銀(塩)輪車 第5回 試作2号(計画)

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

「銀(塩)輪車」第1回より

本連載ではこのような目標を掲げて、月1ペースで記事を書いている。今回の第5回ではこれまでの試作や考察を踏まえて、新たな試作2号に用いるための新カメラを用意した。前回の第4回でも紹介した露出時間に関する課題点や、自転車へのカメラの固定方法等を大幅に改善する試作2号の計画について今回は紹介していく。本来ならば試作2号を実践し、その結果として撮れた写真も同時に発表したかったが、実践は次回に行うこととする。

HOLGA 135 PC

今回の試作2号に用いるのは、HOLGAによる35mmフィルムのピンホールカメラ、HOLGA 135 PCである。HOLGAのカメラは多くがプラスチック製で手に取った時におもちゃのように感じるが、そのチープな造りだからこそ撮影可能なトイカメラらしい写真は人気も高く、よく名前を目にするブランドである。今回はそのHOLGAによるピンホールカメラをリサイクルショップにて偶然発見したので、連載で使おうと思い購入した。価格は箱無し動作未確認の現状渡しで2,000円程度だった。

筆者が購入したHOLGA 135 PC

HOLGAのカメラであるため基本的には全てプラスチックでできており、そのためとても軽い。これは自転車や自転車の運転者にカメラを装着することを考えると大きなメリットである。また、リサイクルショップでは動作未確認の商品として売られていたが、基本的に動作するのはシャッターのみであり、それもバネを用いた極めて単純な構造になっており全く問題なく動作した。ただ、数十秒を超える長時間露光を行う際にはシャッターのレリーズケーブルが必要となるため、既に所有していたものを使用する。

露出時間の計算

さて、試作1号から最も改善すべき点というのが露出時間である。その詳細にはついて詳しくは前回の第4回にて説明したが、現在筆者が目標としている露出時間は1時間前後である。この露出時間とは撮影時間とも言え、またライドの所要時間とも捉えられる。第4回ではThe Pinhole Galleryというウェブサイトに掲載されている情報によって、ピンホールカメラの正確なレンズ径がわかればある程度は柔軟に露出時間を設定できることがわかった。

試作1号で用いたような自作のピンホールカメラでは、正確にレンズ径を測ることは困難であり大きな課題点となっていたが、今回購入したHOLGA 135 PCはレンズ径及びF値が仕様として設定されて作られてるので、その値をそのまま用いることができる。HOLGA 135 PCのレンズ径は0.25mm、F値はf/175となっている。この値を用いて前述のサイトを参考に露出時間を考えてみる。

The Pinhole Galleryでは主なF値に対応した露出時間の表が掲載されているが、今回筆者が用いるf/175に対応した表はなかったので、サイト内で紹介されているLarry Fratkinさん作のツールを使用した。これに任意のF値を入力することで表が生成され、露出計等で得た通常のカメラを使用する際の露出時間からf/175を使用する際の露出時間を導き出すことができる。F値がはっきりしているピンホールカメラとこの表があれば、ある程度の露出時間の調整を行うことが可能となる。

生成されたf/175に対応した露出時間のグラフ

相反則不軌

さて、これで表の露出時間に沿って撮影を行うことで写真がちょうど良く露出できると思えるが、最後にひとつ考慮すべき点が残っている。これは相反則不軌Reciprocity Failure)と呼ばれる、フィルムや印画紙を長時間露光する際に発生する事象である。

通常フィルムや印画紙を露光する際には、露光量=光照度×時間の相反則が成立することで写真が出来上がり、この法則をもとに露出時間なども導き出される。ただ、フィルムや印画紙とはその性能上少しずつ光への感度が落ちていってしまうのである。特に長時間露光を行う場合には露光中に段々と感度が下がっていき、先ほどの相反則が成立しなくなってしまう。これを考慮せずに長時間露光を行うと、写真が露出不足になってしまう可能性がある。

この問題を掻い潜るには、相反則不軌によって足りなくなった時間の分、露出時間を伸ばす必要がある。もちろんその伸ばした露出時間の間にもフィルムや印画紙の感度は下がっていくので、必然的に大幅に露出時間を伸ばすことになる。感度の下がり方と言うのはフィルム等の種類によって異なり、通常はメーカーがその下がり方をスペックシート()にて公開している。

Kodak社製品の相反則不軌を示すグラフ

実際にこのHOLGA 135 PCにで撮影を行う場合には、前述の露出時間の表によって定まった露出時間に、相反則不軌の分の露出時間を足す必要がある。ただやはり撮影前にどれだけ露出時間を計算したとしてもイメージ通りの写真が撮れるとは限らないので、やはり最後は試行錯誤して調整していくしかなさそうだ。

自転車への固定

新しいカメラを手に入れ、露出時間の問題に関してもある程度の見通しが立ってきたところで、カメラの固定方法について考えたい。今回のHOLGA 135 PCはプラスチック製なため、大きさはある程度あるもののとても軽量でライドの邪魔にはならなそうだ。それに、このカメラを用いることのとても大きなメリットが、カメラ底部に三角穴があることである。

これによって、市販の自転車用カメラマウントを使用することができ、自由にカメラを固定することができる。これは、自作ピンホールカメラではできなかったことであり、しっかりとした固定方法があることで撮影の幅も大きく広がるだろう。Amazonなどでも多数のマウントが販売されているので適当なものを購入しようと思うが、もしおすすめのマウントはあれば是非コメントにて教えていただきたい。

試作2号(実践)へ

このようにして試作2号に関する準備が着々と進んでいる。次回は実際に撮影を行い、出来上がった写真を紹介していく。私の愛車は家族の引っ越しに伴い現在船便で太平洋を横断中であるため、来年2月ごろまでお別れをしている。私自身2月に渡米し、ロサンゼルスに1年ほど滞在する予定なので、じきにロサンゼルスの自転車事情などに関しても連載とは別に記事にできたらと思う。

船便に載せられる愛車

愛車がない間は親戚の自転車を貸してもらったり、レンタル自転車を活用しながらこの連載も続けていく予定である。筆者の自転車事情に関してもまた書こうと思う。

それでは、また。

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