東京サイクルデザイン専門学校を見学

渋谷駅近くの東京サイクルデザイン専門学校は、2012年に開校した日本で最初の自転車専門学校。卒業制作展などで注目していたところ、念願かなって授業の実習を見学させていただいた。同校では2年制の自転車プロダクトコースで整備から制作まで幅広い技術と知識を学び、さらに1年をかける3年制の自転車クリエーションコースでは社会との関わりや人々の生活の在り方までをも考察すると言う。

最初に案内された教室では1年生が自転車フレームを制作中。あちこちでバーナーの焔が上がり、金属音が鳴り響いている。このビルディングの授業では6ヵ月で1台の自転車を作り、その終盤に差し掛かっているそうだ。2年間で3本のフレームを作り、3年制なら続く1年間でさらに3本作ることになる。しかも個人作業でより多くのフレームを作る意欲的な学生も多いらしい。

作業に大切なのは集中力で、初めてのことが多いので、適切に話を聞き取って熱心に作業に打ち込むことが必要不可欠らしい。そして差がつくのは仕上げ。早く作業する学生は仕上げに多くの時間が取れるので、綺麗な自転車ができると言う。なるほど、時折は笑い声が聞こえるものの、誰もが真剣な眼差しで一心不乱に金属フレームに向かっている。溢れんばかりの熱気だ。

次の教室は2年生のメンテナンス実習。自ら制作したシクロクロス用フレームにタイヤやコンポーネントを取り付けて、ちゃんと自転車として機能するかを確かめている。この授業では大衆的なシティサイクルからハイエンドのロード・バイクまで、あらゆる種類の自転車の整備を行い、自転車をバラして再度組み上げる。自転車ショップに就職した時に初見で触る自転車がないようするのが目標とのこと。

3年生は2年間で身につけた知識と技能を社会へ還元する取り組みを行う。今年はアクティブ・シニアがテーマで、グループワークで電動アシスト自転車を制作中。年配者へのヒアリングから始め、乗る人の体重や利用形態なども想定。太陽誘電から提供を受けるユニットはアシスト比などの要望も出してフレームを設計するそうだ。これは個人では難しい取り組みであり、現代的な実習になっている。

なお、見学時は開講されていなかったデザインの授業では、CADによるフレームの設計や3Dモデリングによるアクセサリーのデザインなどを行うとのこと。卒業制作展に見られる独創的な自転車は、同校のカリキュラムであるデザイン、ビルディング、メンテンスの3つのカテゴリーの授業が密接に関連しなければできない成果なのだろう。しかも、卒業制作の実制作は3ヵ月間と聞いて驚いてしまった。

ちなみに高校卒業して入学する学生が7〜8割なので、年齢的には18〜20歳が多い。現在の最高年齢は25歳で、過去には60代の人もいたそうだ。工業系の出身は3割程度と多いわけではない。女子学生は学年に1人程度と少ないものの、女性講師が在任することもあって今後増えるかもしれない。意外だったのはアジア圏からの留学生もいて、製造が盛んな中国や台湾には実は自転車学校がないそうだ。

このように東京サイクルデザイン専門学校では、自転車の構想設計から制作整備まで幅広く取り組むことができるようだ。しかも社会課題や生活様式にも意識的であるので、単純な自転車屋さんに終わらない広がりが得られそうだ。密かに入学を夢見ていた筆者は、実際の授業を拝見してその意を強くした。ソフトウェア志向で手先が不器用な人間でも、情熱があれば何とかなるだろうか(疑問)。

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