銀(塩)輪車 第7回 インターバル

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

「銀(塩)輪車」第1回より

本連載では、ここまでこのような目標を掲げて毎月記事を書いてきたが、前回の第6回にて試作2号が飛躍的な進歩を遂げることができなかったことによって、現在は少し行き詰まっている状態にある。今回はそれを打破すべく、次なる試みのための手段について考え、試作3号へと繋げていきたい。

露出時間

さて、試作2号を終えた上で最も悩まされているのは露出時間の問題である。現在筆者が目標としている露出時間は1時間、最短でも15分間である。この露出時間とは撮影時間とも言え、またライドの所要時間とも捉えられる。ただし、やはり本来ならばライドの所要時間が露出時間によって制限されることは理想的でないため、ライドに掛かった時間に幅広く対応できる撮影方法を見つけるのが最終的な目標である。

そんな中で、試作2号の条件下では10秒間の露出時間が最適であったという結果になってしまったため、やはり露出時間の延長の手段を探す必要がある。当然のことではあるが、最適な露出時間が10秒間の場合にそれ以上長く露出をすると露出過多となってしまう。露出過多によって白飛び等が発生し、明る過ぎる写真となってしまう。

従来のカメラならばこれを回避するために、絞り値(f値)やシャッタースピードを調節して適当な露出で撮影することが可能であるが、今回はピンホールカメラを使用している為、絞り値が固定されている。よって必然的に露出時間を延長するには絞り値を変更する、つまりピンホールカメラのレンズ径あるいはカメラ自体を変更するという手段をこれまでは考えていた。

ISO感度

そこで、絞り値とシャッタースピードの他にもうひとつ変更することが可能な要素がある。それが、使用するフィルムの光感度である。露出過多になってしまう場合には、そもそものフィルムの感度を下げることによって、露出時間を延長することができるはずである。フィルムはISO感度と呼ばれる数値によってその光感度が表されているが、試作2号で使用したフィルムはILFORD HP5 PLUSと呼ばれる、ISO400のフィルムである。

ISOとは数字が大きくなるほど光感度が高くなり、数値が小さくなるほど感度が下がる。ISO400とは最も一般的とも言える光感度であり、他にはISO100やISO200などがよく見られる。少し変わったものだとISO800やISO1600といった、高感度のフィルムなども店頭に並んでいる。筆者はISO400のHP5を常に使用しており、現像やスキャン等もそれに合わせて揃えているため、異なるフィルムを使用するという手段がここまで全く頭に浮かんでいなかった。

異なるISOを使用することが今まで思いつかなかったのは、筆者自身も驚きであったが、何より試作3号へと繋がる道がひとつ開けたということで良かった。

試作3号へ

さて、このようにして試作3号はISO感度の異なるフィルムを試作2号と同条件の中で使用してみることで、露出時間を延長できるか検証することとなった。使用するフィルムについては、実施までにもう少しリサーチを進める予定ではあるが、現在有力候補であるものをいくつか紹介しておく。

そもそもの前提として、筆者のいるアメリカ国内にて入手可能かつ高価過ぎず、可能であれば現在の筆者の自家現像環境でも大きな変更なく現像できるものを優先的に扱いたいと考えている。現段階では最もメジャーであるカメラ・カメラ用品店のB&Hの通販サイトに掲載されているフィルムから候補をあげている。

先ず最有力候補はILFORD Pan F Plus Black and White Negative Filmである。これはモノクロのISO50のフィルムであり、メーカーはHP5 PLUSと同様のILFORDである上に通常の現像手順で現像が可能なことから、自家現像環境との親和性がとても高いと言える。ISO50というのも通常よりは感度が低く、ひとつ基準となりそうな値である。

更に低いISO感度となると、Rollei RPX 25 Black and White Negative Filmも試してみる価値のありそうなフィルムである。上記のPan F Plusの半分のISO25のモノクロフィルムであり、これも通常の現像プロセスで現像可能という記載があるが、メーカーがRolleiであるため、現像液等の希釈の比率などはより大きく調節が必要な可能性もある。

極限までISO感度の低いものとなると、Film Photography Project Low ISO Black and White Negative FilmというISO6のものも存在するようだ。このフィルムに関しては詳細についてもあまり記載がなく、少し変わり種のようだが一度試してみる価値はあるのかもしれない。

このようにして、試作3号からはISO感度の低いフィルムを扱うことによって露出時間を延ばし、ライドの所要時間に制限をかけないような撮影方法を見出していきたいと考えている。理想の露出時間を実現できたとして、それがどのような写真になるのかはまだわからないが、その後も試行錯誤しながら制作していくつもりである。

ライドに行きたいパロスバーデス(BESSA R + Summaron 3.5cmで撮影)

今回は自転車が全く登場しない記事となってしまったが、また来月は自転車に乗って試作を行いたい。

それでは、また。

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