脚を奪われ、夢を砕かれてなお、生き抜くための物資を届け続けるパラ自転車チーム「ガザ・サンバーズ」

あらゆる言葉が意味を喪失する状況が私たちの世界で(再び)現実に生じている今、私には、自転車という限定的な枠組みのもとで何かを語ることができない。だから以下は、私たち人間に起きていること、私たちが人間としてどうありうるか、の断片として受け取ってもらいたい。

パレスチナ、ガザ地区に、Gaza Sunbirdsというパラサイクリングチームを組織し活動してきたアスリートたちがいる(この短い記事が仕上がった時、あるいはあなたがこれを読む時にはもう、「いる」は「いた」に変わっているかもしれない)。彼らのSNS投稿を一つ訳出し、紹介する。

ガザ・サンバーズの成り立ちと活動については、NHKロンドン支局の松崎浩子記者による2024年1月24日付の記事「イスラエル軍の攻撃で足を失った…パレスチナの地で願うパリのパラリンピック出場の夢 ガザのサイクリングチームの未来」(アーカイブ)をまず読んでほしい(必ず読んでほしい)。

The MettlesetとのInstragram投稿

翻訳紹介するのは、The Mettleset(ドバイを拠点とするポッドキャストユニット)とサンバーズによる1月16日、つまりおよそ1ヶ月前のInstagram投稿だ。サンバーズ共同創設者カリム・アリ氏(イギリス在住)が出演したMettlesetポッドキャストEp. 52の公開に伴うアナウンスである。

@TheMettlesetポッドキャストのエピソード52「スムード:@GazaSunbirds 🇵🇸🕊️🚲の物語」が公開になった。

サンバードはパレスチナのナショナル・アイデンティティを象徴する鳥、パレスチナの人々とパレスチナの地との間の堅固な結びつきを表す鳥。この鳥はまた、苦難から再び起き上がる力のパワフルなシンボルでもある。

ガザ地区で活動するパラサイクリングチーム @GazaSunbirds(ガザ・サンバーズ)の共同設立者カリム・アリを迎えての今回のエピソードのテーマはまさにその、占領・戦禍・繰り返し訪れる苦境を前にした再起力、集団的な揺るぎなさ「スムード」だ。

私たちとのやりとりの中でカリムが語ってくれているのは、こんなことだ。ガザ・サンバーズ誕生の経緯。創設者でパラアスリートのアラー・アル=ダリがどんな境遇からチームを結成したか。チームのメンバーたちのこと。生活に欠かせない物資をガザの人々へ届けるために、彼らがパラリンピックの夢を先送りしなければならなくなったいきさつ。パレスチナへの関心と支援を集めるための @athletesforpalestine(パレスチナを支えるアスリートたち)やBig Ride for Palestine(パレスチナのための大規模ライド)といったコラボレーションや取り組みの話も。

(後略)※すぐ上の段落は日本語で読み易くするために文の構造などに手を入れていますが内容は損なわれていません)

投稿に付されたエピソード紹介コメントより

上のNHK記事でも伝えられているように、サンバーズのアスリートたちは2024年のパラリンピック参加を目標にしていた。そもそも創設者アラー・アル=ダリをはじめとするメンバーのほどんどは、「10月7日」以前から続くイスラエルの攻撃によって脚を奪われ、それでもパラアスリートとして世界を目指していたのだ。その夢は、とてつもない規模の暴力によって中断され、実現可能性はどんどん低くなっている。生存しかつ動くことのできるメンバーのミッションは、生活に必要な物資を人々に届けることに変わった。彼らが体現しているのは、パレスチナの人々の信じがたいほどの再起力「スムード」に他ならない。だがそれは決して、殺戮に対する耐性などではない。MettlesetとのInstagram投稿から1ヶ月。ジェノサイドをめぐるICJ(国際司法裁判所)の暫定措置命令を経ても、現地の状況は悪化する一方である。「国際社会」を形成する私やあなたの助け(参考:日本から私たちができるパレスチナ連帯行動🇵🇸🍉🕊)が、今(どこかの今ではなく、私やあなたの今のことだ)、これまでよりもずっと緊急に必要とされている。

カリム:
人の自由と権利を守ることは、複雑なことじゃない。
何をするという話でもなく、ただ他の人を抑圧しなければいいんだ。
何かをしなきゃいけないってのとは真逆なんだよ。

僕は、自由は訪れると思っている。
自由は実際・・・必然なんだ。

自由を求め続けること、自由のために声を上げ続けることに望みを失ってはいけない。
だって結局のところ、誰もみな自由な世界、自由な星に暮らしたいと思ってるんだから。

一つの集団あるいは民がまとめて虐殺され、それに対して何も起きないとき、僕たちの持つ自由の全てが揺らぐ。

サンバーズやガザ、パレスチナのための皆さんの奮闘は、皆さん自身のための戦いでもあるんだ。

ドーン(ホスト):
まさに「誰もが自由になるまで、誰一人として自由ではありえない」ということですね。私自身、胸に刻んでいます。

投稿された動画(英語字幕付き)に収められた、ポッドキャスト内のやりとり

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA