野草採取ライド&クッキング 2日目

本記事は2日間にかけて行われた野草イベント2日目の活動報告である。

前回(野草採取ライド&クッキング 1日目)のまとめ

筆者である門田は、風景の魅力をより深く味わえるようにするため、風景を構成する要素の一つである野草にフォーカスしたイベントを2日間にわたって開催することを決めた。1日目には大島堤サイクリングロードで野草採取の催しが行われ、門田、浅尾、赤松先生の3人でカラシナ、ヨモギ、コウゾリナ、ツクシ、ギシギシ、ヒメオドリコソウ、ノビル、カラスノエンドウの8種類の野草を採取した。

イベント2日目 野草クッキング

3/23、野草クッキングを開催した。

参加者は門田、浅尾、赤松先生に加え、IAMASの同級生である河合と坂本の5人である。今回は調理師学校を卒業し、レストランでの勤務経験のある料理人に来ていただき、採取した野草を料理してもらう。

では本日の主役である料理人を紹介する。

大東潤平(おおひがしじゅんぺい) 2001年奈良県生まれ。天丼が好物。親の料理が下手だったため、自分自身が料理人になることを決意。

本イベントの趣旨は、美味しく野草をいただき、野草の個性について知ることである。プロに料理してもらうが、ここではレストランで調理されるような特別な設備と技術を必要としないで一般家庭でできる範囲で調理してもらう。野草の特徴を分析し、それらを料理に上手く昇華できる知識と技術を持ち合わせている彼に調理してもらい、食す体験を共にすることで、野草を価値あるものとして利用できる可能性を参加者に示す。

10:30ごろに食材を購入した大東氏が門田家に到着。17:00に料理の完成を目指し、試行錯誤が始まった。

彼は野草に関しては素人であるために、予め採取予定の野草を共有し、お互いに野草に関する知識を深めてきた。実際に野草を口にするのは今日が初めてだ。

彼が分析した野草の特徴が以下になる。

  • ヨモギ:食物繊維がほうれん草の3倍。でも柔らかく、風味が爽やか。料理候補:天ぷら、パスタ(パセリ代わり)、つくね(練り込み)、だし巻き卵。
  • カラシナ:強い苦味。料理候補:梅和え、味噌汁、豚バラ炒め。
  • ツクシ:菜の花のような苦味のあるもやしみたいな食材。
  • ヒメオドリコソウ:青臭い、雑味、えぐい、味噌と相性いいかもしれない。下茹でが必要。葉だけをちぎって流水で洗う。3分間塩茹での後もう一度水で洗う。料理候補:天ぷら。
  • ノビル:炒め、生食、球形の地下茎は食べられる。料理候補:つくね(練り込み)、酢味噌和え、新玉ねぎと炒める。
  • コウゾリナ:癖のない味わい、油との相性が良さそう。
  • カラスノエンドウ:クセは強くなく、豆苗に近い。火をしっかり通す。「レクチン」という毒があるが、火を通すと無害。下処理は洗って下茹でしてアク取りをし、ボウルに水をはって10〜15分間浸す。料理候補:天ぷら、豆ご飯、梅和え、お粥。
  • ギシギシ:強い酸味。

ヒメオドリコソウとギシギシがこの中では突出して不味く、彼は扱い方に苦戦していた。

野草は文字通り野生の草である。食用にデザインされていない野草は部位によって苦味辛味酸味などの濃度勾配がさまざまで複雑さがある。味の良し悪しはさておき、こうした味の存在を知ることは僕の脳の味覚野領域を押し広げた。例えば、試しに生で食したギシギシの酸っぱさは、かなり強烈だった。

大東氏の野草の試行錯誤は繰り返される。

これはカラシナとキャベツと豚肉の炒め物で、カラシナのどの部位が食材として使用できるか検討したものである。緑の細い具材がカラシナの茎であり、強靭な繊維をもつ部位で噛み切ることができず口の中に残った。結果的にカラシナは葉と花とそれらに近い柔らかい茎部分のみを使用することになった。

ギシギシは試行錯誤の結果、口に入れた時の酸味による不快感を軽減できないため、料理に使わないことにした。

そうして最終的に決定した料理の品々が以下である。

料理名:使用する野草

  • つくね:ヨモギ
  • チャーハン:カラシナ、ツクシ、コウゾリナ、カラスノエンドウ
  • 豚肉の炒め物:カラシナ、コウゾリナ
  • 卵焼き:ヨモギ、ノビル
  • 天ぷら:カラシナ、ヨモギ、ヒメオドリコソウ、カラスノエンドウ

