モビル文学(8) ヘッドトラッキングの仕組み

本記事は筆者のIAMAS(情報科学技術大学院大学)における修士研究である、自転車に乗りながら小説を読む試み「モビル文学」についての連載第8回目で、今回は空間に表示しているAR文字オブジェクトと体験者の頭の動きを同期する「ヘッドトラッキング」について書いていく。

「モビル文学」については、下記の第3回目の記事でまとめている通り、指定した位置(緯度経度)にAR文字オブジェクトを表示しています。しかし、ARアプリケーションを起動しているデバイスを自転車に搭載しているため、自転車からの視点がARグラスに表示され、人間の視界と一致しないという課題があった。

自転車にiPadを装着したままサイクリングをすると、頭の向きと自転車の向きがずれている時に、AR文字オブジェクトが頭の向いている方向と一致せず、違和感のある見え方になる。AR文字オブジェクトは緯度経度情報を元に空間に固定されているため、ものと身体の距離がチグハグになってしまうと言い換えても良いかもしれない。

そこで、デバイスを自転車のハンドルではなく、体験者が被るヘルメットに装着することで、人の目で捉えた風景と空間にモノとして固定されているARオブジェクトを同期させることを試みた。

全体の機構としては下記の写真の通りになる。ヘルメットにスマートフォン用のアタッチメントを取り付け、デバイスを支える。ヘルメットとアタッチメントは吸盤でくっ付いた状態となっている。

とあるルートでiPhone 15 Proを入手したので、これまで利用していたiPadからiPhoneでのAR表示となった。
使用しているARグラス Xreal Lightが対応しているAPPLE製の端末が少ないことや、デバイスのカメラにLiDARが付いていないと正確にAR文字オブジェクトを指定した緯度経度に表示出来ないことから、やはり利用可能なデバイスが限られてくる。

iPhone 15 Proを頭部の上辺りに固定して、残暑の中、AR文字オブジェクトを設置している川沿いをサイクリングしてみたところ、想定通り向いた方向にAR文字オブジェクトがあればARグラスに映り、そうでない時は映らない。

やった!完成だ!と、喜んだのも束の間。

iPhone 15 Proの重みにアタッチメントが耐えられず、ヘルメットから落ちてしまいそうになった。

おそらく原因はカーブを描くヘルメットの構造と吸盤が並行に接着していないからで、接着剤で固定したり結束バンドで結ぶことで、重さに接続部分が耐えられるように補強しなくてはいけないという新しい課題が生まれた。

次回の連載では、その試行錯誤の成果と真の姿へ返信した「モビル文学」の体験について書いていきたい。

果たして僕は大学院を修了出来るのか?人生賭けたヘルメット改造に乞うご期待・・・。

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