2018年冬のCritical Cycling展は、学内プロジェクトである移動体芸術との共同開催で2月22日より25日までの4日間にわたって開催した。これは、情報科学芸術大学院大学第16期生修了研究発表会 プロジェクト研究発表会(いわゆる卒展、通称IAMAS2018)でのプログラムのひとつ。作品や資料の展示、そしてライドとトークを実施し、来場者と意見交換する貴重な機会となった。
まず、展示としては、養老アート・ピクニックの「空の目」を室内バーションとして設置した。本来はヘリウムを充填して空に浮かべる眼球バルーンが、天井トラスから吊り下げられ、その巨大さと相まって異彩を放っていた。床面に設置した4面のディスプレイには、天井からのリアルタイム映像とバルーンやドローンからの記録映像が映し出され、4面のミラーの反射映像とともに視座の転換を行った。
同じく養老アート・ピクニックで本邦初登場となったXYZ Cargo Trikeは、逆さまハンドル化し、逆さまペダル化も行った。二輪車としてはDahonの小径車Visc EVOも逆さまペダル化した。これらとともに、無改造ながらKoleliniaのHalfbike IIとCruzbikeのT50も試乗できるようにした。いずれも通常の自転車とは異なる乗車感覚なので、常に歓声や感嘆の声が上がっていた。
養老アート・ピクニックでは新製陸舟車2017のみであったオリジナル自転車も、うつ伏せになって乗るLand Crawler 2×2が加わり、回転する椅子である伊吹山チェアも展示された。これらも来場者が実際に乗ったり、座ったりすることができた。鋼鉄の棒で構成された異様な外観だけに、強く興味を引いていたようだ。詳しくは作者のsy氏からレポートがある予定だ。
2台の改造自転車、2台の異感覚自転車、そして2台のオリジナル自転車(と1台の椅子)と、今回は実際に試乗して体感する作品で構成した。これは昨年の展示がデジタル機器を活用した自転車作品であったことと好対照だ。この違いは固定ローラー上の疑似走行から、実際に走行する体験への移行に他ならない。今後は展覧会の制約を超えて、屋外での本来の体験を実現できるよう考えたい。
また、会場では数枚の説明パネルを掲示し、図書館や個人が所蔵する自転車関連の書籍や映像資料などを展示した。これまではカードとして展示していた自転車情報は、今回は簡易製本してカタログとして閲覧できるようにした。これらは多種多様な切り口を与えてくれるので、それを元に来場者との会話が弾むことが多かった。同様にビデオやスライドショーに見入る人が多かったことも印象的だった。
恒例化しつつある早朝ライドでは、遠方からの参加者のために自転車レンタルも行った。走行は「IAMAS周辺ライド #2 墨俣一夜城 14km」をアレンジした1時間のコース。薄曇りで風は冷たかったが、極寒ではなく気持ち良いライドとなった。そして会場近くに戻ってモーニング休憩。コテコテの喫茶店もあるが、今回は上品なカフェでの野菜満載ディシュとなった。ステンシルからサーフィンまで話が弾む。
もうひとつのイベントは、有志メンバー4人による1時間のトーク。クリティカル・サイクリングとしては2年目、移動体芸術としては1年目となった1年間を振り返りつつ、次なる1年間に向けての抱負を語り合う。メンバーや来場者からも新たな観点や興味深い提案があり、これまで以上に多彩な展開になりそうだ。サイクリングはクリティカル足り得るのか、参加者から提供いただいたメモを掲載しておく。
このようにして4日間の「Critical Cycling+移動体芸術展 2018 Winter」は無事に終了した。実は設営や説明で立ち仕事が多く、骨折に起因する筋肉痛が酷くなったので、電動車椅子WHILLを利用していた。これもまた移動体であり、来場者への話題提供になったのは怪我の功名。作品の単なる展示ではなく、体験し会話する展覧会になったことが何よりの成果でした。お越しいただいた皆様に感謝申し上げます。