フロント積載ハーネス・システムとその運用の変遷

今回は自分がよく使っているフロント積載のシステムとその運用スタイルの変遷を紹介したい。ハンドルバー前への荷物の配置は、自転車に跨がったままでの中身へのアクセスが容易で、常に目に入っていることで物の紛失なども起きにくいので安心感も高くオススメだ。

ラックとハーネス

自分のシステムは基本的にフロントラックを必要とする。ラックなしで似たような積載もできなくはないが、安定性やタイヤとのクリアランスを確保するために装具を加えたりすると結局ラックがあるのと変わらない重量になる。なので車体(フォーク)が対応しているなら、フロント積載にはラックを組むのがよいと思う。ライトを装着できるラックならなおよい。荷物に邪魔されずに前を照らせ、かつ走行中に邪魔にならないライトの位置というのは地味に悩ましい問題だからだ。

現在の柳サイクルCozmoのフロントラック。ラックに対応したSeidoのMGVカーボンフォークに、Nitto M18をぐっと近づけて取り付けている。ステアリング軸から荷物が離れるほどそれに振られるようになるので、ディスクブレーキ車ならこうするのがよいと考えている。

ハーネスはラダーロック式の樹脂バックルがついたナイロンのストラップ2本。長さは1メートルで、これくらいがちょうどよい。これらのストラップは輪行の際にも使う。

ストラップの取り回し。テンションを調整し易いよう、末端は乗車時に手前にくるようにしている。

マットを挟む

ラックとストラップだけで積載システムは一応は成立する。自分はそこに、EvernewのFP mat 100(厚さ5ミリ、160グラム)を加えている。畳んだ状態で25×50cmという非常に手頃な寸法のこのマットは、ラックからはみ出た荷物の垂れ下がりを軽減し、また素材のグリップ力で荷物のズレを(ある程度)防いでくれる。タイヤが巻き上げる土埃や水なども受けてくれる。マットはもちろんマットとして、出先の原っぱや河原でくつろぐスペースを生み出すことができる。優秀。

ストラップをほぼ最大長まで緩めてFP matを差し込んだ状態。この空間とハンドルバーの幅によって積載量の上限が決まる。自分の場合は20リットル程度だろうか。さらに上にくくりつけるといった運用も可能。
スポーツ自転車との相性はいまいちと思われがちなショッピングバッグ。
こんな具合でくくってしまうことができる。肩紐はマットとの間に押し込んでおけば前輪に絡まる心配もない。
段ボール箱での荷物の発送なんかも、大きなものでなければいける。
荷物が少ない場合はハンドルバーを通さずにストラップを締めればOK(末端の余りは前輪に絡まらないようしっかり処理する)。

コンプレッション・ランドー・バッグ

ラック、ストラップ、マットによるフロント積載ハーネスを、自転車遊びの時にどう使うか。その自分なりのノウハウは、ここ数年で少しずつ熟成されてきた。中でも気に入っているセットアップの一つが、ランドナーバッグを組み合わせたものだ。一般にランドー・バッグには形状を維持するためのプレートの類が側面と底面に入っているが、これはマットで代用できる。そしてストラップで締め上げれば、バッグ内で荷物が踊ることもない。

ハーネスシステムを用いて取り付けたランドー・バッグ(2022年11月のきゃんつー集い)。パッと見ただけでは普通の方式との違いは分からないかもしれない。この時はストラップをハンドルバーに通さなくても安定していた。スペーサーをかまさなくても上ハンが塞がれないのでポジションの自由度が高く快適。
FP マットをこのように入れる。ほぼピッタリサイズ。
ストラップの取り回しの一例。前面のサブポケットの下部(ただし最下部ではない)に穴を空けてそこを通している。
雨蓋は荷物の量に合わせて動かせるように改造した。現状スナップボタンを打っているが、面ファスナーの方が良さそうだ。
同じバッグを普通に取り付けていた時(2021年7月)。容量ぴったりの荷物でないと中で暴れるか、溢れだしてしまっていた。

ランドー・バッグにコンプレッションをかけるのはよいアイデアだと思っているが、バッグ自体の容量が小さいこと、色々なポケットがついている割にどれもあまり使い易くないことなど、もっとこうだったら、というポイントも次第に具体的になってきた。

