写真を撮る時、画角を決める上で対象に近づいたり離れたり、ズームレンズを動かしトリミングする。比率は3:2にすることが多いが、Instagramの投稿では1:1にトリミングする。
佐藤雅彦『プチ哲学」(マガジンハウス、2000)の中に「ケロちゃんの危機一髪」という作品がある。2枚の絵の右側には、ケロちゃんが水辺で突き落とされようとする瞬間。だが、左側の引いた画角に目を移すと上からリンゴが落ちてきている。切り取り方によって意味が変わる好例ではないか。
スイスの写真家、ヨアキム・コーティス+エイドリアン・ゾンダーレッガーは、歴史的な写真作品をジオラマで再現し、その撮影現場を残した作品に仕上げている。
ロバート・キャパの『崩れ落ちる兵士』はその撮影された状況から様々な真贋論争が続けられている。キャパの周縁で何が起こっていたのか、Adobe Photoshopの生成AI機能によって明らかにしてみる。
美術家の小島久弥は『Thanks mom! 自画自参』シリーズとして、幼少期に描いた絵を現在の小島自身が描き足している。過去と現在が連続的に接続され再解釈される面白さがある。
こちらも前述の生成手法を用いて幼少期に描かれた部分(木と家)から、周辺を描き足してみる。(作家本人の許可をとっていないため、問題があれば取り下げる予定)
撮影行為において、スマートフォンも一眼レフでもディスプレイを覗きながらシャッターを切ることが多い。両目で対象物の構図を周囲との関係から即座に画角を判断することが求められる。一方で撮影後にトリミングを施し、より撮影者としての視点の強調を試みることもあるが、既出のように歴史的な写真の周縁で何が起こっていたのかの妄想する(AIによって妄想させる)こともまた一考する余地がある。
備考
- アイキャッチに使用したニセフォール・ニエプスによって撮影された最古の写真「ル・グラの窓からの眺め」より、その周辺を正方形に生成した画像
- ル・グラの窓からの眺め La cour du domaine du GrasMaking of „La cour du dumaine du Gras“ (by Joseph Nicéphore Niépce, 1826)
参考
- 佐藤雅彦『プチ哲学」(マガジンハウス、2000)
- 『崩れ落ちる兵士』Making of “Death of a Loyalist Militiaman, Córdoba Front, Spa (by Robert Capa, 1936), 2016
- 小島久弥《 白い鳥 》1963–2018年 Thanks mom! 自画自参シリーズ
- 銀(塩)輪車 第1回 ニエプス