自転車の周囲を録画するサイクル・レコーダ

自動車の周囲の映像を常に記録するドライブ・レコーダは、万一の場合にも交通事故や危険運転などを録画して検証することができる。国土交通省の調査によれば2020年10月の時点でドライブ・レコーダの搭載率は53.8%と普及が進んでいる。一方、自転車については同様のサイクル・レコーダはまだまだ一般的ではないようだ。そこで実際の製品を購入して、その画質や使い勝手を調べてみた。

サイクル・レコーダの選択肢は多くないが、その中でもライト機能を有している製品を選んだ。そうでなければレコーダとライトをそれぞれ前後に取り付けることになり、合計4台を扱うのは煩雑だからだ。また、比較的安価な1万円以下の製品を選んだ。これは、安価であっても、どの程度実用になるかを確認したかったからだ。また、今後の普及を考えると手頃な価格であって欲しいとの思いもあった。

フロント用サイクル・レコーダ

フロント用のサイクル・レコーダとして選んだのはIPTのBIKERSAY-BD001。300ルーメンのライトと容量2,000mAhのバッテリーが付いて、重量が171gと軽い。視野角は120°とアクション・カメラ並に広く、映像は最大1920×1080ピクセルで30fpsで記録される。動作時間は2〜4時間で、無料の専用アプリで各種設定や映像確認ができる。GoPro互換の取り付け具も付属し、色合いは私のBromptonに最適だった。

記録された映像はかなり品質が低く、ハンドル操作や路面振動による映像のブレも大きい。特に夜間はかろうじて状況が把握できる程度であり、ナンバーの読み取りは難しい。また、ループ録画であるものの、強い衝撃や大きな傾きで録画ファイルをロックする機能がない。これではトラブル対応として不十分だ。しかも公称値を超えて長時間録画されるので、大容量のメディアを用意する必要がある。

さらに、ボタン操作が多い、ボタンが押しにくい、microUSBの充電ポートの接触が悪い、と使い勝手が悪い。急いでいる場合には操作が面倒なので、録画をしないまま出かけることもあった。マーフィーの法則によれば、そんな時にこそトラブルが起こることになる。専用アプリは一通りの機能を揃えているが、利用する機会は少ない。むしろ本体だけで手軽に利用できるべきだろう。

なお、ライトの状態ごとにバッテリーが切れるまでの録画時間と使用容量を調べたのが以下の表だ。室内で動かさずに使用しているので、実際の走行環境とは異なるが、参考になるだろう。驚くべきはライトを消した場合で、7時間半もの録画が可能であった。これほど長く動作するのであれば、朝から夕方までのロング・ライドを丸ごと記録できることになる。万一のトラブルに備えて常用したいところ。

ライト録画時間使用容量
常灯2時間15分 20.31GB
点滅4時間45分42.66GB
消灯7時間25分66.83GB

リア用サイクル・レコーダ

リア用のサイクル・レコーダとして購入したのはサンコーのバッカム。こちらは後方用の赤色ライトと容量1,800mAhのバッテリーを搭載して、重量が141gとさらに軽い。カメラの視野角は120°で、1920×1080ピクセルで30fpsの映像が記録されるなど、仕様としてはフロント用に似ている。稼働時間は約6時間と長めになっている。こちらもGoPro互換なので、取り付けの工夫がしやすい。

さて、フロントの映像が散々だったのに比べると、こちらは遥かに画質が良い。ただ、夜間撮影には厳しく、しかもライトの光が映像に映り込むのはいただけない。また、ループ録画であるとともに、大きく傾くとファイルをロックするようになっている。しかし感度が高すぎるのか、ほとんどのファイルがロックされてしまっていた。こうなると定期的にメディアを初期化しなければならないのが面倒だ。

ファイル・ロックの問題を除けば、使い勝手は良い。自転車に乗る時に電源ボタンを押せば、ライトが点滅し、自動的に録画も始まる。もう一度電源ボタンを押せば、点滅が消えて録画も終了する。このワン・ボタンで済む簡易な操作は、他の製品でも取り入れて欲しいところ。ライトの点灯設定や静止画撮影のボタンもあるが、まず使わない。他に設定はない潔さは高く評価したい。

フロント用と同じように、ライトの状態ごとにバッテリーが切れるまでの録画時間と使用容量を実測した。これも室内で動かさずに使用しているので、実際の走行環境とは異なる。ライト点滅の有無では大差がなく、5時間半から6時間の動作時間であった。フロント用よりは短いが、食事や休憩時にこまめに電源を切るようにすれば、一日ライドでもバッテリーは持ちそうだ。

ライト録画時間使用容量
点滅5時間30分25.46GB
消灯5時間59分27.74GB

スマートな自転車

このようなサイクル・レコーダーを自転車に取り付け、できるだけ毎日使用している。しかし、自転車に乗るたびに録画を開始して停止しなければならない。何日かおきには充電も必要だ。このような面倒がある限り、いずれ使わなくなりそうだ。言い換えれば、利用者が意識しなくてもサイクル・レコーダは勝手に確実に動作するべきだろう。実際に自動車のドライブ・レコーダはそうなっている。

さらに、サイクル・レコーダー以外にもサイクル・コンピュータを常用しており、AirTagも忍ばせている。休日のサイクリングともなればアクション・カメラや後方レーダーを取り付け、スピード&ケイデンス・センサーや心拍センサーも使う。いずれも後付けなので、雑多になってしまう。そこで、これらの情報テクノロジーを統合する自転車が欲しくなる。それは自転車の再発明となるに違いない。

【追記】その後はCycliqのサイクル・レコーダを利用している。(2022.01.03)

5 comments

  1. 私はCYCLIQ FLY12CEとFLY6(2nd Gen)を持っていますが、諸事情でリアのFLY6は稼働が減りました。
    おっしゃるように、考えずに使えるものが必要ですよね….

    1. Cycliqも注文したのですが、当時は品切れで6月に出荷再開のようです。Cycliqも考えずに使えるほどシンプルではないのかな?

      1. 割とマシな方だと思っていますが、重量が重いのと、充電が必要なのと、マウントによっては角度が気になることなどがあります。リアはグラベルバイクのドロッパーポストと干渉するのでほぼ使わなくなりました。

        自動車のレコーダーは自動なので、あのくらいシンプルだといいなぁ…と思います。

        1. 電動アシスト自転車が全部載せして欲しいですね。VanMoofが近いですがカメラは載っていない。ヘルメットのCLASSONもイイ線を狙っていますけど、ちょっと重たい&リアは未稼働。http://criticalcycling.com/2020/02/classon-helmet/

          1. そう、だからこそE-Bikeには未来があると思うんですけどね…
            結局一番の問題はバッテリーで、FLY12CEでもかなり重いんですよね…
            ライトは無くてもいいので、CATEYEのVOLT800くらいのサイズと重量になってくれたらいいのですが、駆動時間が心配です。

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