ユーロヴェロ

近頃、サイクリングルートとして設定されたルートのことを調べたり、実際にそのルートを走ったりすることを経験するとサイクリングルートには想像力が大切だと気づく。日本には「道の駅」のような施設や、高速道路にはサービス・エリアなどが整備されているが、その多くは自動車や自動2輪などのエンジンのついた乗り物を主軸に置いている。

サイクリングルートの多くのは、自動車道路のように十分な整備状態にはなっていないことが多い。主に自動車との走行レーンが物理的に分離されているものは「サイクリングロード」などと呼ばれるが、それでも道が途切れていたり、部分的に未舗装な区間があったりもする。サイクリングルートは経路として認識されるもので、地図や案内標識に沿って、自転車に乗る人自身が見つけて行かなければならないこともある。

サイクリングルートは、これまでのような舗装道路をつくっていく、すなわり「ロード」を作ったり、サイクリング設備となる建物をを建てる、といったような方法とは違った形で現れてくるかもしれない、ということを感じつつもある。その設定を想像力が保管するのではないか。何を想像するのかというと、自転車にはどんな未来があるのか、である。


NHKのTV番組に、ヨーロッパの自転車旅紀行番組「ユーロヴェロ70000キロ」がある。内容はというと、俳優の内田朝陽が太めのタイヤをつけたロードバイクに乗り、スペインを出発して地中海沿いに南フランス、北イタリアと国境をまたいで自転車の旅をしていく。これだけなら珍しくもない紀行番組なのだが、この番組にはもう一つ主人公がいる。それが番組タイトルにもなっている「ユーロヴェロ」である。

ユーロヴェロとはヨーロッパ全土をめぐるための自転車ルートを設定するためのプロジェクトのことである。全部で16のルートが計画・設定されており、従来から存在している自転車道の他、それらの自転車道を繋ぐ新しいルートなどを組み合わせて構築されていくのだという。都市の中の自転車道に対して、これらは都市間の自転車道であり、「旅」性の強いものと言えるだろう。

EuroVelo サイトのルート表示より

ユーロヴェロはヨーロッパ自転車連盟(ECF)が進めているプロジェクトであり、認定された道がユーロヴェロを構成する。ユーロヴェロは道を作るというよりも、道を認証するシステムでもある。認定されるルートには、以下のような条件をクリアすることが設定されている。

傾斜が6%以内であること

6%の傾斜がどれくらいかというと、筆者の住む近所には傾斜7%の坂があるのだが、高校に自転車で通う学生たちは毎日その坂を登っている。子供やギアのないママチャリでも登り切ることは可能で、電動アシスト自転車ならばわけもないだろう。日常的な通勤通学で超えることができる坂ではある。

2台以上の自転車が併走出来る幅があること

自転車は縦列走行が基本ではあるが、旅は道連れ、ともいう。グループライドになれば、会話も旅の大切な要素となってくる。自転車で並走しつつ会話できる環境が整えば、自転車はゴルフに並ぶ社交の場にもなるのではないかと考えている。クラブハウスや休憩所だけでなく、路上をコミュニケーションの空間にすることにもつながる。

平均一日1000台以上の自動二輪の通行がないこと

サイクリングロードは生活道路になっていることもある。サイクリングロードに原付自動二輪が走ってくることはよくある。道路幅として求められる大きさは4輪車よりも2輪車は自転車に求められる大きさに近いし、完全に原動機付きの乗り物を排除するのではなく、共存の姿勢を示す。これはルートを組み合わせる上で現実的な解決方法になるのかもしれない。

距離で80%は舗装されていること

私が今回一番目を引かれたのはこの項目だ。と、いうことは、ユーロヴェロのうち20%はグラベル(未舗装路)になっている場合もあるということだ。しかし考えようによっては、近年のスポーツ自転車界隈は、グラベル人気が上昇しつづけている状態である。何が何でもアスファルト舗装でなくてはならないと教条主義的になるよりも、多少の傾斜もアクセントになるように、多少の未舗装路走行もルートの味付けになるというおおらかな雰囲気も感じられる。

年間毎日通行可能で、30kmごとにサービス設備、50kmごとに宿泊設備、150kmごとに公共交通へのアクセスがあること。

降雨時に通行止めになったり、冬季に閉ざされるような道はもともとが険しいルートであることが多い。傾斜に加えてなるべく安全なルートを引くことは、旅の安全を守ることにもなる。アドベンチャーな体験だけではなく、仲間や家族などと一緒に移動できる環境として自転車ルートが求められる一つの基準になるのではないか。


このような設定を持つユーロヴェロをめぐる番組「ユーロヴェロ70000キロ」を一通りみてみた。番組の大半は自転車移動以外のシーンである。ウナギを焼いたり、建築を巡ったり、展望台で人と交流したり、旧市街を自転車でポタリングしたり、山の中でトリュフを掘ったりしている。しっかり図ったわけではないが都市間の移動は番組構成の10%〜20%ぐらいだったような印象である。

ただ、番組の尺としては短めの移動シーンは、未舗装路を意図的に挿入しているように見えた。自転車自身に走破性を向上させたグラベルバイクは、このような道を超えつつ長い距離を走るロードバイクのような扱いにも対応できる。今の自転車産業のトレンドを反映したような番組の作りになっていたようにも思えてならない。

この番組で取り上げられたルートはユーロヴェロの8番ルート、地中海岸を巡って最終的にはギリシアのアテネまで到達するルートである。しかし、このような大がかりな旅を推奨するばかりがユーロヴェロの目的ではない。ユーロヴェロの目的の中にはこのような言葉がみえる。

 promote a shift to healthy and sustainable travel – for daily trips and as cycling tourism.

「日々自転車に乗ることや、自転車によるツーリズムへと移行することが、健康的で持続可能な旅行への移行を促進する。」そのような将来像をイメージできるようにすることが、サイクリングルートに求められた役割なのではないか。

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