銀(塩)輪車 第11回 試作4号(計画)

今回の記事では、第10回の試作品の結果を踏まえて次なる制作について考えていく。本連載は、以下のような目標を掲げながら、写真と自転車を組み合わせながら様々な形で試行錯誤していく内容である。

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

「銀(塩)輪車」第1回より

試作3号を受けて

さて前回に試作3号の実施を行ったが、その結果を踏まえた上での次なる試作品へのアイディアが固まらず、現在行き詰まっている状況にある。試作3号に関しては、自転車に固定したピンホールカメラを用いて自転車走行中の風景を長時間露光作品として撮影する、という点において大きな成功と言えるだろう。実際に夜間に光を発していた街灯などの光が自転車の揺れを表した線となって写り、これまでにない自転車に乗る行為の記録になったと言えるだろう。

試作3号で撮影した写真

ただし同時に、試作3号で撮影された写真は自転車に固定されたカメラでなくても撮影できるようなものであるように筆者には思えた。実際には自転車に乗ることによって撮影できた写真であるが、この写真にはそれを示すような要素が見つからない。この点について解決方法が見出せなかった。

固定カメラ

唯一、現段階で筆者に考えられるアイディアとしてはカメラを自転車に固定するのではなく、三脚等で定位置に固定するという案がある。これは、筆者が個人的に夜間の風景写真を長時間露光を使って撮影していたことをきっかけに思いついたアイディアである。

筆者が個人的に撮影した夜間長時間露光写真

つまり、よく日本の首都高などを長時間撮影した写真などで車のライトが光線の川のような絵を描き上げているように、ライトを点灯した自転車を遠くに固定したカメラで長時間露光するといった案である。試作3号と決定的に異なる点としては、カメラが固定されブレ等がなくなるため風景をしっかりと写真の中に収めることができる点にある。

風景の一部として自転車に搭載された光の線が写真に収まることで、「距離的移動」を周辺の風景と比較しながら理解することができる。また同時に、周囲の車の光が残した線と比較することで自転車の「速度」に関しても読み取ることができるかもしれない。当初は自転車や乗っている人の身体にカメラを固定することで「振動」や「身体的疲労」を記録できると考えていたが、この固定カメラの方法でもそれらを記録できる可能性がある上に、「風」や「周囲とのコミュニケーション」等に関しても風景から伝わる部分が見つかる可能性がある。

試作4号

以上の固定カメラ案について、まずは実施してみないと出来上がった写真がどうなるかはわからないため、「試作4号」として実際に撮影することにする。そしてこの方法にとって最も重要とも言える点として、風景の選択がある。どのような風景をどのように撮影するかという点については、幾つかのアイディアを4号で実施し、最善な風景を導き出したい。

試作4号の実施に関しては、来月の記事にて結果を記載しいたいと考えているが、今回は多くの考慮すべき点があるために慎重に取り組んでいきたい。第一に浮かぶ注意点として、カメラを固定して撮影する際に筆者は自転車に乗っている必要があるため、定位置にカメラを置いていってしまうこととなる。これにはカメラのある位置に誰かに待機してもらう必要がある。このような点においても、出来上がった写真だけでなく手法や手段も含めて連載を通して報告していきたい。

さて、今回は短い記事になってしまったが着実に銀塩写真と自転車の新しい組み合わせ方を発見している感覚がある。これからも模索しながら、進めていく。

それでは、また。

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