フィールド用によりよいバッグを選ぶ

ハーネスシステムと組み合わせる自転車遊び用バッグは、ハンドルバーに置いた手に干渉しない範囲内で、ランドー・バッグより幅があるものがよい。15リットルくらいのバックパックを横倒しにして積むのも一つの方法だが、一般的な構造のものだと中身へのアクセスが悪く、肩紐などがピロピロしないように対処するのも面倒だ。これらの問題は、丸ごとスタッフサックに放り込んでしまえば解決する(出し入れする荷物はスタッフサック内のバックパック外に入れておけばよい)。ただ仕組みとしてあまり美しくないし、目当てのサイズで軽量、かつ滑り過ぎない素材のスタッフサックとなるとなかなか見つからない。

横倒しにしたバックパックをジッパー開閉のスタッフサックで包んだ場合(2022年夏のきゃんつー集い)。幅方向への容量の余裕があるのはよいが、ツルツルしたシルナイロンのサックだとマットのグリップがあっても悪路で結構ズレる。

現段階で最も「使える」実感があるのはトートバッグだ。トートバッグにも色々あってうってつけの品は珍しいので名前を挙げてしまうと、パタゴニアの「ウルトラライト・ブラック・ホール・トート・パック」(27L)がかなりいい。まず幅が狙い通りで、またジッパーで口を閉じることができる(これは積載していない時に欲しい機能)。

ウルトラライト・ブラック・ホール・トート・パック。隠れてしまっているがフロントに大きな外側ポケットがある。

このパックのメインコンパートメントの口にはジッパーだけでなくドローコードもあり、積載時にはこれが役に立つ。中にFP matを入れパック上部を(肩紐ごと)内側に折り返して高さを整えるのだが、こうしてもドローコードなら口を絞れるのだ。

中にFP mat。パックに備えられていた前面と背面をつなぐベルトはこの用途では邪魔なのでカットした。

前面に一つ(ジッパー開閉)、側面に二つ(メッシュ)という外ポケットの数・サイズ・配置も理想的だ。内部にも小ポケット(ジッパー開閉)が一つある。

ドローコードで口をギュッとしたところ。手前に見えているのが外側ポケットのジッパー。補給食や救急用品など行動中にすぐアクセスしたい小物はこちらへ。
自転車に積んだ様子。FP mat 100を中と外でダブル使いしている。この辺は荷物の量や敷物としてのマットの必要枚数によって変動する。側面メッシュポケットは手袋やハンカチといった外気に当てたいものの格納に便利。
行動中のメインコンパートメントへのアクセスの図。雨具などは上の方に入れておき、必要になったらサッと取り出して着る。ストラップがギチギチで手の出入りがきつければ片側だけ一時的に緩めればOK。濡れた服をパックの外で乾かすことも想定。土砂降りに遭っても濡らしたくない荷物はドライバッグに入れる。

さらにこのトートはバックパックにも変身するので、際どいところで自転車を担ぐ場合や自転車を一旦デポして徒歩で行動する場合などにも対応できる(それを想定したパッキングを心がけ、モードチェンジの折には自転車からボトルをサイドポケットに移す)。入手してから日が浅いためバックパックとしての性能についてはまだ十分に評価できないが、日頃の買い物から山まで、かなりマルチに使える優れた道具だと思う。

上記トートほどの汎用性はなく幅も控えめだが、EldoresoのCommute Run Ruckも好きだ。極めて普通のデイパック然とした外見ながらランニングを意識したつくりになっているので、背負っての乗車にも適している。サイドポケットはないもののショルダーストラップにメッシュポケットが設けられており、そこにボトルを挿せる(背負っている時)。自転車への積載時にはダブルのチェストストラップを用いてメッシュポケットをマットよりも外側、ステム脇に固定し、トートのサイドポケットと同様に手袋やハンカチなどを入れている(ボトルだと立ち漕ぎ時に膝が当たって微妙)。

Commute Run Ruckをくくる(やくも氏ブログ記事より、2023年8月のきゃんつー集いでの様子)。

自分が今メインで使っているフロント積載システムの紹介は、以上でほぼ全てとなる。既製品のみの組み合わせであり、特別に高価な構成要素もないので、興味がある人にはすぐに試してもらえるのではないかと思う(他によいバッグなどがあれば教えてほしい)。なお今回は扱わなかったが、前カゴもとてもよいものだ。荷物をただ放り込むだけという運用の簡単さは、自転車の日常性能をぐっと高めてくれる。

前カゴもいいぞ

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