ライド先の人里離れた山野海川で飲むコーヒー、特にエスプレッソは素晴らしい。疲れた身体を癒し、活力を与えてくれる。ただ、そこにはエスプレッソ・マシンもなければバリスタもいない。そこで道具一式を持参してコーヒーを淹れる。自転車だから可能な限り荷物を少なくし、手軽に扱えるのが望ましい。このために筆者はワカコ(Wacaco)のナノプレッソ(Nanopresso)を使っている。
ナノプレッソは小さなペットボトル・サイズの小型軽量エスプレッソ・マシン、レバーを手で押し込むことでコーヒーを抽出する。この圧力は18 bar(261 psi)にも達するが、それほど力は必要ではなく、片手でもできる。これ以外に必要になるお湯とコーヒー豆(粉)は、いくつかのバリエーションが考えられる。そこで、筆者が実践している方法をいくつか紹介したい。
ナノプレッソ + 湯沸かし + ミル
まず、少しばかり手間をかける方法。沢の水を汲んで固形燃料で湯を沸かし、コーヒー豆を手回し式のミルで挽く。お湯は1〜2分で沸くし、その間にミルを手で軽く回せば良い。その場で豆を挽くので新鮮な味わいで、気分的にも満足度が高い。固形燃料ではなく枝木を拾って焚き火で湯を沸かしたり、その場で生豆から焙煎することも考えられるが、そこまで酔狂ではない。
ナノプレッソ + 保温ボトル + 粉
次に簡略化して、お湯を保温ボトルに入れ、あらかじめ挽いたコーヒーの粉を持参する。エスプレッソの抽出温度は90〜95℃、手持ちのボトルではサーモスが優秀。お湯の使用量は1回に30〜60mlで、小さなボトルでも良い。水道水が嫌なら浄水器を使うか、ミネラル・ウォーターや自噴水を用いる。先の方法に比べて味わいに大きな違いはない。手間をかける満足感と軽い装備の気楽感が拮抗する。
ナノプレッソ + 保温ボトル + カプセル
コーヒー豆を挽いた粉を用いるのが本来だが、粉をフィルタに入れてタンピングするのに気を遣う。また、抽出後に固まった粉を取り出して掃除するのも面倒だ。そこでナノプレッソはアダプタを取り付ければ、ネスプレッソのカプセルが利用できるようになっている。カプセルは簡単に扱えて手間がかからない。ただ、豆と同じ種類のカプセルを使っても、クレマが薄く、風味は少々劣るようだ。
バリスタのコーヒー + 保温ボトル
ところで、ふと気がついた。バリスタが丹精込めて淹れたコーヒーを保温ボトルで持参すれば良い、と。時間とともに温度が下がるものの、2時間程度なら許容範囲だし、実際にも美味しい。しかし、ライド先で淹れて飲むコーヒーこそが味わい深い。あれこれ異なる方法を試すことも楽しい。スノーピークの大袈裟路線ではなく、ミニマムなメソッドを考えたい。砂糖とミルクの追求もまだこれからだ。