銀(塩)輪車 第9回 体制立て直し

先月の番外編②では、筆者のロサンゼルスでの自転車ライフについて紹介した。今回は本連載の本来の目的に戻り、引き続き試行錯誤をしていく。本連載における目的というのは、以下の通りである。

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

「銀(塩)輪車」第1回より

早速次なる試作をおこなっていきたいところなのだが、一度今回の記事では今後の作戦を練り直したい。実際に試作にて使用する予定のフィルムが未だ入手できていないことや、現状やりたいことがあやふやになっていると感じているため、一度体制を立て直したい。

現状把握

さて、銀(塩)輪車の連載にて実施してきた試作の中で、最新のものは試作2号である。この内容は連載の第6回で主に取り上げている。試作2号を実施してから、その失敗を踏まえて、次に試してみたいアイディアが主に2つ上がっている。これらの2つのアイディアは、試作2号にて直面した露出時間に関する問題を解決するためのものである。

その1つ目が、第7回にて「試作3号」として説明している、従来よりもISO値の低いフィルムを用いて撮影するというものである。これは、日中の撮影時に露出時間を伸ばすために、フィルムのISO値を低くするという手段である。一般的にはISO100やISO400のフィルムが通常使用されるところ、特殊なISO50やISO25のフィルムを用いることで露出時間が伸びるのである。

ただ、ISO値が低いフィルムは一般的にあまり使用されているものではなく、入手が難しいという点が挙げられる。実際に筆者も未だ手元になく、困らされている。

2つ目のアイディアというのは、第8回にて紹介した夜あるいは早朝に試作2号と同じ条件下で撮影を試みるというものである。試作2号と同じ条件下というのは、同じISO400のフィルムを使用して撮影するということである。ここで問題なのが、第7回においてISO値の低いフィルムを使用するアイディアを「試作3号」と読んだのに関わらず、第8回の文章ではこの夜に撮影を行うというアイディアを「試作3号」と呼んでいるのである。

今後の計画

この筆者による矛盾には、筆者自身も惑わされてしまったので、今回の記事で今後のプランと名称を一度訂正したい。以下に今後の連載の計画を明記する。

  • 第10回 試作3号 夜にてISO400を用いて撮影
  • 第11回 試作4号 日中にて低ISO値フィルムを用いて撮影

これに沿って来月以降は試作を行い、記事を書いていく。尚、両方の施策において現段階では試作2号にて使用したピンホールカメラを使用する予定である。カメラの自転車への固定方法に関しても専用のマウントを入手する。また、試作2号では行うことのできなかった多方向の撮影も行いたい。進行方向に向かって左右両側の風景だけではなく、正面を向いている撮影も行いたい。

夜間撮影

さて次回、試作3号で行う夜間撮影に関しては第8回で偵察を行ったサイクリングロードにて撮影を行う。また、カメラやフィルム等も試作2号と同様の条件で行う。唯一考慮しなければならないのが、夜間撮影のための露出時間である。これについて最後に考えたい。

まず必要なのは、f/8程度の通常のF値で撮影する場合の露出時間を特定することである。これは実際に夜間にサイクリングロードまで測りに行くことが必要である。f/8時の露出時間が特定できた後に、第5回にて登場したピンホールカメラ用の露出時間表を用いて今回のカメラ(f/175)用の露出時間を特定する。

これで特定したものが理想の露出時間となる。ただ、この理想の数値はフィルムの相反則不軌を考慮していないものとなるため、その修正が必要である。今回使用するフィルムであるILFORD HP5+では次の公式を用いることが支持されている。

Tc = Tmp(今回の場合P=1.31)

Tcが求めたい露出時間であり、Tmは理想の露出時間となる。この公式に当てはめることでやっと最終的な露出時間を求めることができる。次回の試作3号ではこの手順で最適な露出時間を求め、撮影を試みる。

試作2号実施時にピンホールカメラで撮影したトーランスビーチ

さて、今回は文章のみの記事となってしまった。ただ、次回には本連載での主要な活動に戻り、試作3号にて撮影した写真を紹介できるよう準備は整った。是非、どのような写真が撮れるのか楽しみにしていただきたい。

それでは、また。

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