新型グループ・ライド 2021 Summer 開催レポート

灼熱の夏日となった2021年7月23日、新型グループ・ライド 2021 SummerをIAMASオープンハウスのイベントとして開催した。これはビデオ・ミーティングと現在位置共有のオンライン・サービスを使って、遠隔地の人とコミュニケーションしながら一緒にライドをする趣向だ。海外を含め各地でのライドは十数ヵ所となり、視聴のみの人を含めると延べ数十人の方に参加いただいた。

今回は新しい試みとして、2グループに分けて30分ずつライドと休憩を交代するターン制を導入した。これによって自転車に乗っている間は、他の人の様子が分かりにくいことを解消することを狙った。つまり、休憩している間は他の人の映像を見ながら会話できるわけだ。グループ分けと進行は以下の表のようにした。これは目安なので、都合によって変更して構わないとした。

時刻グループ1
誕生月が奇数
グループ2
誕生月が偶数
10:00〜10:30ライド休憩
10:30〜11:00休憩ライド
11:00〜11:30ライド休憩
11:30〜12:00休憩ライド

次に参加者からいただいたコメントを紹介しよう。30分ずつのターン制であることを事前に伝えていたので、どのようなコースをまわり、どのように風景や状況を紹介するのか、作戦を練られた方が多かったようだ。そのせいか、これまでよりも参加者の積極的な参与があり、さまざまな話題が飛び交っていた。参加者がそれぞれの場所でライドを工夫した様子はコメントからも伺える。


松本伊織​​(埼玉県)

個人的な事情や猛暑もあり、最近あまり自転車に乗っていません。

そんな自分へのリハビリも込めて、今回は乗車参加も検討していましたが、結局スマートフォンをハンドルバーに取り付ける器具の購入を失念し、また観覧という形で2回目の参加となりました。

今回のグループライドでの個人的に大きかったポイントは、松井茂さんから問いかけをいただいたことでした。

「なぜ自転車に乗るのか?」

私の答えは単純。自転車に乗ることそのものが楽しいから。

ただ、それは「自転車に恒常的/習慣的に乗る人」の回答であり、「自転車に乗っていない人」の動機には結びつかないと思います。

では「自転車に乗るのがなぜ楽しいのか?」。

これこそ答えは人それぞれでしょう。

私は、自転車に乗ることによって、自分の住んでいる身の回りの風景がガラッと変わって見えるようになった、とイベント中に述べました。

(オンロードからオフロードに入るようになって、それがより立体的になったと思います)

実際に、今回のグループライドでは、そうしたさまざまな参加者の気付きを共有する体験になっていたと感じました。

質問に対する個人的な回答をしたつもりでしたが、参加者の方からこの感覚について賛同を得られたことは、私にとっても糧になりました。

同時に、このやり取りを聞いていただいた方々にとっても、意義のあるものになっていることを望みます。

Zoomのマルチ画面でさまざまなライドが同時進行で見られることは、オンデマンド中継のようであり、それとは違う体験でもあることが非常に面白いと思います。ただ、会議やライドと同様に「場が温まる」までの時間は若干かかるように感じました。

次回は実際にライドに参加するのか、あるいはグラウンド・コントロール・アシストに回るのか、非常に悩ましいところです。松井さんがライドに回るのであれば、どなたかとグラウンド・コントロール役を仰せつかってもいいと思いますが(笑)。


瀬川晃​​(岐阜県池田町)

今回初めてペダル付きの電動バイクで池田山山頂を目指しました。全長10kmほどですが標高900mあるため、バッテリー残量を気にしながらのライドになりました。途中電源を切って参加者の声を聴き景色を眺めながら休憩すると、バッテリーの目盛りが復活してなんとか山頂近くまで辿り着くことができました。アクセルを回すより、ペダルでモーターをアシストするようなバイクとの協調が生まれる不思議な感覚でした。

数台の車とヒルクラム中の自転車乗りに出会った後、山頂付近の開けた場所でハングライダーとパラグライダーの滑空に遭遇しました。風を読みながら佇み、一瞬のタイミングで静かに飛び立って行きました。この瞬間を伝えなければ!という勝手な使命感?から皆さんの会話を度々遮ってしまいました。照りつける陽射しのの合間に適度な木陰と涼風、ひぐらしの声やトンボの群に癒されました。

ライド・ルート


西野毅史​​(宮城県仙台市)

IAMAS在学中は鈴木宣也先生、吉田茂樹先生とチームを組んで鈴鹿の耐久自転車レースに出走したり、卒業後も赤松先生に誘われて仙台や山形をIAMAS卒業生と一緒に走ったりしていましたが、ネットワークでつながった新型グループ・ライドは今回が初参加でした。

