養老サイクル・ステーション・インタビュー

クリティカル・サイクリングが運営を担当する養老サイクル・ステーションの開設に向けて準備が進んでいる。2018年7月から8月にかけて、養老公園にユニット・ハウスが設置され、内装や外装を整えて常備する物品が運び入れられた。ここでは運営の中心を担うIAMAS鈴木宣也さん(研究科長・教授)とチェ・シヨンさん(修士2年生)にインタビューを行い、その構想から今後の展開をお聞きした。

赤松正行:炎天下での養老サイクル・ステーションの開設準備は大変ですよね。お疲れ様です。まず、これは何なのか?というザックリとしたあたりから教えてもらえますか?

鈴木宣也:サイクル・ステーションとは、サイクリングの途中で、トイレ、水分補給などのために気軽に立ち寄れる休憩スポットとして誰でも利用可能な場所です。休憩スペースの提供や工具の貸し出しもおこないます。また養老周辺の観光情報や、スポーツ・サイクルに関する情報提供など、自転車を楽しむための仕組みも提供するステーションです。

チェ・シヨン:私自身は現在、自転車に関連する研究をしており、その中で制作した作品の体験会を、養老サイクル・ステーションで開催するイベントの一つとして実施する予定です。

赤松:私もよく養老を自転車で走るので、そのような場所に拠点ができるのは嬉しいです。

鈴木:実はこのステーションは、11月3日から4日にかけて開催される養老アート・ピクニックのプログラムのひとつとして設けています。ここではサイクリングのサポートだけではなく、ワークショップやイベントを通じて、地域の人々とサイクリストとをつなぐ場所として、今までとは違う自転車目線で地域を冒険して行くための拠点としての役割もあります。

赤松:今年の2月のトーク・イベントで、鈴木さんはサイクル・ステーションの構想を話していましたよね。いつ頃から考えていたのですか?きっかけがありましたか?

鈴木:実は3年くらい前から構想はしていました。大垣周辺はサイクリングする人が多く、しかし、そうした人々が集う場があまりないので、何か仕組みが欲しいなと考えていました。授業の一環でブラッキー中島さんの話を伺う機会があり、ひとつのきっかけとなりました。実際にサイクル・ステーションの企画を話したのは、トーク・イベントの前の打ち合わせです。来年度のアート・ピクニックの企画のアイデアを出すことになったところで話しました。また、そのトーク・イベントでサイクル・ステーションの話しをすると思ったより反応があり、企画を後押ししていただきました。

赤松:その話を聞いてシヨンさんはどう思いましたか?

シヨン:実は、私はそれまでサイクル・ステーションの存在についてはあまり知らなかったんです。そこで最初は、あ、そういう場所があるのか、と思いました。でも、トーク・イベントがあった時点では、既に大垣市周辺で、ある程度自転車を乗って楽しんでいた時点でしたので、だからこそステーションとなるような拠点があれば、もっと楽しめるのではないか、と思いました。特に、鈴木先生から頂いた構想の中には、ステーション周辺のルート情報を共有するというアイデアがあって、アプリではない、オフラインでアナログな方法でそういった情報を共有することも興味深いと感じました。

赤松:その後、具体的な準備はどうでしたか?

鈴木:養老公園には既存の建物がありましたので、まずは利用可能性を探りました。サイクル・ステーションに合いそうな建物がなかなか見つからずに苦心しました。赤松先生から、那須のサイクル・ステーションを教えていただいて、簡単な設備で人の常駐しない方法もあるのかと参考になりました。またコンテナ・ハウスと言う仕組みを赤松先生が探して来られて、養老公園に設置できるとのことで、サイクル・ステーション設置が大きく前進しました。

赤松:公共の場所なので条件や課題がたくさんありましたね。7月下旬に設置した時はどうでしたか?

シヨン:ユニット・ハウスが運ばれてきて、地面に置かれて行くのを横から見守っていましたが、地面が思ったより斜めっていたので心配でしたが、業者の方の職人技でちゃんと設置されました。公園の入り口前にあることで、自然に通行人の視野に入ることもいいと感じました。また、ちょうどステーションの向こう側にトイレがあり、水の利用にも便利そうでした。

赤松:これで箱ができたわけですが、その中には何がありますか?

