新しい自転車ショップSTYLE-Bを訪ねて

今年3月、西五反田に新しい自転車ショップSTYLE-Bがオープンしたと聞いて、遅ればせながら訪ねてみた。場所は五反田駅から徒歩5分足らず、大崎広小路駅なら駅を出てすぐの高架下。だが、一見しただけでは自転車屋さんとは思わないだろう。入り口には野菜や果物が所狭しと並べられているのだから。ただ、よく見ればCYCLE&CAFEとのネオン・サインがあり、自転車が並んでいることに気がつく。

「自転車を通じて、日々の生活をもっと楽しく」と謳っているように、STYLE-Bは単なる自転車販売ではなく、自転車を中心とした総合的なライフスタイル・ショップだ。だから新鮮で安価な食材で人気の旬八青果店があり、自然素材のドーナッツプラントのカフェもある。自転車に用がなくても立ち寄りたくなるはず。ONOMICHI U2を手がけたSUPPOSE DESIGN OFFICEによる施設デザインも素晴しい。

もちろん自転車関係はとても充実している。メインはPure Cyclesの自転車で、販売だけでなく試乗車やレンタルもある。それにヤマハの電動アシスト自転車やOX Pecoの折り畳み小径車などもあり、すべて合わせれば数十台はあるだろうか。いずれも都市生活者のための自転車で、質実でお洒落な雰囲気。ここではエアロ・ロードや29er MTBなどは野暮ったく見えてしまいそう。そんな普段着感覚に溢れている。

また、自転車のパーツやアクセサリーも充実している。自転車向けの衣服や小物も多く、これがまた気負いのない都会派アパレルで、ピチピチのレース・ウェアはない。クラウドファンディングの製品がショーケースとして展示されているのも興味深い試み。シンプルな食器や籠細工のバッグなども並んでいる。ここでまた自転車屋さんであることを忘れそうになるのが面白い。

一方、通路を挟んだ奥の区画には自転車ショップとしての意欲的な展開が行われている。まず、充実した工具が並び、自転車の組み立てや修理が行われている。いずれ時間貸しの工房として活用できるようになるらしい。さらにランドリー・マシンが並び、シャワールームやロッカーを備えた室内駐輪スペースもある。郊外からショップまで自転車通勤している人もいるそうで、心強い設備に違いない。

筆者が知る限り、もっとも素敵な自転車ショップはバルセロナのPave(廃業)だった。ただ、Paveは中小都市の郊外なので、巨大都市の中心部とは事情が異なる。そう、STYLE-Bは東京らしいショップなのだろう。まだ新装開店のピカピカ感があるが、時間が経てば、ロンドンのLook Mum No Hands!やポートランドのVelocultに近い雰囲気になりそうだ。そのようにして自転車文化が根付くことを期待したい。

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