 コロナ禍の自宅でのテレワークが中心の生活が2年目に突入し、めっきり移動することが少なくなっていまして、体力も驚くほど低下していました。自宅でPC画面に向かってばかりの生活は楽な面もありますが、動くための身体は使わないと衰えるものだと実感しているところでした。そのPC仕事でも頻繁に使用するZOOMを利用して、ネットワークで繋がりながら遠隔地の人達と同時にライドする体験は新鮮で興味深かったです。やはり人の気配を感じながら身体を動かすのは1人で行うのとは全く違った身体活動だと実感しました。他の参加者が様々な風景の場所でライドしている様子をスマホの画面で観ていると、自分もどこか面白い場所まで行ってみようかと刺激になっているのだと感じました。

 今回は自宅近くの平坦な場所をグルグル回って、仙台大観音の近くで休憩を取りました。大観音の向こうまで足を延ばすと、広く長い平坦な田園地帯から泉ヶ岳という山の麓に続く道があり、仙台の自転車乗りの多くが訪れるコースがあるのですが、そこまで行くにはかなりの長く急な坂を下らなくてはならず、帰りが不安だったので、今回は回避しました。広く平坦な仙台平野と山岳地帯の中間に位置する河岸段丘の上に自宅のある私としては、これらの急な坂に自転車でいかに対処するかが当面の課題です。


いけだじゅんじ​​(北海道小樽市)

走る時間帯と視聴する時間帯の志向は良いと感じました。実際には状況に合わず時間分け通りにはなりませんでしたが、意識することが参加者のみなさんと繋がっているようも感じられました。

ライドは、前回Winterの時と同様に、実物大ARスキャンをしながら周りました。

今回の僕の勝手ミッションは、坂の街小樽が誇る?全国でも小樽だけの三色5タイプ塗り分け消火栓、それを市内を探し回り全タイプ実物大ARスキャンです。

北海道小樽市の消火栓は、独自の対応で3色で5パターンに塗り分けています。

電動アシストは初めてでしたが、地獄坂も楽々で助かりました。

5タイプの塗り分け消火栓、みなさまも小樽訪問のおりには、ぜひ探してみつけてくださいませ。今日周った感じでは、青ヘッド赤ボディがレアと思います。

Sketchfabにアップしましたので、AR・実物大でも見ていただけます。ダウンロードしてAR Quick Lookでも見られます。

01 ALL YELLOW(全黄)小樽花園公園通り

02 ALL BLUE(全青)小樽公園

03 BLUE HEAD RED BODY(青・赤)小樽市松ヶ枝町

04 YELLOW HEAD RED BODY(黄・赤)小樽市奥沢

05 ALL RED(全赤)小樽市有幌町


小林友樹(岐阜県瑞穂市)

小学2年生の息子と一緒に、墨俣一夜城まで中川という小さな川沿いの道をゆったりサイクリングしました。日差しが強い日でしたが、木影を縫いながらの走行は案外涼しいので、今後の夏のサイクリングの定番となりそうです。一夜城で販売されている「大垣サイダー」を飲みながらの休憩も爽やかで気持ち良いですね。

子どもと一緒でしたので、予定通り時間別の走行にはなりませんでしたが、松井さんのMCにより各地で参加されているみなさんを感じることができました。おかげで、子どもの遊びの付き添いだけではない楽しさがありました。

途中、「なぜ自転車に乗るのか?」という話題になりましたが、2才の時点でキックバイクに夢中になり、今も飽きずに自転車を漕ぎ続ける息子を見ていると「ペダルを漕いで前に進むのが楽しい」ということ以外にないなぁと思ったりしました。


鞍馬孝(岐阜県羽島市)

今回初参加となります新型グループライドは、ロードバイクを購入して数カ月の方、10日前に電動アシストクロスバイクを入手された方、主に通信を受け持つ鞍馬(筆者)という計3名で1チームという編成で参加させて頂きました。

まずは東海道新幹線の岐阜羽島駅周辺をスタートし、長良川と木曽川に囲まれた羽島市を東へ横断。濃尾大橋(長さ約800m)を渡って隣接する愛知県一宮市に入った後に南下し、江戸時代から形を変えて今も残る渡し船「中野の渡し」に自転車ごと乗船。

対岸の羽島市へ戻り今度は西に同市を横断し長良川沿いを北上、スタート地点へ戻ってくるというルートとなりました。

鞍馬自身はのんびりサイクリングを想定し小径車をチョイス、景色だけでなく先を行くお二人の様子をZoomで見て頂けるよう最後尾をついて行く形としました。

先導は土地勘のあるロードバイクの方にお願いしたのですが、乗り始めてまだ数カ月とは思えないほどペースが速く、場所によってはこちらがいくら小径車とはいえアウタートップを踏み切るというまさかの展開となりましたが、なんとか走り切ることが出来ました。

映像と通話に関してはiPhone XS Maxのカメラおよびマイクとスピーカーのみ、カメラアングルの都合上スマホをほぼ垂直に立てて固定したのと、安全考慮もあり走行中に画面を見ることはしませんでしたが、音声だけでも皆様の様子が伝わってきて想像以上に楽しいライドとなりました。

