ノン坂バカ向け、スピリチャルな梅谷越

自転車に乗る人にはいろんなタイプがあるようで、そのひとつが「坂バカ」だ。峠や山頂を目指して上り坂を駆け上がるヒルクライムに無上の喜びを覚える人のこと。その心情を想像できなくもないが、筆者自身は坂は避けたいタイプだ。山道などで下り坂に差し掛かっても、その先を想像して、下らなくていいから上らないでくれ、と思ってしまう。鏡のように平坦で滑らかな舗装道路を走っていたい。

そんなノン坂バカの筆者が、今のところ唯一気に入っているのが梅谷越だ。山間のつづら折りで、折り返しが短く急な坂が続く。途中で足を付けば再び漕ぎ出せないこと必至。ただ、距離も勾配もそれなりで、プチ坂以上激坂未満であるのは有り難い。小さな渓谷沿いに水音を聞きながら、霧が立ち込める森深い山道を上っていくのは心が洗われる。チョイ苦行系のお気楽スピリチャル・ゾーン、それが梅谷越だ。

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この坂を東側からアプローチするには、池田温泉の脇を抜けて山に入って行く。池田温泉の下のトンネルに続く自動車道ではないので要注意。しばらく走ると二手に分かれるので左に入れば、そこからが梅谷越だ。ちなみに、右に入れば池田山山頂に向かい、そちらはより勾配が強く距離も長いので、梅谷越より上級者向け。道幅があるので、少なからず自動車が走っている。時には野生の鹿にも出くわすらしい。

さて、梅谷越は道幅が狭いが、自動車が滅多に通らないので、安心して通行できる。ただし、蛇行登りはできず、ひたすら淡々と上っていくしかない。舗装された路面の状態は悪くないが、ところどころ水で濡れていて、落ち葉や苔で滑りやすい。途中で諦めたくなるかもしれないが、距離的には短いので、心さえ折れなければ、なんとかなるはずだ。事前に調べておいて、折り返し数を数えながら上るのもお勧め。

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こうして十数分間ほど頑張ってペダルを漕ぎ続ければ、分岐点の峠に至る。来たりし池田町と行く先の垂井町の境界でもあり、崩れ落ちそうな木製の標識がある。周囲は変わらず深い森で、視界が開けるわけではない。ここで登坂成功を祝いながら小休憩しよう。峠の手前に岩清水が湧き出ているので、少し引き返して喉を潤すのも良いだろう。あたりは静まり返り、僅かに鳥の鳴き声が聴こえるだけだ。

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峠から先は、ひたすら下り坂が続く。梅谷越を上るにつれて気温が下がり、薄暗く冷気が迫まる。そして、坂を下るとともに気温が上がり、陽光の暖かみが戻ってくる。あたかも生気の喪失と復帰、あるいは死と再生、つまり典型的なスピリチャル体験が味わえる。なお、上りより勾配は緩めだが、濡れた落ち葉などで滑りやすのは同じだ。急ブレーキをかけないように、スピードに注意する必要がある。

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ところで、激坂ではないとは言え、初心者や体力に自信がない人は躊躇するかもしれない。そこで、そんな人にピッタリのサービスがある。麓の池田温泉の向かいにある道の駅などで電動アシスト自転車をレンタルしているのだ。体力のない人でも、ぐんぐん急な坂道を駆け上がって行ける。梅谷越ならアシスト力が強く、下り坂向きのディスク・ブレーキが付いたマウンテン・バイク型を選ぶのが良いだろう。

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