別できず、写真としても失敗であるといえる。これは露出時間3分間あるいは5分間の写真でも同じような結果であった。対して、露出時間が短くなると少しずつ陰影がはっきりしてくる。露出時間10秒間の写真では(カメラの設置方法によって斜めってはいるが)地面が少し明るくなっており、海と空との境界線が判別できる。またその境界線周辺には、砂浜に設置されたライフガードハウス等の残像が写っている。

試作2号

さて、露出時間が短いほどわかりやすく写せるということがわかったが、やはり10秒間というのはライドの所要時間としてはあまりにも短過ぎることが課題点としてあげられるだろう。筆者としては短くても15分程度、理想としては1時間程度の露出を行えるようになることを目標としている。

ただ、今回の実施の条件下では10秒間程度が最も適した露出時間になるであろうことは撮影前からわかっていた。撮影時の天気は晴天であり、通常のカメラで撮影する場合にはf/8のシャッタースピードが1/250で少しばかり露出オーバーという感触であった。これを先述のツールに照らし合わせると、今回のピンホールカメラ(f/175)での最適な露出時間が約8秒間であるということがわかっていた。

その上で実験的にもう少し長く露出時間を設定して複数枚の写真を撮影してみた訳だが、結論としてはツールで作成した露出時間の表はそれなりに正確であり信頼に値することがわかった。これが検証できただけでも試作2号を実施した甲斐があったが、その反面15分間の露出を行う場合には、早朝や日没後、あるいは曇りの日などある程度暗い条件下でないと撮影できないということとなった。

続く

試作1号に続き今回もブレイクスルー的な結果とはならなかったが、少しずつ前進できている感触は感じられている。露出時間の課題に関しても、よりレンズ径の小さいカメラを用いるなど、今後も試行錯誤していきたい。

また、本連載の内容とは少し脱線するがアメリカでの自転車事情についてもまた度々番外編として紹介していきたい。現在は現地の個人売買サイトにて、ロードバイクを手に入れるべく交渉をしている最中である。

レドンド・ビーチにて、HOLGA 135 PCで撮影

来月も引き続き、自転車に乗る行為の新しい記録方法を模索していく。

それでは、また。

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