世界でもっとも素敵な自転車屋さん、筆者が訪れたショップのナンバーワンは、バルセロナの郊外にあるPave Culture Cycliste。どれくらい素敵かと言うと、初めて訪れた時にオーナーのJavier Maya氏がワイン3本をプレゼントしてくれたほどだ。翌年お礼に日本酒を持参すると、今度は近くのレストランでご馳走してくれる。遠い日本から来たゆえの歓待だろうか。だが、それだけが素敵さのワケじゃない。
Paveの魅力は、何より店舗が広々としていて、ゆったりと自転車やアクセサリー、ウェアなどが展示されていることだろう。多くの自転車ショップは、狭い店舗にカオスなまでに物を詰め込んでいるが、ここはそのような乱雑さに無縁。しかも、高級店にありがちな神経質なまでの潔癖さではなく、遊び心のある余裕が見え隠れしている。そこかしこに置かれた古い家財道具や可愛い小物が楽しい。
もちろん、商品の取り揃えは素晴らしく、トップ・ブランドの充実したラインナップとともに、意欲的なベンチャー的製品もいち早く取り揃えている。日本では見かけない商品も少なからずあり、じっくりと見て確かめることができる。圧巻はロード・バイクから小径車まで、自転車ごとに1台1台独立したライト・ボックスで展示されていること。もはやショップでなくギャラリーと呼ぶべきかも。
PaveはGoogle Mapsのストリート・ビューから店内に入れるので、多言を費やすよりはブラウザ上で店内を見て回るのが良いだろう。インドア・ビューでは、まるで実際にショップに訪れたように歩き回れる。近づけば商品の細部まで確認できるので、つい手にとって感触を確かめたくなる。余談ながら、2013年に初めて訪ねた際は、Google Mapsになく、不安を覚えながらタクシーで出かけたのが今は昔。
この店舗の所在地は市街中心部から離れており、鉄道やバスなど交通の便も悪い。だから、観光客がフラっと立ち寄ることはなく、ショップの雰囲気やポリシーに惹かれて足繁く訪れる自転車好きだけが顧客と思われる。だから、見知らぬ筆者が訪れた時も歓迎してくれたに違いない。バルセロナ空港からは近いので、フライト前にタクシーで出かけるのも良いだろう。一度は訪れて欲しいショップだ。
ところで、プレゼントしてもらったワインは「MATSU」という銘柄。そう「松」であり、筆者の名前と符牒があったらしい。店内にはNikeの「GYAKUSO」のポスターが壁一面に貼られていたり、カナダの「SUGOi」ブランドのウェアが置かれていたりする。日本語由来の商品が多いのはたまたまだそうだが、ちょっと不思議な気分になる。そんな不思議さがあちこちにあるのが、Paveの魅力だったりする。
【追記】Paveは2017年1月に閉店したようだ。最後に撮影されたと思われる写真が物悲しい。(2018.05.21)