BMXグラフィティ(1)グラフィティのための自転車を考える

自転車は最高の逃走手段である。都市空間でグラフィティを行った後は特に。


機動性が高く、狭い通りや道路を素早く移動できるため、犯罪行為を働いた後に迅速に逃げることができる。また、自転車はスケートボードに比べて静かで目立ちにくいため、犯罪者にとっては最適なモビリティと言える。逃走手段というネガティブな使われ方が多い。一方でグラフィティと自転車を掛け合わせて新たな体験拡張を行っている事例は少ない。そこで、本連載ではグラフィティと自転車を掛け合わせた新たな体験拡張を行うための自転車制作の記録と発表を行う。

1980年代頃に登場したグラフィティは犯罪的なイメージが強く、社会問題視されることが多かった。道路や建物などに落書きのような形で描かれることが多く、美術作品としての認知度は低い。しかし、その後登場したバンクシーなどのアーティストによって、グラフィティが単なる落書きではなく、アートとして認知されるようになってきた。

ヒップホップ・カルチャーはグラフィティの母体で当時は、イリーガルな行為であり、作品制作後すぐに逃げるという危険な一面もあった。しかし、バンクシーがいる今、グラフィティ・アートは芸術作品として認められる事例も増え、多くの人々に愛されている。特に、都市部においては建物の壁面などにグラフィティ・アートが多く見られるようになってきた。都市部ではないが、筆者が通うIAMAS(情報科学芸術大学院大学)がある大垣にもグラフィティ・アートがいくつかある。

グラフィティ・アートは技法によって表現方法が多彩であり、様々なアーティストが独自のスタイルを持っている。また、グラフィティ・アートは、社会問題や政治的なメッセージを含んだ作品も多く、社会的な意義を持っている。一方で、依然として違法行為であることが多いため、アートとして認められるには様々な問題が残されている。

近年ではグラフィティ・アートを公共空間で展示することで、都市の魅力を高める取り組みが進んでいる。例えば、欧州ではグラフィティ・アートを展示する専門の美術館、ギャラリーが存在し、多くの観光客やコレクターに愛されている。このように、グラフィティ・アートは、単なる落書きではなく、芸術作品としての価値が高まっていると思える。

ヒップホップ・カルチャーがグラフィティを台頭させた同じ年代にストリート・カルチャーの形で大衆に広まったのがBMXである。

そのルーツは、1960年代後半の米国。子供たちが、自転車でモトクロスをまねたことだとされる。そしてBMXフリースタイルという競技の歴史は1980年代初頭、BMXの大会でレーサーたちが、ジャンプ中に決める“トリック(技)”を披露したことから始まる。BMXは、都市環境や反体制的な表現というグラフィティとの共通のルーツを持つことから、ヒップホップ・シーンの一部となり、ストリート・カルチャーと密接に結びついていた。ヒップホップの人気が高まるにつれ、グラフィティやBMXを含むさまざまなサブカルチャーをまとめる力として機能していった背景がある。

BMXとグラフィティのストリート・カルチャーの結びつきは、どちらも自由でクリエイティブな表現が可能であり、若者のエネルギーを満たすことができる点で類似していた。また、どちらも都市空間を活用し、既存の体制に反旗を翻す形でアイデンティティを確立していた。このような要素が相互に影響を与え合い、ヒップホップ・カルチャーの一部として世界中の若者たちに影響を与えたと言える。

次回は5月21日に更新。 BMXとグラフィティが交差するストリート・カルチャーを具体的な事例を出しながらストリート・アートを見ていく。

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