道中ハイペースによる低酸素の影響か、走行画像ばかりでは視聴者の皆さまに申し訳ない、ここは無理にでも笑いを提供しなければという妄想に駆られ、先導して頂いた方のサドルに細工をしてペースを落とさせようと画策したという内容の小ネタをご提供させて頂きましたが、実際には走行中サドル固定ボルトが緩んで勝手に角度がついたという自然現象を利用させて頂きました。(その後筆者が角度調整・ボルト増し締めをさせて頂き、安全にゴールすることができました。)

こちらは放送倫理に反するヤラセ行為だったと深く反省しております。まことに申し訳ありませんでした。ライドだけでなく放送に携わる方の心理状態について考察する機会もあり、自転車に乗る行為が、かくも思考の幅を広げるものかと再認識する次第となりました。

他にもサイクリングロード上の車止めの危険性について考えたり、一緒にライドした方から過去に洪水を止めるため実際に人柱を行った場所について教えて頂いた時、自分もいま携わっているプロジェクトがうまく行かなかった場合どこかに埋められてしまうのではと妙な共感を覚えたりと、単独行とはまた違った印象に残るライドとなりました。

一緒に走って下さった方々や関係者のみなさまに御礼申し上げます。ありがとうございました。


高橋真己(岐阜県羽島市)

やはりコミュニケーションを取りながらのサイクリングは楽しいですね。サイクリングは「個」での楽み方、「仲間」の楽しみ方とバリエーションがたくさんあり奥が深いと改めて感じました。


綿貫岳海(東京都新宿区)

幸運?にも新型グループライドがオリンピック開会式と同じ日程ということもあり、話題の中心であるオリンピックスタジアムへ向かいました。スタジアムへの一番の最寄駅である信濃町駅に近づくにつれて野次馬のような人たちが増えて歩道はいっぱいでした。ライドを想定していた道が完全封鎖されてしまって大きなフェンスでスタジアムが囲まれ道が遮断されていたこと、警察の背中にさまざまな都道府県の名前を背負った津々浦々の警察が警備に来ていたこと、歩道にたくさんの報道陣が密にカメラを構えていたこと、などが強く印象に残っています。走行時の映像も撮ったので、映像を整理した状態でCritical Cyclingの記事に出来ればとお思います。ありがとうございました!


赤松正行​​(岐阜県揖斐川町)

誕生月は偶数なので、最初のターンは休憩からスタート。山間の木陰、清流の沢辺に腰掛けてiPhoneをオンライン・サービスに繋ぐ。イベント開始時刻になって次々とログインされる参加者に挨拶。どの映像からも青空が広がり、強い日差しであることが分かる。ライド中の人からは、その風景とともに風や熱も伝わってくる。会話も興味深い話題ばかりで、お気に入りライドのガイド・ツアーのように楽しめる。

次のターンのライドは、舗装道路ながら曲がりくねった旧道をゆるやかにアップダウン。木陰が多いので日差しや暑さは気にならない。最初の目的地は落差10メートルのふたつの滝が寄り添う夫婦滝。ちょっとした観光地なので高を括っていたら、携帯電波のエリア外で通信が途切れる大失態。復帰するまでの様子は分からないものの、その間の進行を後から想像する知的興奮があった(と自己擁護)。

2回目の休憩は集落近くの吊り橋付近を散策。チェアリングと称して小型の折り畳み椅子に腰掛けて体を休める。周囲はのどかで落ち着いた雰囲気。同じように自然豊かな郊外を走っている人もいれば、交通規制が敷かれて混雑する都心や巨大ロボットが物憂げに動く様子が送られてくるのが可笑しい。同時進行する各地での多彩なライドが集結し、グループ・ライドとして不思議な一体感を感じていた。

最後のターンは電波切れを避けて人里離れた目的地には向わず、幹線道路を通って帰路につく。田舎道とは言え、自動車道は木陰は少なく舗装道路の照り返しが暑い。かくして再び旧道に逃げ込んで清涼を得ていた。なお、今回はヘルメットにスマートフォンを取り付けて一人称映像を送ろうとした。ただ画角の確認ができておらず、俯き加減で地面の映像が多かった点を反省している。


柴原佳範​​(神奈川県横浜市)

今回の新型グループ・ライドでは地元横浜の臨港パークから山下公園の先にあるガンダム・ファクトリーまでを往復しました。30度を超える猛暑となる予定だったため、身近で慣れているルートを選択しました。今回の新型グループ・ライドでは参加者が大きく2つに分かれ、ライドしている時間と会話を聞いて話す時間を交互に行うことができました。これによってこれまで以上に、グラウンドコントロールの方々を介して様々な場所で行われているライドについて知ることができ、また自分が見ている風景やライドの感触を拠有することができました。やはりZoomを用いると見知らぬ地の風景を眺めることができ、より密度の高いグループ・ライドが行えたと感じました。また、久しぶりに乗る自転車は暑さを忘れてしまうくらい楽しかったです。


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