銀塩(輪)車 第16回 試作5号(写真)

この連載では、以下のような目標を掲げながら自転車に乗る行為とその身体性の新たな記録方法を、銀塩写真の手法を用いながら模索していくものである。今月の記事では、前回に制作し撮影を開始した試作5号で撮れた写真を見ながら考察し、次回以降の方向性についても言及する。

自転車を通じて体験し得る事柄には、距離的移動、時間経過、身体的疲労、振動、風、空気抵抗、周囲とのコミュニケーションなどといった多くのものがある。これらを含んだ、自転車に乗るという行為の新しい記録の仕方を、銀塩写真を用いて模索する。

「銀(塩)輪車」第1回より

試作5号

前回から撮影を始めた試作5号であったが、この1ヶ月間無事に撮影をこのカメラで行うことができた。本来は十分な露光時間の確保のために数ヶ月間、自転車に固定し続け撮影を行う予定であったが、来週に筆者が長期間アメリカに行ってしまうことも踏まえてひとまず1ヶ月間の撮影の結果を見てみることにした。

手順としてはとても簡単で、自転車のハンドルに結束バンドで固定していたカメラを取り外し、テープの封を外しながらカメラ内の印画紙を取り出した。この印画紙がこのまま写真となるのだが、これをまずはフラットベッドスキャナーでスキャンした。以下がカメラから取り出した写真である。

カメラから取り出した状態

この写真はモノクロ印画紙を用いて撮影しているため、スキャンした写真を反転し、モノクロ化する必要がある。以下がPhotoshop内にて色を反転したものと、モノクロ化(コントラスト調整済み)したものである。

色を反転させた状態
モノクロ化した状態

さて、これでモノクロ写真にすることができたのだがあまりにもパノラマな縦横比であるため最も像が写った部分を以下のようにして切り取ってみた。写真の中心よりもやや右上のエリアに最も明るい光源である太陽の軌跡が、自転車の揺れを記録している。それ以外にも道のような像が見えるが、これらは長時間写った像が重なってできているために明確に何を写しているかは明言できない。

最もはっきりと像が写っている部分の切り取り

考察とこれから

今回の試作5号では、結果からしてあまりエキサイティングな写真を撮影することができなかったと判断できるであろう。これは写真を取り出す時点でわかっていたことだが、やはり露出時間が足りておらず光が印画紙に焼き付き切れていなかった。これはスケジュール的な問題が大きな原因であるために、また再度同じような条件でより長い撮影を行い挑戦したい。

しかし、同時に試作5号では本連載の目的に沿ったピンホール・カメラを用いた写真撮影方法を確立できたと言っても過言ではないのだろうか。実際に実現しやすい方法でカメラの揺れ等を記録できそうな結果が見えたことから、やはり試作5号の手順に沿った形で今後も撮影を試みたいと考える。ただ、もしピンホール・カメラの使用から逸脱するような新たなアイディアが浮かび次第、それも試してみたい。連載としても、そろそろ新たな実験の方向性を見出せればいいなと考えている。

来月からは、筆者はロサンゼルスに行く予定があるために現地での実験を行いたい。具体的には、計画段階で終わってしまった試作4号、あるいは試作5号と同様の内容を再度挑戦するのでも良いかと考えている。場所が変わることで気分転換にもなり、また更に実験に注力できればと思う。

それでは、また。

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