信越自然郷を走る (1) 斑尾高原グラベル・ライド

残暑厳しい8月の終わり、街を抜け出してGiroがプロデュースする斑尾高原グラベル・バイク・パークに出かけた。この標高約1,000メートルのリゾート地はスキーなどのウィンター・スポーツの他にも、高原の地形や植生を活かしたトレッキングやトレイル・ランが盛んだそうだ。そのような良い環境もあって2020年からオフロードの自転車専用コースが整備され、今年で2シーズン目の運営が行われていた。

前日からの雨が残り、小雨が降り霧が立ち込める生憎の空模様ながら、高原の凛とした空気に心が躍る。レンタルしたのは電動アシストのマウンテン・バイク、ミヤタのRidge Runner。これは偶然にも筆者の自転車と同型なので、勝手知ったる乗り心地。普段の街乗りとは違って、アップダウンの激しい荒地でこそ本領を発揮してくれるはず。なお、自転車は持ち込みも可能。

受付でコースについて丁寧な説明を受ける。初心者向けから中級者向けまで4つの自転車専用コースの他、ハイキング用のトレイル・コースも自転車で走れるようになっている。各コースには要所要所に目印があるので分かりやすい。ただ、それでもコースの入口や分岐点に迷っては、コース・マップとスマートフォンに助けられる。何しろ大半は森林の山道で、見通しが良いわけではないからだ。

さて、筆者は経験が少ないこともあって、初心者コースからしてドキドキと鼓動が高鳴る。舗装道路と違って地面の状態や勾配が読めないので、全方位に神経を集中させなければならない。下り坂ではスピードを殺しながらも、ブレーキが強過ぎればタイヤがスリップしてしまう。濡れた泥道は滑りやすいし、視界を遮るほど草の丈が高いところもある。転倒したことも一度や二度ではない。

もちろん、そのような非日常的なスリルこそが醍醐味であり、無上の爽快感に溢れている。普段の平穏な生活を脱し、自然の中で感覚と神経を総動員する。体力だけでなく知力も必要。やがてコツを掴めば周囲を見渡す余裕も出てくる。湧水で喉を潤していると、色鮮やかなキノコや飛び始めたトンボに気がつく。樹々の緑や遠くの山々も麗しい。そして慣れた頃に無茶をして、また転倒するのもお約束。

ところで、Giroはアメリカ西海岸発祥で、彼の地の一般道路は自動車が爆走して危険極まりない。そこで自転車で側道や山道を走るようになり、企業文化として根付いているそうだ。そのような砂利道の魅力を日本に伝えようとして、自転車による地域振興に熱心な飯山市の助力もあって斑尾でのコース造りが始まったと言う。スキーやトレイル・ランなど地元団体にも歓迎され、良好な関係らしい。

一方、パーク(公園、自然公園)という言葉が示すように、お膳立てされた人工的な遊び場であることも確かだ。ここでのスリルは遊園地のジェット・コースターと大差ない。ただ、筆者のような初心者には練習場として有り難い。ここでグラベルの初歩を体得すれば、やがては人里離れた林道を走り、道なき道へと挑むようになるだろうか? 高品質な舗装道路を懐かしみながら、今後のことを考えた。

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