Cycling Edge 04: 韓国の自転車シェアリング

2024年4月半ば、5年ぶりに韓国を訪れた。韓国は日本以上にクルマ社会であり、渋滞だけでなく暴走気味の運転が多い。一方で自転車道はよく整備されており、これまでもソウルや近郊のチュンチョンテジョンを走って、その走行環境の良さに感心していた。今回もインチョン空港からソウルに向かう電車でも自転車を見かけて嬉しくなる。日本以上に自転車が社会に受け入れられているように思える。

今回は有り難いことにソウル在住の知人がBrompton Black Editionを貸してくれることになった。この小粋な自転車がアックジョンの宿に届けられると、翼を得た気分になる。近くのカフェやショップに出かけるのも簡単だし、離れた街へも地下鉄にBromptonをそのまま載せて移動できるからだ。多くの人で賑わう繁華街は避けて裏道を抜け、大通りに入れば自転車も通れる歩道は広くて快適だ。

ハンガンの全長240kmにも及ぶサイクリング・コースもすぐ近くだ。大河に沿った緩やかな起伏と素晴らしい風景が楽しめる。路面は整備されており、ラウンド・アバウトまである。川を渡る橋にも自転車道が併設され、二重構造の盤浦大橋では水面近くを走るのが楽しい。コース沿いにはカフェ、トイレ、電動アシストを含む自転車のレンタルもある。アラサイタマサイが貧弱に思えてくる。

ところで、GoogleマップやAppleマップは機能が制限されていて、自転車ルート検索やiPhoneやAirTagを探す(Find My)なども使えない。韓国での位置情報はNaverマップなど国内サービスが主流。これは自国産業を保護するとともに、北朝鮮との戦争状態にある韓国では国外への位置情報送信を禁止しているからだそうだ。情報のグローバリズムと日本でのセキュリティを考えさせられる。

Appleマップ(左)、Naverマップ(右)

Bromptonがあるので必要ではないが、シェアリング自転車も試してみようと思った。以前からある白に緑のタルンイはソウル市による公共サービスで、電動アシストではないものの子供用の小型車もあるのが優れている。近くのポート(駐輪場、ステーション)で借りて、移動した先のポートで返却することになる。再配置作業が遅いのか、駐輪設備から自転車が溢れていることが多い。

タルンイのシェア・ポート

また、民間運営のシェアリングは電動アシスト自転車や電動キックボードで、どこにでも置けるポートレス型。ポートまで行く手間がないので利便性は高い。緑に黒のGCOO、黒に黄色のKakao、赤いelecleなど色とりどりの自転車が街中至るところに溢れている。電動なのでバッテリー交換や再配置は行われているものの、道路の公共性や安全性を損なっているとの批判も強いらしい。

これらのシェアリングは居住者も旅行者でもスマートフォンのアプリを使って利用できる。しかしアカウントを作ることができなかった。国際ローミング中の日本の携帯電話番号では認証するSMS(ショート・メッセージ)を受信できないからだ。短期間の滞在でも面倒がらずに現地SIMを購入すべきだった。もっともこれは旧態依然とした電話の弊害なので、IPベースに改善して欲しいところ。

Kakao T(アプリ)

さらに問題だったのは、アカウントを作ろうとして電話番号を入力してすぐに迷惑電話が頻繁にかかるようになったことだ。発信元はロシア、カナダ、スイス、香港など国際色豊か。たまに残される留守番電話のメッセージは中国語だ。自転車に貼られたQRコードが偽装だったのだろうとは後になって気がついた。これも面倒がらずに運営会社のWEBサイトから申し込むべきだった。

このように韓国では自転車シェアリングが盛んな様子が伺えた。トップ・ランナーは中国で、その後を韓国が追いかけている状況だろうか。規制が厳しく、保守的な日本は遥か後塵を拝している。しかもヘルメットなしの電動キックボードなど間違った模倣ばかりが目立つ。共有や分散などは現代社会の在り方を問う先端的(エッジ)な取り組みなので、今後も注目していきたい。

パンギョでのシェア自転車

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