自転車に乗ることを、嗜好と実用の両立と考えるならば、コーヒーを飲むために焙煎することを、嗜好と実用の両立となぞらえて振り返ってみる。
筆者は2016年(クリティカル・サイクリング設立ととほぼ同時期)、ふと家にあったブリキ缶と金網で焙煎することを試みた。それまで焙烙(ほうろく)という土鍋のような道具で焙煎をしたこともあったが、15分もの時間をガスコンロの上で煎り続ける根気は続かない。知人に手回しできる焙煎機を見せてもらったことが大きな動機だったのかもしれない。
初号機ではブリキ缶を密閉したため焙煎具合を目視できないことと、電動ドライバーの回転スピードが早すぎることの問題を改善するため、缶の構造を保ったまま開口部を作り、30rpmのモーターを導入した。網の中で豆が適度に落下し撹拌できるスピードを想定した。
これ以降、一回の焙煎量は当初の200から300gまで増やしたものの、器具の改良は加えていない。
手順の変更点としては、生豆を焙煎機に投入する前にお湯で洗浄している。お米を研ぐ感覚に近いが、微細な汚れとチャフ(薄皮)を取り除くことができ、虫食いなどの判別もしやすくなる。
焙煎した豆は2、3日経つと酸化が進みマイルドになる。最近はドリップより、エスプレッソやエアロプレスという圧力をかけた抽出による濃い味を好んで飲んでいる。豆の種類は週ごとにストックから変更しており、焙煎具合や抽出方法にもよるものの、朝の体調によっても感じる味覚が変化する。毎朝毎週のルーティンだからこそ、微細な変化に気づきやすくなる。
目的地に行く「手段としての自転車」 コーヒーを飲む「手段としての焙煎」
道具は手段のみならず、目的化する喜びもある。ルーティン化するために道具を作り、道具を使って創造することを楽しみ、日常に落とし込む。「ホモ・ファーベル」としてのコーヒーの嗜みは、実用と兼ね備えることができる。
Googleマップ:生産農家へ敬意を払い、コーヒーベルトへと日々プロットする旅。
参考