野草採取ライド&クッキング 前日譚

以前投稿した「大垣〜新潟470kmロングライド 道中編3日目」にこんな一文がある。

’’昨日の雨とは違い、空が晴れていることに有り難みを感じつつ、その一方で青い空と生い茂る木々とアスファルトの変わり映えしない風景には飽きてきていた。’’

大垣〜新潟470kmロングライド 道中編3日目より

そのような感想を記述した僕は、自分自身の感性が鈍っていることに気づいた。

その瞬間、昭和期の詩人、茨木のり子が脳内に現れ、こう呟いた。

自分の感受性くらい 

自分で守れ 

ばかものよ

自然を分析する能力に欠けているため、草木の生い茂る風景を単なる一般的な風景として見てしまい、簡単に飽きてしまったのではないか。もし、風景を構成する草木の種類や特徴を知っていたら、同じ体験をしていたとしても、風景の魅力を味わうことができたのではないだろうか。

というわけで、自分の感受性を守ることにした。

さっそく、野草に関する本を購入。

森昭彦「食べられる草 ハンドブック」(自由国民社、2022年)

風景を構成する様々な植物の中で、なぜ野草に注目したかというと、一見、僕たちにとっては取るに足らない存在と思われている雑草が、種によっては食べることができ、自分たちの生活を支える要素になり得ることに魅力を感じたからだ。つまり、知ることで得られるメリットが一番大きいと考えたからである。

散策しながら野草の名前を調べたいと思い、本はハンドブックサイズを重要視して購入した。身の回りにはたくさんの野草が生えているのが、名前を知らないとその存在に気づけないことが多い。まずは野草の区別ができるようになることを目指し、ゆくゆくは食べることを目標に活動を始めた。

地面を見つめる経験は久しぶりで楽しい。

ロゼット状の野草 これはたぶんギシギシかな、、?

名前を知ると、その植物が視界に入っただけで観測できるようになる。大垣周辺を自転車で走った時に気になる野草を見つけたら同定を行う習慣が身につき、とうとう野草を食べてみることにした。

図鑑を見ながら食べられそうな草を摘んで、簡単そうな天ぷらを作った。カタバミの天ぷらは酸味が強く美味しくなかった。後で調べたところ、カタバミにはシュウ酸が豊富に含まれているため食べ過ぎに注意が必要だということが分かった。

一方、それに比べるとヨモギの天ぷらは美味しかったが、揚げ方が上手くいかず油をたくさん吸ってしまいコッテリしてしまった。本格的にきちんと調理されたものを食べたくなり、そうした機会を作ることを構想し始めた。

その旨を(大垣〜新潟470kmロングライドでお馴染みの)浅尾に共有すると、「友人に料理人がいるから、せっかくならプロに調理してもらったら」という提案をいただいた。野草を美味しく調理するノウハウがない僕はその提案に魅力を感じつつも、プロへ支払う金銭的余裕がなく悩んでいた。

ある日、本格的な薬草料理に興味を持った僕は、岐阜県にある「薬草カフェまるかる」へ浅尾、赤松先生と共に訪れた。薬草が秘める魅力を堪能し、野草の可能性を探求するモチベーションが高まった。

薬草カフェまるかる 岐阜県揖斐郡揖斐川町春日六合3068-1

このカフェでは薬草を利用した料理を味わうことができる。

まるかる膳 1600円
ぎふコーラ(炭酸割り) 600円

赤松先生に野草料理に関する事情を話したところアドバイスをいただき、野草料理を作る会をイベント化することに決めた。構想時は冬だったので春を待ち、野草が生い茂る時期に開催することにした。

イベントは2日間にわたり、1日目に野草を採取し、2日目にそれを調理して食べる。身近な野草を対象とするため、大島堤サイクリングロードや揖斐川沿いの河川敷を採取場所とした。大島堤はかつての輪中の一部で、大島堤の曽根城公園から津布良公園にかけて約4kmがサイクリングロードとして整備されている。揖斐川はIAMAS校舎から少し東にいったところを南北に通る川である。

大島堤がある輪中堤には桜並木が整備されている
揖斐川沿い河川敷

イベントを主催する以上、野草の安全性を確保し提供する責任がある。当日に向けて野草を同定するトレーニングを始めると共に、暖かくなり始めた3月上旬からは現地下見を繰り返し行い、採取可能な野草と場所の確認を行った。

ヨモギ
ノゲシ
ノビル
コウゾリナ
ギシギシ
コハコベ(白い花が咲いている草)
カラスムギ?
アップルミントに似ているが微妙に違う、、、
同定できなかった野草
同定できなかった野草

ノビルやノゲシ、コウゾリナなどは容易に判別できるようになったが、スマホの植物判別アプリを試したり、ネットや手持ちの図鑑で調べても同定できない野草がほとんどだった。確信を持てる野草だけを料理に使いたいが、現状では使用できる野草が限られているため、当日までにもっと使えそうな野草を調べることにした。

また、本イベントでは多数の人に野草を食べさせることになるため、食中毒などの問題が起こらないように最大限の安全対策を講じなければならない。野草を採取する場所として、揖斐川河川敷や大島堤サイクリングロードを考えていたが、知人から薬剤散布の可能性について指摘されたため、安全性に不安があった。

大垣市役所の都市計画部公園みどり課に問い合わせたところ、除草剤を散布しても土壌微生物によって分解されるため、散布後に生えた野草を少量食べる程度なら問題がないという回答を得た。ただし、揖斐川河川敷は国土交通省の管轄ということで、回答を得ることができなかった。管理部署に問い合わせても開催日までに回答が得られないだろうと判断し、採取場所を大島堤サイクリングロードに絞ることにした。

次回は野草イベント1日目、ライドで野草採取!

次回公開する野草採取ライド&クッキング 1日目は、4/18更新予定。記事全体の構成は前日譚、1日目、2日目の3つからなる。

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