鳴門海峡の両岸を走る (2) 鳴門ライド

淡路島の南端を巡った翌日は、大鳴門橋を渡って四国の鳴門を走る。ただし、橋は自動車専用であり、フェリーもない。幅1,340mの鳴門海峡を目の前にしてサイクリストは途方に暮れしまう。そこで自転車による地域振興を目指すASAトライアングサイクリングツーリズムの一環として、ハコバスと呼ぶサイクル・バスが運行されている。サイクル・トレイン以上に珍しい貴重なサービスだ。

これは一般的な路線バスながら、側面から専用の自転車ラックが引き出せるようになっている。このラックに前輪を外して3台までの自転車を固定する。対応するのはクイック・リリースのみで、サドルを下げる必要があるかもしれない。他に輪行袋に入れて4台まで格納可能。一般の運賃のみで追加費用はかからない。ただし、前日までの予約が必要。休日なら一日往路3便、復路3便が運行している。

ちなみに淡路島側のバス停には複雑なアプローチが必要。これは一般道からの自転車通行が禁止されているため。ただ、自転車を押して歩くか、バス停横の駐車場まで自家用車で入れば良さそうだ。また、路線バスの一時停車なので、積み下ろしは素早く行いたい。しかし、焦る必要はない。運転手さんが手伝ってくれるし、慣れているのか乗客も見守ってくれる。自転車への理解と配慮が伺えるのは嬉しい。

鳴門に着くとモデル・コースの長距離69kmを若干アレンジして、まずは市内を西へと走る。鳴門では幹線道路も側道も舗装状態が悪い区間が多く、路面振動が大きい。同じような自然環境であろう前日の淡路では感じなかったので、道路行政の違いだろうか。また、淡路と同じく路面の自転車用ラインや標識は少ない。特に市街地は交通量がありながらも路肩が狭いので、専用レーンが望まれる。

市街地を抜けると県道41号線を北上。ベートーヴェンの第9初演などを記念するドイツ館で小休憩。アシッドではない大麻比古神社を過ぎると、そこからはつづら折りの坂道。激坂ではないものの、ひたすら続くアップヒルに泣きそうになる。この山道も路面振動が強く、下り坂で機材を吹き飛ばしてしまった。なお、峠で出会った地元の方によれば、逆向きの方が傾斜が緩やからしい。

山を下り、水田と住宅地を抜けると、そこからは海岸線を緩やかにカーブする眺めの良い道が続く。遠くに淡路島が見える。昨日見た四国から、今日は見返しているわけだ。このあたりも路面が良くないものの、側道は安全で走り易そうであった。しかし側道への標識がなく、途中は生垣が途切れないので車線変更ができない。少しだけ配慮があれば快適な自転車走行ができるだけに残念なところ。

ランチは海の駅で漁港直送の新鮮な海鮮丼。食後は道を引き返して廃校での展覧会を鑑賞。ここで関係者と話し込んだこともあって、残り時間が少なくなる。推奨コースの鳴門スカイラインは省略して、市街地のバス停へ向かうことにした。復路のバスは14時過ぎで、それを逃すと次は19時になるからだ。バスの運行本数の少なさを嘆きながらも、これで更なる上り坂に挑まずに済んだ。

ところで、バス停の隣りにはスケートボードを中心とするスポーツ施設、ウズパークがある。多くの子どもや若者が熱心に練習して技を磨いている。サイクル・ステーションも併設されており、サイクル・ラックや整備工具、更衣室やシャワーなどが利用可能。隣接するボートレースの収益を鳴門市がギャンブル・ロンダリングしているので、随分と垢抜けているし、設備も充実している。

ウズパークの賑わいを見ながら、サイクル・ステーションやサイクル・バスの利用が休日ながらないことが気になった。これは鳴門だけでなく淡路でも同じ。一方で、人工的な閉鎖空間であるスポーツ施設は場所の必然性がない。つまり、地域ならではのアピールにならない。だからこそ、この地を自転車で走る魅力を高めて、広く発信して欲しい。それでこそツーリズムとして地域振興になるはずだ。

以上のように2日間で鳴門海峡を挟む南あわじと鳴門を自転車で走った。坂嫌いの筆者には辛い区間もあったものの、市街地、海岸、山、岬と変化に富んだライドが楽しめる。ただ、自転車レーンや路面など走行環境はさらに整備して欲しい。一方で、出会った地域の人たちは朗らかで自転車乗りに親切だったのも印象的。穏やかな瀬戸内海と激しい鳴門海峡の地には尽きせぬ魅力があるに違いない。

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