大規模言語モデルによるChatGPTの快進撃が続くなか、その開発を行うOpenAIのお家騒動が勃発。巷では、AGI(汎用人工知能)が開発された、そのために慎重派の取締役会が急進派のサム・アルトマンCEOを解雇した、などと噂が噂を呼ぶ。しかし大多数の従業員が反対して取締役会は降伏、アルトマンは僅か4日間で復帰、と波乱万丈の急展開。結果的にタガが外れたAI開発はSkynetを生み出すかもしれない。
そんな折も折り、思い立ってChatGPTに絵を描かせた。LEGOの自転車パッケージだ。同じOpenAIが開発した画像生成AIであるDALL-Eが組み込まれているので、簡単に絵の内容を伝えるだけで良い。数秒から十数秒かかるものの、的を得た、あるいは思いもかけない画像が得られる。ちなみに、これが利用できるのは有償のChatGPT PlusやChatGPT Enterpriseアカウント。無償ならBingでも利用できるそうだ。
LEGOの自転車があります。そのパッケージの箱を写真のように描いてください。
短いプロンプトで見事にポップでカラフルなLEGOの自転車が現れた。玩具屋さんの棚に、あるいはオンライン・ストアのテーブルに並んでいてもまったく違和感がない。ハンドルやペダルなど破綻している箇所があるものの、それもまた愛嬌。修正プロンプトを重ねるより、シンプルなプロンプトに対する多様な反応が興味深い。解釈の余地が大きいからだろう。もう一度同じプロンプトを投げてみる。
LEGOの自転車があります。そのパッケージの箱を写真のように描いてください。
今度も子供用と思しき可愛い自転車が現れた。なんともサイケデリックなディスク・ホイールに驚かされる。ペダルがないのはキック・バイクだからだろうか。全体にブロックの密度が高く、実現可能性も高さそうだ。こうなると、自転車を正式に開発して販売することをLEGO本社に要請したい。何しろLEGOの生まれ故郷であり、自転車大国であるデンマークにすら、まともなLEGO自転車がないのだから。
こうなるとLEGOのメンツや権利に関わりそうだ。なにしろLEGOよりもLEGOらしい自転車をAIが生成しているのだから。このようなAIと著作権や意匠権については様々な観点で議論されている。それはAIの提供元、この場合はOpenAIの課題であるものの、利用者もまた慎重であらねばならない。そこで「LEGO」という言葉を使わないようにプロンプトを与えてみた。
プラスティックのブロックで作られたオモチャの自転車があります。そのパッケージの箱を写真のように描いてください。
なんと、これまででもっとも完成度が高い自転車が現れた。パッケージの箱にはお馴染みのロゴが銘打たれているし、全体のデザインもLEGOとしか言いようがない雰囲気だ。だが「LEGO」とは指示していない。念のためにLEGOではないことを伝えても、やはりLEGOになっている。どう見てもLEGOだが、生成画像についてのコメントでもLEGOではないと言い張っている。
LEGOではありません。描き直してください。
Here is the illustration of a toy bicycle made with generic plastic building blocks, distinct from LEGO, and its packaging box.
こちらは、レゴとは異なる一般的なプラスチック製の積み木で作られた自転車のおもちゃと、その梱包箱のイラスト。
ChatGPT+DALL-Eの作画コメントとDeepLによる日本語訳
これは生成AIでしばしば問題になるハルシネーション(幻覚、妄想)の一種だろう。酔っ払いが「俺は酔っていない」と叫ぶのに似ている。一方でLEGOの権利に抵触するプロンプトを使わずに済むのは有り難い。つまり、これ以降に掲載するChatGPTとDALL-Eが生成した画像は「LEGO」ではなく「プラスティックのブロックで作られたオモチャ」であり、そのパッケージの箱である。たっぷりとご覧あれ。
この調子でいくらでも「プラスティックのブロックで作られたオモチャ」を描いてくれる。だが、やがて虚しくなる。簡単にできるものに意義や価値はないからだ。ただただ、いくらでも簡単にできることが物珍しいだけだ。そしてそれも程なく飽きてくる。強大な能力と自我を持つコンピュータ・ネットワークSkynetが人類を滅亡させる未来が見えてくる。核兵器ではなく退屈で。