柳サイクルでクロモリフレームをオーダー #6:フォーク交換を経て一層しっくりきたCozmo

柳サイクルのオーダー自転車Cozmoに乗り始めて6ヶ月目に入った。自分の指定したCozmoのジオメトリーのイマイチだったかなというポイントを3月初旬のフロントフォーク交換でほぼ解消できたので、その辺のことを記しておこうと思う。

700C前輪を入れ房総バイクパッキングに

どの部分を何mmにするか自ら考え、柳サイクルの飯泉さんにそのジオメトリーでの製作をお願いしたCozmo。実際に組み上げてみて以来、気になっていた点が二つあった。一つは、ステアリングの癖とそれに関連するフロント接地面のグリップのピーキーさ(路面によりグリップが過剰だったり逆に足りなかったり)。もう一つは、ボトムブラケット=BBの低さからくるペダルストライクと車体の直立安定傾向である。前者はトレイル不足が一因となっている可能性があり、これはフロントタイヤの外径を大きくする and/or フォークを長くすることで改善できる見込みがあった。いずれの方法でもフロントが高くなるのに合わせてBBも持ち上がるため、自ずと一石二鳥となる。

友人のところにCozmoと同じ規格の車軸を使う700Cの前後ホイールセットがあったので、2月中旬、まずはその前輪を借りて入れてみることにした。タイヤは手持ちの41C。650x47Bからだと15mmくらい半径が大きくなる。完成車付属と思われる700Cホイールで、タイヤもチューブ入り仕様のため重くはなったが、乗り味は上々だった。フロント周りの「倒れ込み」(たぶん「ホイールフロップ」と呼ばれるものと同じ)は少し増したものの、車体が(相対的に)立ったままステアリングが水平方向に動く感触は減った。BBもちょっと高くなり、ペダルストライクに過敏にならなくてよくなった。

700Cの前輪を入れてみたところ

このセットアップで、2月末に房総半島へバイクパッキングに出かけた。懸念事項の一つ、外径が大きくなったフロントタイヤへの靴の爪先の接触は、ちらほら発生するも気になるレベルではなかった。野営の荷物を積んだ状態、かつ登り坂でのステアリングの倒れ込みも、舗装路・未舗装路いずれにおいても許容範囲内と感じられた。

バイクパッキングの道中での一枚

といっても前輪700Cの継続運用は現実的ではない。650Bに比べ担ぎでの取り回しが悪く、40mmくらいの幅だとガレた砂利道ではエアボリュームもちょっと心許ない(かといって太くすると取り回しがさらに悪化する)。異径ホイールのミックスだと非常用のチューブも余計に必要になる。そんなわけで、前後650Bホイールでフォークを伸ばすのがやはり正攻法といえる。700C前輪でのテストで得たものはそこで活かせばいい。

フロントフォークを選ぶ

650Bに戻してみると、砂利道などで前輪のグリップが700Cより粘らないことを改めて実感できた。これは意図的にハンドルバーに体重をかけても解消されなかったので、フロントセンター:リアセンターの比率の問題というよりトレイルに起因するものだと考えられる。フォークを伸ばせばヘッド角が寝てトレイルは増える。前から試してみたかったカーボンフォークにいよいよ手を出す時がきた。

前後650Bに戻したところ(キュッとしている)

Cozmoとセットで作って頂いたクロモリフォークは首下395mm、オフセット55mm。ヘッド角は71.5°となり、47mmの650Bタイヤ前後を使用する場合の計算上のトレイル値は56mmである。交換フォークの要件は、まず3連のダボ穴を両側に備えていること。これについてはBikepacking.comが便利なリストをまとめてくれている。首下は410mmくらいで、オフセットは(45mmや47mm、49mmなどが多いが)大きく減るとトレイル過剰になり爪先クリアランスも心配になるので元と同じ55mm程度が望ましい。以上の条件に合う製品に、Seidoというブランド(日本語の「精度」から銘々)のMGVフォークがあった。

