太平洋岸自転車道 (1) 御前崎・浜岡ライド

大井川の上流から河口まで辿った後、御前崎手前の宿を目指す。このあたりは鉄道がなく、バスは自転車お断りと輪行不毛地帯。だから、再び降り始めた雨の中を自転車で走るしかない。大井川河口に近い太平橋を渡って西へ向かう。このバイパス道路には両側ともに歩行者と自転車の専用レーンが設けられている。真新しい路面ペイントに心が弾む。ただ、車道を渡る際に歩道の段差があるのは走りにくい。

国道150号バイパス道路の歩行者・自転車レーン

やがて国道150号に入ると専用レーンはなくなり、車道脇の青い矢羽根だけになる。道幅は狭く交通量も多いので走行環境としては劣悪。間もなく波模様に自転車が描かれた丸アイコンが海岸へと誘う。なんとこれ、太平洋岸自転車道​のマークらしい。泣く子も黙るナショナル・サイクル・ルートだ。ところが能天気な海水浴場の横を抜けると再び狭隘な国道150号に戻ってしまう。

静波海水浴場脇の太平洋岸自転車道​

これが「日本を代表し、世界に誇りうる」自転車道とは情けない、と憤慨しているうちに再び波自転車マークが側道に誘う。間違えたかと思うような脇道ながら、田畑を横切り、民家の裏を抜けて、我がもの顔で道が続いている。自転車で走るにはあまりにも快適なので訝しんでいたところ、はたと気がついた。そう、これは鉄道の廃線跡なのだ。後で調べると軽便鉄道駿遠線が通っていたそうだ。

廃線跡の自転車道路

雨が上がり晴れ渡った翌日も、廃線跡を辿って自転車を走らせる。木立を抜け、住宅地を抜け、駅の跡地で休憩する。なんとも快適なのは、かつての小型機関車でも走行できるように、アップダウンやカーブが少ないからだ。それだけに車道を横切る時に一旦停止するのは興醒め。鉄道が素晴らしい遺産として廃線跡を残したように、クルマ、すなわち人力操作の内燃機関車は何を残すのだろう。

廃線跡の自転車道路と太平洋岸自転のマーク

廃線跡はまだまだ続くが、途中離脱して岬へ向かう。青い空と白い雲のもと、ヤシの並木道から海岸道路へと続き、爽快で開放的な南国気分。丘に白い灯台が現れると御前崎。駿河湾と遠州灘を分ける突き出した地形。この日は穏やかだったものの、風が強く波が荒いらしい。砂浜が長く続き、多くの人がサーフィンに興じている。夏の醍醐味は水冷式ライドながら、海水の後味が悪いので海には飛び込めない。

御前崎の方角碑と灯台

海岸線のライドを楽しむのも束の間、道は内陸にそれてしまう。天下の浜岡原子力発電所があるからだ。すでに廃炉および運転休止中なのが救いとは言え、道路から僅か数百メートルしか離れていない。しかも、この道はナショナル・サイクル・ルートだ。東海地震の想定震源域の中心地であり、薄ら寒い思いに駆られる。付近に乱立する風力発電の白い巨大なプロペラがカモフラージュのよう。

浜岡原子力発電所と風力発電プロペラ

すっかり気落ちしてしまったこともあり、その後は新幹線の掛川駅に向かって内陸道路をひた走る。自転車レーンはないものの、道幅に余裕があり、交通量も少なめで走り易い。ただ、目覚ましい風景があるわけでもなく、中庸な街並みを消化試合のように淡々と走る。さらに、Bromptonの後輪がスロー・パンクしたらしく、2〜3kmおきに空気を入れて騙し騙し走る冷や汗状態。

抹茶のかき氷

このように御前崎を中心に駿河湾から遠州灘へと自転車で走った。実際には海沿いの道は少なかったものの、さらに進めば名高い砂中の自転車道も楽しめたに違いない。軽便鉄道跡の自転車道も素晴らしく、これは全線走破したいところ。ただ、大井川流域でもそうだったように、ほとんどサイクリストに出会わなかったのが不思議。街乗りの自転車も少ない。静岡県には更に頑張って欲しい。

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