今回は自分がよく使っているフロント積載のシステムとその運用スタイルの変遷を紹介したい。ハンドルバー前への荷物の配置は、自転車に跨がったままでの中身へのアクセスが容易で、常に目に入っていることで物の紛失なども起きにくいので安心感も高くオススメだ。
ラックとハーネス
自分のシステムは基本的にフロントラックを必要とする。ラックなしで似たような積載もできなくはないが、安定性やタイヤとのクリアランスを確保するために装具を加えたりすると結局ラックがあるのと変わらない重量になる。なので車体(フォーク)が対応しているなら、フロント積載にはラックを組むのがよいと思う。ライトを装着できるラックならなおよい。荷物に邪魔されずに前を照らせ、かつ走行中に邪魔にならないライトの位置というのは地味に悩ましい問題だからだ。
ハーネスはラダーロック式の樹脂バックルがついたナイロンのストラップ2本。長さは1メートルで、これくらいがちょうどよい。これらのストラップは輪行の際にも使う。
マットを挟む
ラックとストラップだけで積載システムは一応は成立する。自分はそこに、EvernewのFP mat 100(厚さ5ミリ、160グラム)を加えている。畳んだ状態で25×50cmという非常に手頃な寸法のこのマットは、ラックからはみ出た荷物の垂れ下がりを軽減し、また素材のグリップ力で荷物のズレを(ある程度)防いでくれる。タイヤが巻き上げる土埃や水なども受けてくれる。マットはもちろんマットとして、出先の原っぱや河原でくつろぐスペースを生み出すことができる。優秀。
コンプレッション・ランドー・バッグ
ラック、ストラップ、マットによるフロント積載ハーネスを、自転車遊びの時にどう使うか。その自分なりのノウハウは、ここ数年で少しずつ熟成されてきた。中でも気に入っているセットアップの一つが、ランドナーバッグを組み合わせたものだ。一般にランドー・バッグには形状を維持するためのプレートの類が側面と底面に入っているが、これはマットで代用できる。そしてストラップで締め上げれば、バッグ内で荷物が踊ることもない。
ランドー・バッグにコンプレッションをかけるのはよいアイデアだと思っているが、バッグ自体の容量が小さいこと、色々なポケットがついている割にどれもあまり使い易くないことなど、もっとこうだったら、というポイントも次第に具体的になってきた。
フィールド用によりよいバッグを選ぶ
ハーネスシステムと組み合わせる自転車遊び用バッグは、ハンドルバーに置いた手に干渉しない範囲内で、ランドー・バッグより幅があるものがよい。15リットルくらいのバックパックを横倒しにして積むのも一つの方法だが、一般的な構造のものだと中身へのアクセスが悪く、肩紐などがピロピロしないように対処するのも面倒だ。これらの問題は、丸ごとスタッフサックに放り込んでしまえば解決する(出し入れする荷物はスタッフサック内のバックパック外に入れておけばよい)。ただ仕組みとしてあまり美しくないし、目当てのサイズで軽量、かつ滑り過ぎない素材のスタッフサックとなるとなかなか見つからない。
現段階で最も「使える」実感があるのはトートバッグだ。トートバッグにも色々あってうってつけの品は珍しいので名前を挙げてしまうと、パタゴニアの「ウルトラライト・ブラック・ホール・トート・パック」(27L)がかなりいい。まず幅が狙い通りで、またジッパーで口を閉じることができる(これは積載していない時に欲しい機能)。
このパックのメインコンパートメントの口にはジッパーだけでなくドローコードもあり、積載時にはこれが役に立つ。中にFP matを入れパック上部を(肩紐ごと)内側に折り返して高さを整えるのだが、こうしてもドローコードなら口を絞れるのだ。
前面に一つ(ジッパー開閉)、側面に二つ(メッシュ)という外ポケットの数・サイズ・配置も理想的だ。内部にも小ポケット(ジッパー開閉)が一つある。
さらにこのトートはバックパックにも変身するので、際どいところで自転車を担ぐ場合や自転車を一旦デポして徒歩で行動する場合などにも対応できる(それを想定したパッキングを心がけ、モードチェンジの折には自転車からボトルをサイドポケットに移す)。入手してから日が浅いためバックパックとしての性能についてはまだ十分に評価できないが、日頃の買い物から山まで、かなりマルチに使える優れた道具だと思う。
上記トートほどの汎用性はなく幅も控えめだが、EldoresoのCommute Run Ruckも好きだ。極めて普通のデイパック然とした外見ながらランニングを意識したつくりになっているので、背負っての乗車にも適している。サイドポケットはないもののショルダーストラップにメッシュポケットが設けられており、そこにボトルを挿せる(背負っている時)。自転車への積載時にはダブルのチェストストラップを用いてメッシュポケットをマットよりも外側、ステム脇に固定し、トートのサイドポケットと同様に手袋やハンカチなどを入れている(ボトルだと立ち漕ぎ時に膝が当たって微妙)。
自分が今メインで使っているフロント積載システムの紹介は、以上でほぼ全てとなる。既製品のみの組み合わせであり、特別に高価な構成要素もないので、興味がある人にはすぐに試してもらえるのではないかと思う(他によいバッグなどがあれば教えてほしい)。なお今回は扱わなかったが、前カゴもとてもよいものだ。荷物をただ放り込むだけという運用の簡単さは、自転車の日常性能をぐっと高めてくれる。
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