11月に瀬戸内の島々を巡る機会を得て、直島と小豆島について書いてみる(豊島や高松市内については省略)。岡山の宇野港よりフェリーで3kmほどで渡った直島は20年ほど前に訪れて以来だ。今年は芸術祭がない年であることや月曜日というタイミングもあってか、海外からの観光客はいたものの比較的静かだった。
北側一帯の木が枯れているのは、かつての銅や金の製錬所からの煙害ではなく、2004年の山林火災の影響だそうである。周囲約11km、高低差50m程度の地形で、港にあったレンタルショップで自転車かスクーターか迷い、昼過ぎからの数時間をヤマハEC-03で走ることにした。2010年モデルは、シェアリングなど社会実験を目的に、全国の自治体向けに提供されたそうである。経年劣化はあるものの島をゆったり走るには十分なスペックだった。
瀬戸内から帰宅後に読んだ、秋元雄史『直島誕生』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2018)では、ベネッセのスタッフとして四半世紀もの間、作品の誘致をめぐって、作家や島民やベネッセ社内でのやり取りから秋元氏の奮闘を垣間見ることができた。
日も暮れる頃、直島から高松市へフェリーで渡り、翌朝に小豆島へ行きのフェリーに乗る。周囲約126kmの小豆島ではHELLO CYCLINGが充実していて、島全体に約50箇所のステーションがある。自転車のカゴには「ダイチャリ」のマークがあり、HELLO CYCLINGの加盟企業だということらしい。
アプリで会員登録時にクレジットカードと連携させ、車両番号を選択し、施錠解除すれば無人でレンタルができる手軽さが良い。が、利用したステーションは野晒しだったため、ハンドルに備え付けられているコントロールパネルの液晶が見えづらかった。
直島と比べて10倍ほどある小豆島で限られた1日を巡るには、やはり自転車よりも原付バイクの方がよかったかもしれない。ただペダルを漕ぎ前進する身体との同期や、写真を撮りながら散策するスピードとしての体験には自転車が欠かせない。