Bikegeocalc.comでみたCozmoのジオメトリー

Seido MGVフォークは首下410mm、オフセット53mmで、他の条件を変えずにCozmoに組むとヘッド角70.68°、トレイルは63mmとなる。爪先クリアランスは1mm増加、BBは6mm上がる。机上の計算では理想的だ。もちろんカーボン製なので軽量化になる。そして何より、フロントラックの装着が公式に想定されている。これだ、というわけで、いつもお世話になっている町の自転車店へ注文に向かった(日本ではライトウェイ扱い)。

Seido MGVフォークを組んだ場合

フォークを換えたCozmoを乗り回す

フォークは翌週には店に到着、大まかなコラムカットと下玉押しの圧入を行ってもらいCozmoに組み付けた。第一印象は「MTBっぽい見た目になったな」であった。乗り味は軽快、かつフロントの挙動と路面グリップも700C実験の時の感触に近い。両踵を下げ身体の重心を後ろ気味にした姿勢で砂利が積もったところに進入、そこでわざと車体を傾けても前輪が粘ってくれる。2~3cm程度の深さの砂地で同じようなことをしても、滑りつつしっかり粘る。増えたトレイルと長過ぎないフロントセンターが上手く効いているようだ。

新しいフォークで河川敷ダートへ

荷物を積めるカーボンフォークを活かして軽いバイクパッキングにも出た。フロントラックを組み、まだ3月末だが夏を見越してバックパックを背負わないセットアップを試す。桜前線を足踏みさせた雨が残る中、川を辿って東京西部のキャンプ場へ。そう遠くないながら往復とも全自走で、重量の分散のさせ方で乗り味がかなり変わることを再発見する行程になった。その模索は今も続いている。

往路の午前中はまだ降っていた
午後には晴れてサイトも乾いた
戻ってから荷解きせず積載方法の改良を試みたり

自分でジオメトリーを決めるのは難しく、面白い

こんな具合でCozmoは自分の求めるものにより近づき、汚れるにつれて(頼もしく、かつ)気楽な相棒という感覚も深まってきた。こうしたプロセスはとても面白いものだ。とはいえ、フルオーダーなのに最初から完璧とはいかないのか、という点が気になる人もいるだろうから、そこについてもざっと自分の考えを述べておく。

自転車のフルオーダーにおける最大のポイントは、求めているフィーリングの言語化だろう。事前の相談や既存モデルの試乗といった依頼者とビルダーの共同作業を経て「イメージ」が「言葉」となり(体格や性格、身体操作の癖なども汲み取られ)、それがジオメトリー、素材、工法、パーツ構成といった要素からなる「物」として具現化されるわけだ。自分はそれなりに言語化できているつもりで、ジオメトリーの具体値も飯泉さんに任せないコースを選んだ(特別おかしな寸法ではない、とのチェックはして頂いている)。しかし考えていたことと数値の間に理解の甘さゆえの不一致があり、それが結果に表れた。

より一般的な、ジオメトリーの値まで指定しないオーダーの場合、知識・センス・腕の揃ったビルダーに任せれば、言葉→物の過程ではまず間違いは起きないはずだ。ただし依頼者のイメージが(ビルダーとのやりとりを経ても)上手く言語化されていなければ、言葉→物の変換が正しくても出来上がった自転車に満足できない可能性がある。・・・こう書くと不安になるかもしれないが、ノウハウが蓄積されているスタンダードな設計の車体に関してはことさら心配する必要はないだろう。

Cozmo近影

この記事を書く直前にそれなりにちゃんとした写真をいくつか撮ったので、以下に並べておく(クリック/タップすると別窓で大きな画像が開きます)。本文と合わせて何かの参考になれば嬉しい。

基本セットアップ
ドロハンMTB感が濃い
ビタ寄せで組んだフロントラック
ハーネスの取り回し
シートクランプはTNIの泥よけ付き

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