鈴木:ステーションには、養老アート・ピクニックの情報や、クリティカル・サイクリングの活動内容、養老町や西濃地域の観光案内など置く予定です。もちろんサイクリングの休憩スペースとして利用することもでき、また自転車のメンテナンス用の貸し出し工具や空気入れ、パンク修理支援などを用意する予定です。 

赤松:旅のノートみたいな甘酸っぱいものは? ハンモックで昼寝もしたい。

シヨン:旅のノートですが、もし自分が一人で自転車旅をしているならと思うと、なんか書いてみたくなるかも、と思いました。そういった、情緒的な空間になれるなら、自然に地域の人々の関心が集まると思いました。また、管理が難しそうですが、立ち寄って、少し身体的な遊びができるのも良いかと思いました。自転車の貸し出しになると大変だと思いますが、トランポリンなどで少し遊んで行く、などができると面白そうです。

鈴木:旅のノートいいですね(笑)甘酸っぱいもの読みたいですね、訪れる人々の様子を研究として分析してみたいです。また木々があり木陰がとても良いので、秋になるとハンモック気持ち良さそうです。地域の人々とサイクリストが集まるきっかけとなれば嬉しいです。

赤松:ちょっと話がずれるかもしれませんが、普段は無人となると備品の紛失とかの心配はないですか?

鈴木:養老町の皆さんも、サイクリストの皆さんも、良い人ばかりですから心配していません。那須のステーションも同様の運営体制であるという事例もありますし、私も田舎に住んでいますが、どのお宅も戸締りしていません。あまり根拠になっていませんが、心配ないと思っています。

赤松:なるほど。次にサイクル・ステーションで行われるイベントやワークショップについて教えてください。まずは、9/1のオープニングですよね。

鈴木:ささやかではありますが、9/1にオープニング・イベントを開催します。オープニング・イベントでは、運営担当のクリティカル・サイクリングを代表して赤松先生からご挨拶していただき、次に私からサイクル・ステーションの説明をさせていただきます。そしてIAMAS瀬川先生デザインの養老サイクル・ステーションのロゴマークのついたフラッグと、クリティカル・サイクリングのフラッグの除幕式を実施します。その後、自転車で発電する実験イベントを開催します。発電により風船を膨らませたり、カキ氷を作ったりする実験をおこないます。

赤松:電気に強い鈴木さんだから心配はしていませんが、自転車発電は大変そう。風船が膨らんだり、カキ氷ができるまで根性でペダルを漕ぎ続けるのでしょうか?

鈴木:自転車発電はご心配の通り大変です(汗)。そんなに多くの電気を作ることはできないので、おそらく根性で膨らませたり、カキ氷を作れるところまで頑張ってもらい、その成果を食してクールダウンしていただくことが狙いです。

赤松:それは楽しみです。ヒルクライマー向けかな、苦しさを厭わない人にがんばって欲しいですね。オープニング後のイベントはどうでしょうか?

鈴木:サイクリング・コースを作るイベントや、養老町周辺の面白いものを見つけて記録するイベントなどができればと考えています。

赤松:シヨンさんは何か予定していますか?

シヨン:はい、いつになるかは、まだ決まっておりませんが、自分と赤松先生の作品であります、異型自転車や改造自転車を体験できる、そういった場を設けたいと考えております。というのは、養老公園には養老天命反転地もあり、特殊な身体感覚を経験することの意味に置いて、深く関わりがある場所ですので、そのような体験会をするには、ちょうど良い場所だと考えています。

赤松:我々だけでなく、いろんなひとがサイクリング・ステーションを活用してくださるといいですね。では最後に一言ずつお願いします。

鈴木:はじめてサイクル・ステーションを運営するので、どうなるかワクワクしています。状況に合わせてどんどん中身も変えていこうと思っています。また今回は期間限定として運営していますが、今後継続できると良いと思っています。みなさま是非どんどん利用してください。

シヨン:私自身も、こういった試みは未だ経験できなかったことですし、今後、どのような空間になるのか気になります。物量としては少なくても、何か面白いことが見える、体験できることで、楽しい空間になると良いな、と思っています。

赤松:今後の展開に期待しています。ありがとうございました。

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