銀(塩)輪車 第8回 試作3号(偵察)

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

「銀(塩)輪車」第1回より

本連載では以上のような目標を掲げ毎月検証を重ね記事を公開している。前回の第7回では、試作2号を経て次なる手段を探るべく様々な可能性について考えた。その中で、現在使用しているILFORD HP5 PLUSというフィルムに比べ、格段にISO感度の低いフィルムを幾つか同じ条件下で使用してみるとう手段に行き着いた。今後その方法も検証するが、試作3号では前々から気になっていたことを試してみることにした。

夜、あるいは早朝

その、前々から気になっていたことといいうのは、第6回の「試作2号(実施)」にて以下のように説明している。

撮影時の天気は晴天であり、通常のカメラで撮影する場合にはf/8のシャッタースピードが1/250で少しばかり露出オーバーという感触であった。これを先述のツールに照らし合わせると、今回のピンホールカメラ(f/175)での最適な露出時間が約8秒間であるということがわかっていた。
(中略)
15分間の露出を行う場合には、早朝や日没後、あるいは曇りの日などある程度暗い条件下でないと撮影できないということとなった。

「銀(塩)輪車」第6回より

試作2号では日中の太陽光によりあまりにも明るかったがために、適正な露出時間が約8秒間というとても短い時間となってしまった。より露出時間を延ばすためには、前回言及したフィルムの光感度を下げること、レンズ径を小さくすること、そして最後に外部の明るさを下げることが手段として考えられる。低い光感度のフィルムの使用は今後試すとして、レンズ径を変更するのは異なるピンホールカメラを新しく用意する必要があり、難しい。よって、外部の明るさが低い環境下、つまり夜や早朝といった太陽光が少ない時間帯に撮影することで露出時間を延ばすことに挑戦しようと考えた。

夜や早朝といった暗い時間帯に撮影できるならば、試作2号で使用したISO値400のHP5 PLUSを使用しながらも、より長い露出時間を実現できる可能性がある。前回の記事で紹介したISO値の低いフィルムを購入する前に、まずはこの条件下で試してみる価値がありそうだと考えた。今回の試作3号(偵察) では、太陽が沈んだ後において、どのような時間帯ならば自転車で走行可能か、そして暗い中のルートなどについても調査してきたので写真と共に紹介する。

偵察

さて。今回偵察に行ったのは試作2号の際に走行した同じルートの、トーランス・ビーチの海沿いのサイクリングロードである。試作2号では晴天の中で午後2時ごろに撮影を行ったが、今回は午後8時20分頃に偵察を行った。カリフォルニアのトーランスでは最近の日没時刻は午後7時30分頃であるため、8時20分にはもう真っ暗になっていると思いきや、まだ微かに水平線には赤い光が残っていた。

なお、今回掲載している写真はすべてiPhoneのナイトモードを使用して撮影した写真であるため、実際に感じたよりも明るいように写っている。

少しだけ太陽の光が残っている

周囲の道路には日中に比べて走行中の車の数も格段に少なく、物静かな雰囲気が漂っていた。暗く視界が少しばかり奪われるせいか、いつもよりも波の音が大きく聞こえ、海の匂いがより強いように感じた。上記の写真のように時節犬の散歩等で歩いている人は見かけたが、ビーチ沿いにも全く人はいなかった。自転車で走行するには人通りが少ないことは有り難い反面、その分危ない目に遭わないよう気をつける必要がありそうだ。

ビーチまでの道は明るく賑わっている、もう既に夏気分である

ビーチ沿いの道へ降りてみると、街灯などはなく暗い道が続いていた。ただ、上の道路の街灯からの光が少しずつビーチまで届いているため、視認性はそれほど悪くなかった。もちろん走行する際にはライト等は必須になるが、暗過ぎてなにも見えないという心配はなさそうだった。パロスバーデスの夜景なども綺麗に見え、夜でも気持ちよくライドが楽しめそうだ。

遠くにパロスバーデスの光が見える

10分程このビーチ沿いの道サイクリングロードを歩いたが、走行している自転車には全くといっていいほど出会わなかった。これは走行しやすいとも考えられるが、逆に夜は治安的に危ないため人が出歩いていないとも取れるため少し心配が残ったが、ある程度は街灯に照らされている上、時節複数人で集まっている高校生くらいの学生を見かけ、その心配も少しずつ薄れていった。

暖かい夜を楽しむ高校生(?)たち

治安という観点では、このビーチは現在筆者と家族が住んでいる場所から歩きで10分ほどの場所にあり、これまでもあまり怖い思いをしたことがないため大きな心配は必要なさそうである。このビーチは超高級住宅地であるパロスバーデスからも近いため、ビーチ沿いのピザ屋などには1台数十万円する電動自転車を乗り回した学生たちが集まって遊んでいた。筆者も是非仲間に入れてほしい。続けてビーチ沿いを歩いていると、カラフルな電飾を装備してファンキーな音楽をスピーカーで流している電動自転車に乗ったおじさんにも遭遇した。

唐突な登場だっため上手く写真い収めることができなかった

このような風にして今回の偵察は終わった。露出時間を延ばすための明るさに関しては、日没後の8時から8時30分ごろの時間帯がちょうど良い明るさであると思えた。またルート的にも大きな問題はなくスムーズに走行できそうであることもわかった。この後に追加で日の出前の早朝も同じようにして偵察を行い、来月の記事では実際に試作3号での撮影を試みたい。

試作3号、4号

試作3号の実践を行うと同時に、ISO値の低いフィルムを用いて撮影を行う予定である試作4号以降のための準備も引き続き行う。ISO値の低いフィルムは筆者の付近のカメラ屋では販売しておらず、少しばかり特殊なフィルムのためネット等を経由して入手する必要がありそうである。また、撮影時の露出時間算出や撮影後の現像に関する手順等についても事前に調べるべきことが多いため、少しずつ進めていく必要がありそうだ。

試作2号でも走行したトーランス・ビーチにて、通常のピンホールカメラで撮影

引き続き自転車に乗りながら、本連載のための研究を重ねていく。

それでは、また。

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