キャニオンとクラフトワークのコラボレーション自転車

今年のツール・ド・フランスのグランデパール(開幕地)はドイツのデュッセルドルフ。その地にスタジオを構え、ツール・ド・フランスを歌ったのがテクノポップの元祖、クラフトワーク。そこで開幕式では彼らのコンサートが催され、30年ぶりとなるドイツでの開幕を祝った。さらに、ドイツの自転車メーカー、キャニオンクラフトワーク・モデルのロード・バイクを発表する熱狂ぶり。

このモデルはキャニオンのUltimate CF SLXをベースとして、近年のクラフトワークのステージ衣装の意匠であるワイヤーフレーム模様が再帰性反射素材によって描かれている。コンポーネントはSRAMの最高峰電動無線ユニットRed eTap、カーボン・ホイールはZIPP 303と申し分ない。ただ、ディスク・ブレーキではないことと、ハンドル部分にCANYONのロゴがあるのが残念。

前代未聞の特別仕様車が、前触れもなく突如アナウンスされたのは6月29日。ツール・ド・フランスの開幕は7月1日。そして、予約受付開始は7月3日。じっくりと検討するだけの情報がない上に、申し込みまでの期間が短い。また、全世界21台限定であることも、購入欲を掻き立てる。このような飢餓感を煽る販売戦略は悪くない。ただ、Twitterでのエンゲージメント総数は高くないようだった。

価格としては、構成が近いULTIMATE CF SLX 9.0 AEROが889,000円に対して、ULTIMATE CF SLX KRAFTWERKは1,099,000円。クラフトワーク代は約20万円ということになる。決して安い価格ではないが、意外と高くないというのが個人的な感想。そもそもキャニオンはWEB直販に限定することで価格を抑えている。単純な比較はできないが、他社のSRAM eTap完成車は100〜130万円の価格帯になる。

実はRaphaのレンタル・バイクは、すべてキャニオンでULTIMATE CF SLXが中心。なので、筆者は何度か同型車に乗ったことがあり、その軽量さと乗り心地の良さに惹かれていた。ロンドンからオックスフォードまで約100kmのライドにも出かけた際も、疲労は少なく快適であった。ロード・バイクは高級車になればなるほど、試乗の機会がないのだが、キャニオンには強力な援軍がいたわけだ。

さて、予約受付が開始されたのが、日本時間で7月3日の19:00。特設ページを何度かリロードして現れた発注ページでは、多くの情報を入力しなければならない。キャニオンは事前にユーザ登録ができないからだ。最も苦労したのは、上限額のあるクレジット・カードを使おうとして先に進めなかったこと。エラー表示がないので、何が悪いのかが分からない。結局、発注完了までに15分ほどを要した。

かつてAppleのWWDCの申し込みが先着順だった頃は、30万円以上もするチケット数千枚が1〜2分で売り切れていた。今回は100万円超えながら、全世界限定21台だから、さぞ競争が熾烈であろうと思われた。どれくらいの人が申し込もうとしたのかは分からないが、15分以内に入力できれば、発注できたことになる。自転車が好きな人はペダリングが上手でも、WEB操作は得意ではないのかもしれない。

ところで、このモデルには「特別なギフトが付属」する。これは、ワイヤーフレーム模様のジャージかもしれない。クラフトワークのサイン入りCDボックスセットかもしれない。いずれも特に根拠はないが、あまり欲しい代物ではない。そして、ワイヤーフレーム模様のロード・バイク自体もダサいに違いない。何しろダサいことを真顔でするのがクラフトワークの真骨頂だからだ。

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