Cycling Edge 22: ラドラー

8月から9月にかけて滞在したドイツでは、機会があればラドラー(Radler)を飲んでいた。何しろ、これはドイツ語で「サイクリスト」の意味だから、自転車のエッジ(領域)に他ならない。ビールをレモネードで1:1で割ったカクテルで、アルコール度数が低く、爽やかで飲みやすい。日本ほどの灼熱地獄ではないものの、ドイツでも今年は暑かったので、日中に木陰で飲むラドラーは格別だ。

一説によるとラドラーは南ドイツのクーグラー・アルム(Kugler Alm)で1922年に発明されたらしい。このビア・ガーデンでは、多くのサイクリストが訪れてビールが足りなくなっていた。そこでビールにレモネードを混ぜて提供したところ、これが好評を博したのがラドラーという。ただし、それより以前にラドラーマス(ラドラーのマグ)の文献があるので、これは商魂たくましい店主の作り話とされている。

もっとも、アルコール飲料なので、飲んで走ると交通違反になる。ただし、ドイツでは呼気1リットルあたりのアルコール濃度0.25mg以上で罰せられる。これはビールなら350mℓ缶2本に相当するので、ラドラーなら4本までOK。しかし酔って注意散漫になれば事故に繋がる。だから飲んだら乗らない、乗るなら飲まないのが当然だろう。なお、日本では0.15mgで罰せられるので、ドイツはかなり緩い。

ともあれ、レストランやカフェには必ずラドラーがある。インビスなどの屋台やスタンドにもある。知人宅にも常備されていた。スーパーに行けば何段にも渡って様々な銘柄のラドラーが並んでいる。同じようでいて、それぞれ風味が異なる。単純に言って、ビールの種類とレモネードの種類を掛け合わせただけラドラーが存在し得るのだから、膨大な種類があるのだろう。

ちなみに日本でラドラーを見かけることは少ない。2015年にサントリーが国内販売したものの、翌年には撤退している。ならば自分で作ってしまおう。グラスに半分だけビールを入れ、残りはレモネードを入れる。そして軽く混ぜる(ステア)だけ。これでドイツ気分が味わえる。フランスならパナシェ(Panaché)、イギリスならシャンディ・ガフ(Shandy Gaff)と呼ばれる人気ドリンクだ。

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