ライド可能都市、The Ridable Cityへの希求

2016年夏に展示したThe Ridable Cityは、自転車を漕いで仮想の都市を探求する作品。自転車は室内に置かれており、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を装着して、走行する主観映像を見る。この映像はヘルメットに360度全周囲撮影カメラを取り付けて、実際に走行しながら収録したもの。頭部の動きに連動して映像で周囲を見渡すことができる。横を向けば横の風景が見えるわけだ。

この作品で興味深いのは、映像と身体の運動がリンクすること。映し出される映像が右に曲がると、自転車を漕いでいる人も右に身体を傾けるのだ。自転車は固定されているので、投げ出されそうなほど身体が激しく動く。だが、これは椅子に座っていると起こらない。つまり、サドルに跨り、ハンドルを握り、ペダルを漕ぐからこそ起こる現象だ。映像と身体の関連性として興味深い。

ところで、この作品はVR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)技術によるメディア・アートの初期傑作「The Legible City」(1989)へのオマージュでもある。面白いことに、そのプロトタイプではジョイスティック操作だったのが、最終的には自転車が採用されている。また、CG(コンピュータ・グラフィックス)で巨大なアルファベットの塊を並べた街路を前面スクリーンに投影している。

筆者は十数年前にThe Legible Cityを体験したことがある。確かにペダルを漕いで進み、ハンドルを切って曲がることができた。ただ、身体が激しく動くほどの躍動感はなかったと思う。物語性を持つ単語や文章が並ぶ仮想街路は、突入しても通り抜けてしまう。当時の技術の制約が大きかったのは当然として、それでも身体と概念がせめぎあっていたことが推測される。

さて、2016年のThe Ridable Cityでは、Gear VRとGalaxy S6 edgeを使った。いわゆるモバイルVRだ。自転車のセンサリングは実装していたが、いくつかの理由で採用しなかった。つまり、単純に映像が再生されるだけだが、それでも前述の身体運動が生じたわけだ。そして、2017年冬はPlaystation VRとMacBook Proを用い、自転車センサリングも復活させる。その変化は会場で体験して欲しい。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA