4月19日はThe Bicycle Day、そう、自転車の日だ。春真っ盛り、新緑と青空のもと、爽やかな風とともに自転車で出かけるには最高の季節。ダンスを思わせる軽やかなポーズで自転車に乗る人物が描かれたシンボル・イメージもある。背景には雪を頂く緑の山、太陽が輝く赤い空、月が昇る青い空、そして白い星々と色鮮やか。春のサイクリングの雰囲気たっぷり。では、25と1943の数字は何だろう?
実は、4月19日はThe Bicycle Dayと呼ばれながらも、自転車の日ではない。これは、1943年にスイスの化学者、アルバート・ホフマンが、LSDを自ら服用することで、その幻覚作用を確認した日だ。LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)は、少量の服用で強烈な作用をもたらす幻覚剤。1960年代のヒッピー文化において、トリップする薬として、マリファナ(大麻)とともに人気を博した。
さて、その日、ホフマンは0.25mgのLSDを服用し、激しい知覚変化を体験する。それがあまりにも強烈であったので、ホフマンは助手に自宅まで送るように頼む。当時は戦時下制限で自動車の使用が禁止されていた。そこで、彼らは自転車で帰路に着く。つまり、ラリったフラフラ状態で自転車に乗り、初めての体験にとまどいながらも、多幸感に包まれたのだろう。それが極彩色のシンボルの所以だ。
まるで夢のような有様で、昼間の光は不快なほど眩しく感じたので目を閉じたところ、とめどなく流れる幻想的な光景や、異様に伸縮して変化する形、そして万華鏡のような光の洪水を知覚したのです。
ヒッピー、すなわち伝統的な社会制度の否定と、自然および精神世界への回帰を目指す人々にとって、LSDの発見が自動車ではなく、自転車に結びついたのは、理想的であったに違いない。これらは遠い過去の出来事に思えるが、今日的に捉え直すことも可能だろう。なにしろ、自転車そのものが、身体と意識を何倍にも拡張し、我々に自由の翼を与えるナチュラル・ドラッグなのだから。