ヒメオドリコソウは油を吸わせてえぐみを消すことが必要なので、天ぷらのみで使用することになった。

調理過程

料理名:つくね

使用する野草:ヨモギ

大東コメント:ヨモギはみじん切りにする事で香りが立つので鶏肉の臭み消しにできるのではと考えた。

レシピ:採取したヨモギから柔らかい部分を選ぶ。

ヨモギ、レンコン、ネギを微塵切りにする。

トリのもも肉を皮を剥いでミンチにする。塩を適量ふりかけて下味をつける。

加工した食材に塩適量、酒大さじ1、片栗粉大さじ1半、味の素適量を入れ、混ぜ合わせ、ハンバーグ状にまとめる。

フライパンで両面を焼いて皿に取り出す。焼いたあとのフライパンを洗わず水、醤油、酒、みりん、砂糖を同量ずつ入れ、好みの味になるまで煮詰めてソースを作る。

料理名:チャーハン

使用する野草:カラシナ、ツクシ、コウゾリナ、カラスノエンドウ

大東コメント:豆板醤の辛みと野草の苦味が合うのではと考えた。

レシピ:ツクシはハカマを取り、食べやすいサイズに切る。

カラシナとコウゾリナを食べやすいサイズに切る。

カラスノエンドウは細かく切る。

ツクシ、カラスノエンドウを先に炒め、味付けに豆板醤を適量加える。香り付けに皮を剥かないでつぶしたニンニクも一緒に炒める。香りがついたらニンニクは取り出す。

炊いた白米と溶き卵を入れて炒める。

ある程度火が全体に通ったら、カラシナとコウゾリナを入れる。

最後に焦がし醤油で風味をつけて完成。

料理名:豚肉の炒め物

使用する野草:カラシナ、コウゾリナ

大東コメント:豚肉の脂がカラシナ、コウゾリナの苦味と相性がいいと考えた。

レシピ:キャベツ、カラシナ、コウゾリナは食べやすいサイズに切る。先に豚肉とキャベツを炒め、塩胡椒適量、酒大さじ1、醤油大さじ1、みりん大さじ1、お水小さじ1を加える。全体に火が通ったらカラシナとコウゾリナを入れ炒める。

完成。

料理名:卵焼き

使用する野草:ヨモギ、ノビル

大東コメント:ノビルは卵臭さを香りで消せる点から、卵料理と相性がいい。

レシピ:ノビルの根茎に付着している土を水洗いで丁寧に落とし、キッチンペーパーで水分を取る。

葉の茶色い部位は食べた時に口に残るので丁寧に取り除く。

みじん切りにしたノビルとヨモギと、だしの素を適量、水適量を溶き卵に混ぜる。

通常の卵焼きを作る要領で焼き、完成。

料理名:天ぷら

使用する野草:カラシナ、ヨモギ、ヒメオドリコソウ、カラスノエンドウ

大東コメント:野草独特の青臭さやアクを、油をたくさん使った料理だと中和されてアク抜きされたように美味しく食べられるようになる。

レシピ:天ぷら粉を水で溶く。スプーンを液に潜らせてから上にあげた時にスプーンに付着する液の厚みが衣の厚みになる。食べやすいサイズに切った野草をつけて油で揚げる。

完成。

以上で5つの品目が完成した。

撮影:赤松正之

料理の感想

全ての料理が非常に美味しかった。それぞれの野草がもつ香りや苦味が嫌味なく料理の一部として昇華していた。

つくねはヨモギが香り付けとして役割を果たしており、みじん切りのレンコンとネギによる食感のハーモニーが咀嚼していて楽しい。

チャーハンは使用された野草の種類が多かったからか野草由来の食感と味を一番感じられ、スーパーマーケットの食材では再現できない新鮮な体験だった。

豚肉の炒め物はカラシナの苦味によって感じられる旨みに広がりを感じた。コウゾリナの食感も良い。

卵焼きはヨモギの香りとノビルの辛味が卵に包まれマイルドな味わいになっている。

天ぷらは野草料理の定番であるが、以前僕が作った物とは比べ物にならないほど美味だった。不安要素のヒメオドリコソウのえぐみは消え去り美味しい料理に。

大東氏には、野草という不慣れな食材を扱ってもらいながら、朝から立ちっぱなしで料理を制作していただいた。本イベントに協力いただきありがとうございました。

全体の振り返り

大垣〜新潟470kmロングライドの動機にもなったクワクボ先生の「シミュレーションじゃダメなんだよ」という言葉が未だに僕と浅尾の中で響いている。本イベントもこの言葉の影響により、ネットや図鑑に描かれている野草の情報で分かった気になるのではなく、野草を採取し食すという実践を通して野草の姿を認識することを重要視した。

2日間のイベントを通じて、ライド中に見かける野草を区別する能力が身につき、これまでと異なる次元での「分からない」が増えたことに快感を感じている。後日、参加者に感想を聞いたところ「野草料理と聞くと、野草らしい野生的な料理になるのかと想像していたが、普通に美味しかった。」また「野草料理を経験してから、視界に入る野草が気になるようになった。」との回答を得た。参加者の野草への価値観の変化が窺える。2日間のイベントは成功を収めた。

以上で野草イベントの報告を終える。

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