新型グループ・ライドのギア〜ビジュアル編

新型コロナウイルス禍における新型グループ・ライドでは、各地に散らばる参加者が同時にサイクリングをしながら、オンライン会議システムでコミュニケーションを取ることを試みた。この時、お互いにカメラの映像を送っていても、それを見ながら走ることは難しい。iPhoneの画面を見ながら走行するのは危険だからだ。そこで、この問題を解消すべく、特殊なディスプレイを試してみた。

Vufine+

ビューファインのVufine+は超小型ディスプレイで、眼鏡やヘルメットなどに取り付けて目の前にセットする。片目で映像を、もう一方の目は周囲を見るので、目の前の光景に映像が重なって見える。iPhoneならアダプタを経由してHDMIケーブルで接続すれば、iPhoneの画面がミラーリングされて眼前に現れる。Varia Visionのような専用システムではないので、あらゆる汎用的なアプリが利用できる。

他のディスプレイに比べて、Vufine+は小型で軽量だ。シースルー(画面が透けて眼前の光景が見える)ではなく単純な表示機構なので、もっとも鮮明に映像が見える。奇を衒うことのないシンプルな製品だけに、応用範囲は広いと言える。惜しむらくは、取り付けの自由度ゆえか、動いているうちにズレて安定しないことだ。動作時間は90分と心許ないものの、USBケーブルで給電しながら使用できる。

BT-30E

エプソンのBT-30Eは眼鏡型のシースルー・ディスプレイで、Vufine+と同じく外部から入力した映像を表示する。サイドから投射する映像を目の前のハーフミラーで反射させるので、映像が眼前の光景に溶け込んだように見える。HMDIも使えるが、USB-Cで接続すればヘッドセットのカメラ映像やモーション・データを取得できる。これによってARや遠隔診断といった用途も想定されている。


BT-30Eと同等のBT-35Eの紹介ビデオ

Androidフォンに接続するとディスプレイとしては問題なく使用できる。有機ELによる映像は快楽的に美しく、野外でも問題なく見える。しかし、ZoomなどのアプリではBT-30Eのカメラへの切り替えができない。これでは単なるディスプレイでしかない。もっとも、UVC対応アプリならBT-30Eのカメラを使用できる。実際にもMacのZoomなら使用できたものの、Macでは長時間ライドは難しい。

BT-300

同じくエプソンのBT-300はコントローラにAndroidが内蔵されているので、Androidフォンなどを接続する必要はなく、単体で動作する。ヘッドセットにシースルー映像表示機能があり、カメラや各種のセンサーを搭載してるのはBT-30Eと同じ。実際に取り替えても動作する。コントローラにはタッチパッドが備わっており、画面上のポインタを動かしてアプリを操作する。


BT-300のイメージ・ビデオ(このようなアプリが提供されているわけではない)

BT-300ではGoogle Playが使えず、独自ストアは僅かしかアプリがない。もっとも、Zoomのapkファイルをインストールすれば問題なく動作した。ヘッドセットのカメラ映像も使える。これで使用者視点でカメラ映像を送ることができるので、新型グループ・ライドには最適なデバイスと言える。ただし、タッチパッドは恐ろしく操作性が悪いので閉口すること必死。この点は改善して欲しいと強く願う。


BT-300のカメラ映像のZoomでのクラウド・レコーディング

Nreal Light

エンリアルのNreal Lightは軽量なARグラスで、周囲の環境を認識し、現実空間に違和感なく仮想物体を配置できる。映像はシースルーで表示され、野外でも視認性は悪くない。現時点では基本的なOS機能とデモ的なARアプリしか用意されていないが、一般的なAndroidアプリをAR空間で実行できるNebula 3Dシステムがアナウンスされている。


Nebula 3Dシステムのイメージ・ビデオ

Nreal LightのOSはAndroidなので、Macなどに接続してscncpyを用いれば、ホーム画面が現れて各種操作が可能になる。Zoomのapkファイルをインストールすれば、Zoomが起動する。しかし、カメラ等が認識されないのか、ミーティングの開始や参加はできなかった。AR空間からAndroidアプリを起動する方法もない。これはNebulaが提供されるのを待つしかないようだ。

Nreal LightのホームとZoomの画面

このようにVufine+とBT-30Eは眼前のディスプレイとして、それに加えてBT-300は一人称目線のカメラとして使える。道路交通法上の安全運転義務も損なっていない。異様で不格好な外見は愛嬌で誤魔化して、遠く離れた友人と映像を交換するサイクリングの可能性を追求したい。いつか高速にSLAMが実行され、走行する傍に友人が現れるだろうか。このようにしてライドもまた進化するはずだ。

BT-300を装着した筆者

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