銀(塩)輪車 番外編④ アメリカでの自転車修理

今月の記事では、先月に引き続き番外編としてアメリカでの自転車事情について書くことになった。というのも、本連載の本筋の内容に沿った次なる試作品の制作が、自転車の故障と修理によって叶わなかった。2ヶ月立て続けの番外編になってしまい、本連載の本来の内容に少し間が空いてしまっていることは不本意はであるが、今月の記事ではアメリカでの自転車の故障と修理についての筆者の体験の記録を残していこうと思う。

スポークが外れる

さて、その今回の筆者の愛車の故障というのは走行中に後輪のスポークが1本外れてしまうというものだった。故障したのは毎週恒例である月曜日の朝に、隣の家のロバートと一緒に行くライドを開始した直後であった。この毎週行っているご近所さん達とのモーニングライドに関しては、番外編②にて詳細に書いている。

ちょうど家の前の坂を下り、右に曲がって少し大きい道路に出た瞬間に後ろの方で何かが外れる音がした。その音がした次の瞬間には後輪の回転を妨げるように何かしらが引っ掛かっている感触があり、すぐに路肩に自転車を寄せて停車した。初めに点検した時には何が外れたのかわからなかったが、少し先で止まってくれたロバートがすぐにスポークが外れたんだと教えてくれた。

画像中央のスポークが1本抜けてしまっている

それを聞いて確認した筆者は、すぐさま後輪のホイール自体を交換することになるかと考えた。しかしロバートによるとスポークが外れることはそれほど珍しいことではなく、新しいスポークを入れるだけで修理することができるということだった。ただし新しいスポークを入れるという作業自体は簡単なわけではなく、特に後輪の場合は道具などが必要になるということであった。

自転車屋へ行く

修理に関しては、ロバートもある程度の道具を持ち合わせていたため自力で試すこともできたが、ここは自転車屋に頼んでみようと決断した。実は筆者はアメリカへ引っ越してから未だに自転車屋に足を運ぶきっかけが一度もく、アメリカの自転車屋を観察しに行くという目的も持って今回は修理に出した。

PCH沿いにあるSprocket Cycles

家から近く、ロバートやケビンにおすすめされていたSprocket Cyclesという自転車屋に修理を依頼することにした。大きな通りであるPadific Coast Highway沿いにある自転車屋だが、建物の裏に駐車場もあり、車に載せた自転車を店内に運ぶのも楽ちんだった。

店内の様子

店内では店員が明るくフランクに対応してくださり、修理の依頼はほんの数分で完了した。本来ならばあまり時間はかからない修理なはずだったが、たまたま修理の依頼が殺到している様子で2日間筆者の愛車を預かって新しいスポークを入れてくれることになった。

店内にある修理スペース

アメリカの自転車屋

2日するとiPhoneにテキストが届き、内容は修理が完了したのでいつでも自転車を受け取りに来てくれという自動メッセージであった。すぐに車で向かったところ、筆者の愛車は既に外に置いてあった。修理の料金を支払い(25ドル+税)、カウンターにいた2人の店員と少し立ち話をした。

画像中央のスポークが修理して新しくなったもの

店員の1人は筆者とほとんど同じ年齢の方で、彼女は高校生の頃に1ヶ月ほど千葉県の柏市にホームステイをしたこともあり、日本や日本での自転車事情について話をすることができた。自転車の店内の様子というのはそれほど日本のもの大きく変わらなかったが、やはり日常的に乗る自転車の種類や目的などに違いがあるようだった。

特に筆者の印象では、日本では自転車といえばまず先に頭に浮かぶのはロードバイク等のスポーツ向けの自転車ではなく、日常的に使うママチャリやカゴのついた自転車であった。近年ではママチャリの多くには電動アシスト付きのものが増えている印象もある。

対してアメリカで自転車というと、基本的には運動やスポーツとして乗るものである印象がある。Sprocket Cyclesの店員の方も、週6日のペースで毎日自転車に乗っているが、その全てが運動をするためにビーチ沿いを走ることであって、買い物や生活の足として自転車を使った経験は殆どないと言っていた。

ただ同時にSprocket Cyclesでは近年ユーロ系の日常生活で使うような自転車の販売も徐々に増えているようで、これには自動車による排気ガスなどといった環境問題への世間の意識の変化などが影響しているのではないだろうか。このような流れがある今こそ、XYZ Cargoなどの新しい機能や用途が可能となるような少し変わった、新しい自転車なども普及しそうだと考えた。

ひとつ確実であるのは、アメリカ、特に筆者の住んでいる地域ではCOVID-19によって外出などへの規制が発生し始めた頃から自転車を利用する人口が明らかに増加したことである。そしてこれによって街の自転車屋はより仕事が増えているのだろう。また度々自転車屋に立ち寄り店員の方々の話を聞くことで、筆者の気付かなかった現地の自転車事情が見えてくるかもしれない。

記事のために店内の写真撮影も快く承諾していただけた

来月へ

このようにして愛車のスポーク外れ事件は無事解決し、普段通りにライドを行える状態となった。Sprocket Cyclesの店員の方はCritical Cyclingの活動にも興味を持ってくださったので、是非この連載もアメリカに留まらず世界へ届くように精進していきたい。来月こそは本連載の本筋の内容である、試作の制作と自転車を用いた写真の撮影を行なっていく。是非楽しみにして頂きたい。

それでは、また。

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