Dark Touring 10: 舞洲・夢州

大阪の舞洲(まいしま)そして夢洲(ゆめしま)に出かけた。2025年日本国際博覧会(以下、大阪万博)の開催予定地を自転車で走るためだ。大成功を収めた1970年の大阪万博をもう一度、との安直な発想なのか、構想から準備まで問題山積みである上に、誰も関心がないから盛り上がらない。そんな現在進行中の奈落への道を走ろう。ただ走るだけでも体感して体得することがあるに違いない。

「儲かりまっせ」と根拠なく言い張る開催目的

そもそも大阪万博の交通ガイドラインでは、僅かに関係法令に登場するだけで本文では歩行者や自転車に言及していない。同事例集に至っては一言も登場しない。流石にそれでは時代錯誤だと思ったのか、最近になって自転車アクセス協議会が開かれ、自転車利用の検討を始めたらしい。しかしそれは僅か600台の事前予約制の駐輪場や既存の自転車道との接続などお寒い限りの内容でしかない。

「誰一人取り残さない」はずが歩行者や自転車は無視

さて大阪万博2025の会場は大阪市西部の海上を埋め立てた人工島、夢洲(ゆめしま)だ。市街地からは前後の人工島、舞洲または咲洲を経由する。夢洲と咲洲を結ぶ夢咲トンネルは歩行者や自転車は通行禁止で、万博会場への自転車アクセスは舞洲から夢洲に至る夢舞大橋が予定されている。そして舞洲への此花大橋歩道通行不可なので、自転車は常吉大橋の利用が推奨されている。

出典:国土地理院ウェブサイト
地図・空中写真閲覧サービスの写真に注釈を重ね書き)

まずは北港ヨット・ハーバーから出発して常吉大橋を渡り、舞洲を北から南へ走る。この間は車道と段差のある歩行者・自転車道があるので安全に進むことができる。ところが目的地である夢洲に渡る夢舞大橋は柵と金網で封鎖されていて無惨にも行き止まりとなる。この夢舞大橋は水平に旋回する大掛かりな機構を持つものの、それを必要とする大型船舶が入港したことはないらしい。

夢舞大橋の歩行者自転車専用橋

仕方がないので舞洲をもう少し走ってみる。公園の海岸部が海に沈んで波に洗われている。意図した設計なのか二重、三重の柵。そしてフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーがデザインしたゴミ焼却場下水処理場が素晴らしい。一瞬で現れては消え去る万博のパビリオンとは異なり、これら異形の建物は既に20年以上も美しい景観を形作っており、恒久施設として長らく存続することになる。

大阪広域環境施設組合舞洲工場

次に自転車を積み込み、クルマで夢舞大橋を渡って夢洲に入る。そこはコンテナ埠頭がある他は殺伐とした広大な空き地が広がっている。大阪万博の会場建設だろう、粉塵をあげて大型トラックが行き来している。ただ、渋滞が起こるほどの活況ではない。しかも工事車両よりコンテナ車両の方が多いようだ。工事現場には入れないので、僅かなエリアを申し訳程度に自転車で走る。

走行中には大阪万博の象徴とされる木製リングの一部が垣間見えた。無駄と無益の象徴であり、Apple Parkナノテラスの劣化コピーに過ぎない。その設計者はこれまで素晴らしい建築を作ってきただけに、ここでの凋落に驚かされる。東京オリンピックでの大混乱と同じく、大阪万博は人々を暗黒面に陥れるのだろうか。せめて木製トラックとして自転車で走れるようにして欲しい。

木製リング

この舞洲・夢洲のダーク・ツーリングを実施したのは2023年12月、3ヵ月も前だ。すぐにレポートしなかったのは気が重かったからに他ならない。戦争ができない此の国における集金マシーンであり、誰も望んでいないイベントには辟易してしまう。しかも万博は徒花に過ぎず、すぐ後に控えるカジノを中心とするIR(統合型リゾート施設)の隠れ蓑のようにも思える。

大阪万博会場建設現場

さらに、意義も支持もない大阪万博を中止し、財源を能登半島地震の復興に充てることが叫ばれている。だが、いかに反対が渦巻こうとも万博は強行されるだろう。何しろ世界的な大災害であった新型コロナ・ウイルスによるパンデミックですら無視して東京オリピックを強行した此の国だ。いち地方の災害を気にかけるはずもない。かくして再び訪れる大災害から我々は逃走できるだろうか。

夢洲でのライド

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