自転車ミニチュアは疾走する路上の夢を見るか?

自転車はフレームやタイヤなど構成要素が繊細だ。特にスポークやチェーンは車体に対して極細。自動車が塊だとすれば、自転車は線の集まりのようなものだ。なので、そのミニチュアともなれば、精密な再現は難しく、どのようにデフォルメされているかが面白い。ミニチュアやフィギュアの収集をしているわけではないので、体系的ではないが、いくつか紹介したい。

最初に手にした自転車のミニチュアは、De Marchiのジャージのオマケだった。真っ赤な生地に白いラインが鮮烈で、肩にも大きな白十字が織り込まれている。これはスイスのユーゴ・コブレ(Hugo Koblet)が1954年に着用していたジャージのレプリカ、今日では珍しいウール地で、シリアル番号(56/100)入り。いかにも高級品っぽいが、同じジャージを着て疾走するミニチュアは微笑ましい。

De Marchiミニチュアは全長6cmほどで、1/30スケールだろうか。スポークが省略され、左右のフォーク等が融合している。これがさらに極小となると、いろいろと怪しくなる。トミーテックの「情景小物 116 二輪車・自転車」はジオラマ用1/150スケールで、自転車の全長は1.5cm程度。それでも自転車であることは、はっきりと認識できる。チェーンは省略されたが、ペダルとクランクは視認できる。

タミヤのプラモデル、1/35 ミリタリー・ミニチュア・シリーズにも自転車があり、イギリス軍空挺兵自転車セットドイツ歩兵自転車行軍セットだ。これは戦争と自転車の関係を調べた時に気がついた。De Marchiミニチュアより小型にもかかわらず、スポークもあり、各部が精緻に再現されている。空挺兵の自転車は折り畳めるが、正確にはフレームを切断するので元には戻らない。

そのスジでは有名なテラダモケイ1/100建築模型用添景セットにも自転車がある。これは紙の模型ながら、雰囲気たっぷり。No.063のサイクルロードレース編は、その名の通り、ロード・バイクとレーサーが勢揃い。しかも、サポート用のオートバイや沿道で応援する悪魔など芸が細かい。自転車ショップとメディアが協力・監修した本格派。他には、アムステルダム編や屋台編などにも自転車が登場する。

同じく平面模型には、タケダシルエット人形の自転車がある。こちらは立体感はなく、塩化ビニールにシルエットが印刷されたシンプルなもの。ただ、印刷だけにスポークやチェーンも描かれている。シートの下部を折り曲げて、シルエットを立てて使うことが想定されているが、両面テープで貼り付けてシール化するのも良さそう。1/50、1/100、1/200と3サイズ揃っている。

ところで、プラモデルにしろペーパーモデルにしろ、いずれも未開封あるいは未使用だ。思い起こせば、幼少時には人並みにプラモデルを買ってもらったものの、組み立てた覚えがほとんどない。パーツが整然と並ぶ枠組みの状態こそが、美しいと感じていた。組み立ててしまえば、それは小さな劣化コピーに過ぎないからだ。自転車のミニチュアも同様に奇妙なデフォルメや不格好な造形こそが楽しい。

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